糖尿病の実態把握と発症予防・重症化予防のための研究

文献情報

文献番号
202508013A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病の実態把握と発症予防・重症化予防のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1020
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
山内 敏正(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 菊池 透(埼玉医科大学病院 小児科)
  • 赤澤 宏(東京大学 医学部附属病院)
  • 田中 哲洋(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 村田 敏規(信州大学 医学部)
  • 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
  • 後藤 温(公立大学法人横浜市立大学 医学部公衆衛生学教室)
  • 野田 龍也(学校法人関西医科大学 医学部 メディカルデータサイエンス講座)
  • 脇 裕典(秋田大学 大学院医学系研究科)
  • 矢部 大介(京都大学 大学院医学研究科)
  • 津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
  • 山口 聡子(東京大学 医学部附属病院)
  • 青山 倫久(東京大学 医学部附属病院)
  • 杉山 雄大(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 糖尿病情報センター)
  • 大杉 満(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 糖尿病情報センター)
  • 今井 健二郎(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 糖尿病情報センター)
  • 杉山 庸子(井花 庸子)(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 糖尿病内分泌代謝科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)等の各種調査を用いて日本全体における糖尿病及び合併症の更なる実態把握を行い、発症予防や重症化予防における課題を抽出し解決策を検討すること、自治体における第8次医療計画の指標の活用に係る課題の整理と解決策を検討すること、患者の視点も包含した望ましい医療提供体制への課題の抽出と解決策を検討することである。本年度は3年目として、これまでの成果を踏まえ、以下の通り研究を進めた。
研究方法
【1. 糖尿病及び合併症の実態把握】
糖尿病及び合併症の実態を調べるため、本研究班で取り組むNDB研究テーマに沿ってNDB等を用いた解析を行った。厚生労働省からの外部のNDB解析委託先と分析方針等について助言した。これらについて計2回の班会議を通して議論した。
【2. 自治体・行政からの視点を把握】
第8次医療計画中間見直しに向け、班会議、前年度に実施した自治体ヒアリング結果の研究班内での再共有、厚生労働省医系技官への報告を通して議論した。
【3. 患者からの視点を把握】
日本糖尿病協会およびつくば市での患者調査の成果と学会報告・論文投稿状況を報告した。新しく山内班で行った糖尿病の実態調査として、協会けんぽ佐賀支部加入中の糖尿病患者に向けた質問票調査について議論を進めた。また、2018年3月から2023年2月まで、小児・思春期1型糖尿病の診療実態を追跡調査し、結果を分析した。
結果と考察
【1. 糖尿病及び合併症の実態把握】
研究班内でNDB研究テーマを整理し、昨年度受領したNDBデータの分析を進めた。第8次医療計画糖尿病の医療体制構築に係る現状把握のための指標について、外部のNDB解析委託先と議論を進め、厚生労働省から自治体への情報提供に貢献した。糖尿病診療のプロセス指標については、検査実施割合の経年推移と地域差を分析した。1型糖尿病に関する研究では、患者数・罹患率の推計、デバイス使用状況、重症低血糖の発症率の経年推移分析を進め、国際共同研究への参画も推進した。
【2. 自治体・行政からの視点を把握】
第8次医療計画中間見直しにあたり、前年度の自治体ヒアリング結果を踏まえ、追加指標案の策定に向けた活動の方向性や目安、実務上の課題について議論した。新たな指標案として、糖尿病合併の循環器疾患を含む指標について既存の定義や先行研究を整理し、第9次医療計画を見据えた基礎資料の整備に貢献した。
【3. 患者からの視点を把握】
日本糖尿病協会会員へのインタビュー調査により、医療者との関係性が糖尿病の治療・生活の体験に及ぼす影響を質的に検討し、チーム医療や信頼関係構築が適切な診療・支援に繋がりうることが示唆された。つくば市での生活習慣関連アンケート調査では、糖尿病に関する教育機会と治療への希望反映状況の関係、1型糖尿病の人における生活上の不便さや社会の理解不足を明らかにした。さらに、これまで十分にアプローチできなかった就労世代を対象に、協会けんぽ佐賀支部で質問票調査を新たに実施し、糖尿病のある人の主観的経験や課題を幅広く把握した。
1型糖尿病に関する検討では、小児・思春期患者を5年間追跡し、頻回注射法が減少し持続皮下インスリン注入療法が増加する傾向を認めた一方、20歳以降では使用率の低下が観察された。血糖モニタリングでは間欠的スキャン連続血糖モニターの使用が増加傾向であった。HbA1cは5年間を通じて改善傾向に乏しく、特に思春期年齢で高値を示した。学校検尿で発見された症例では内因性インスリンの残存傾向が認められ、思春期における療養行動の支援や20歳以降の継続的な治療支援体制の整備の必要性が示唆された。
結論
第8次医療計画糖尿病の医療体制構築に係る現状把握のための指標について、未定義であった3指標の定義を確定し、公表版の定義表を作成した。これにより、厚生労働省を通じて自治体に提供される情報が、継続的かつ効果的に活用される可能性がある。NDB等を用いた分析により、糖尿病および合併症の実態、診療上および政策上の課題を明らかにし、今後の糖尿病対策の政策立案への活用が期待される。第8次医療計画中間見直しでは糖尿病領域の追加指標の提案は行わないこととなったが、本年度の議論は第9次医療計画に向けた指標の方向性の検討に資するものと期待される。患者調査では、糖尿病を持つ人の実態や困難を多面的に明らかにし、個人を対象とした支援、社会的理解の促進、政策立案への活用が期待される。思春期の1型糖尿病患者の血糖コントロールには学校における療養行動への支援が重要であり、20歳以降の継続的なデバイス使用・治療継続支援体制の整備も期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-07
更新日
-

