今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討

文献情報

文献番号
201021007A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 毅(公立大学法人福島県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井関 邦敏(琉球大学 医学部)
  • 吉田 英昭(札幌医科大学 医学部)
  • 鶴屋 和彦(九州大学大学院研究科)
  • 守山 敏樹(大阪大学保健センター)
  • 山縣 邦弘(筑波大学大学院人間総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
19,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 生活習慣病を背景にした心血管疾患(CVD)の一次予防を目的に平成20年に開始された特定健康診査・保健指導は、血清Cr値が必須でなく、慢性腎臓病(CKD)の早期発見に危惧がある。また、CKDに対して保健指導レベルの明示がない。本研究は、CKD対策の視点を組み込んだ特定健康診査・保健指導モデルの提言を目的とする。
研究方法
全国15都道府県68市町村、3健保組合の約58万人規模(人口規模1,240万人)の連結可能匿名化された健診データ(一部レセプトデータ)コホートが確立した。初年度の基本データ、問診項目、検査データに関する横断的統計解析を終了し、現在は経年変化の縦断的解析を実施中である。全体研究テーマは、1)生活習慣病、CKDの発症・進展に対する要因解析、2) CKDを健診項目に加えた場合の医療経済効果、3)CKDに対する特定保健指導のレベルと効果の検証であるが、その他に研究協力者から公募した個別疫学研究20テーマを解析する。
結果と考察
1) 特定健診コホートにおける腎機能、尿蛋白の層別化による心血管イベント既往の頻度:血清Cr値のデータのある約33万人の横断的解析で、蛋白尿、腎機能低下は各々独立した心血管イベントの危険因子であること、多くの生活習慣病の要因が蛋白尿、腎機能低下の要因である実態を証明した。2)医療経済解析モデル;蛋白尿、腎機能評価の医療経済的得失についてマルコフモデルを使用して、尿蛋白検査の費用対効果が良好なことを証明した。3)保健指導に関しては、問診項目の中の様々な生活要因が、生活習慣病、蛋白尿、CKD発症に影響すること、CKD病期と現在の保健指導レベルは解離することが証明され、保健指導の対象と内容の変更の必要性が明らかとなった。4)個別疫学研究20テーマについては、論文作成中である。
結論
CKDは透析導入だけでなく、心血管イベントの原因として重要で、その原疾患の6割以上は生活習慣病である。したがって、特定検診・保健指導ではCKDと生活習慣病の対策は一体化が望ましい。具体的には、1.肥満・腹囲を必須項目とせず1項目として扱うこと、2.血清Cr値測定の必須項目化、3.CKDを対象とした特定健診・保健指導プログラムの追加の必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-09-16
更新日
-

文献情報

文献番号
201021007B
報告書区分
総合
研究課題名
今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 毅(公立大学法人福島県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井関 邦敏(琉球大学 医学部)
  • 吉田 英昭(札幌医科大学 医学部)
  • 鶴屋 和彦(九州大学大学院研究科)
  • 守山 敏樹(大阪大学保健センター)
  • 山縣 邦弘(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病を背景にした心血管疾患(CVD)の一次予防を目的に平成20年に開始された特定健康診査・保健指導は、血清Cr値が必須でなく、慢性腎臓病(CKD)の早期発見に危惧がある。また、CKDに対して保健指導レベルの明示がない。本研究は、CKD対策の視点を組み込んだ特定健康診査・保健指導モデルの提言を目的とする。


研究方法
全国15都道府県68市町村、3健保組合の約58万人規模(人口規模1,240万人)の連結可能匿名化された健診データ(一部レセプトデータ)コホートが確立した。初年度の基本データ、問診項目、検査データに関する横断的統計解析を終了し、現在は経年変化の縦断的解析を実施中である。全体研究テーマは、 1)生活習慣病、CKDの発症・進展に対する要因解析、2) CKDを健診項目に加えた場合の医療経済効果、3)CKDに対する特定保健指導のレベルと効果の検証であるが、その他に研究協力者から公募した個別疫学研究20テーマを解析する。
結果と考察
1) 特定健診コホートにおける腎機能、尿蛋白の層別化による心血管イベント既往の頻度:血清Cr値のデータのある約33万人の横断的解析で、蛋白尿、腎機能低下は各々独立した心血管イベントの危険因子であること、多くの生活習慣病の要因が蛋白尿、腎機能低下の要因である実態を証明した。2)医療経済解析モデル;蛋白尿、腎機能評価の医療経済的得失についてマルコフモデルを使用して、尿蛋白検査の費用対効果が良好なことを証明した。3)保健指導に関しては、問診項目の中の様々な生活要因が、生活習慣病、蛋白尿、CKD発症に影響すること、CKD病期と現在の保健指導レベルは解離することが証明され、保健指導の対象と内容の変更の必要性が明らかとなった。4)個別疫学研究20テーマについては、論文作成中である。
結論
CKDは透析導入だけでなく、心血管イベントの原因として重要で、その原疾患の6割以上は生活習慣病である。したがって、特定検診・保健指導ではCKDと生活習慣病の対策は一体化が望ましい。具体的には、1.肥満・腹囲を必須項目とせず1項目として扱うこと、2.血清Cr値測定の必須項目化、3.CKDを対象とした特定健診・保健指導プログラムの追加の必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-09-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特定健康診査において、蛋白尿と推定腎濾過量(eGFR)を組み込んだ前向き観察調査によって、1)慢性腎臓病(CKD)の生活習慣病、心血管疾患(CVD)の発症率、死亡率に対する寄与度、2)腎機能低下と尿蛋白発症に対する諸要因の寄与度とそれに対する影響因子、3)特定健康診査における蛋白尿とeGFR測定の意義と経済性など日本におけるCKDの実態、発症要因、及びCVD発症への寄与度など懸案の疫学的問題点が解決された。
臨床的観点からの成果
CKDの発症予防、CKD患者からのCVD発症予防、およびCKDの主な病因である生活習慣病の発症予防を同時に実施するための生活習慣改善療法の改良に重要な知見を得た。また、CKD患者に対する特定保健指導の意義、現在の問題点および必要な改良点が解明された。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
科学的成果を踏まえて、生活習慣病、循環器疾患と末期腎不全の危険群の効率的スクリーニングと保健指導による一次予防を目的とした効率的な健診項目とスクリーニングシステム、保健指導の改善策を提言することで、特定健康診査・保健指導制度の見直しに対して、医療財政との調和が取れ、さらなる国民の健康状態の改善のための制度設計の参考となる。
その他のインパクト
学術誌ばかりでなく,実地医家向け(Medical Tribune ;2008年7月3日号他),保険者向け(ふくしまの国保59(4);2010年11月)および一般市民向け(全国紙(産経)、地方紙(福島民報,福島民友);2011年2月他)の各種媒体で成果が広く紹介された.また日本腎臓学会における一般公開セッションのテーマとして取り上げられた(第53回日本腎臓学会学術総会;2010年6月、横浜市).

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
35件
その他論文(和文)
55件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
41件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
2017-08-03

収支報告書

文献番号
201021007Z