文献情報

文献番号
202508013B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病の実態把握と発症予防・重症化予防のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1020
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
山内 敏正(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 菊池 透(埼玉医科大学病院 小児科)
  • 赤澤 宏(東京大学 医学部附属病院)
  • 田中 哲洋(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 村田 敏規(信州大学 医学部)
  • 東 尚弘(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 後藤 温(横浜市立大学 医学部)
  • 野田 龍也(関西医科大学 医学部)
  • 脇 裕典(秋田大学 大学院医学系研究科)
  • 矢部 大介(京都大学 大学院医学研究科)
  • 津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
  • 山口 聡子(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 青山 倫久(東京大学 医学部)
  • 相原 允一(東京大学 医学部)
  • 杉山 雄大(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 糖尿病情報センター)
  • 大杉 満(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 糖尿病情報センター)
  • 今井 健二郎(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 糖尿病情報センター)
  • 杉山 庸子(井花 庸子)(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 糖尿病内分泌代謝科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
・赤澤宏氏:職名変更 東京大学医学部附属病院 旧 講師 新 届出研究員 ・野田龍也氏:所属機関変更 旧 公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 准教授 新 関西医科大学 医学部 教授 ・青山倫久氏:職名変更 旧 特任講師(病院) 新 講師 ・矢部大介氏:所属機関変更 旧 岐阜大学 大学院医学系研究科 教授 新 京都大学 大学院医学研究科 教授

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)等の各種調査を用いて日本全体における糖尿病及び合併症の実態把握を行い、発症予防や重症化予防における課題と解決策を検討すること、自治体における第8次医療計画の指標活用に係る課題を整理すること、患者の視点も包含した望ましい医療提供体制への課題と解決策を検討することである。
研究方法
【1. 糖尿病及び合併症の実態把握】
糖尿病及び合併症の実態を調べるため、NDB研究テーマに沿ってNDB等を用いた解析を行った。また、未定義であった糖尿病対策の指標について定義案を検討し、外部のNDB解析委託先と分析方針等について助言した。
【2. 自治体・行政からの視点を把握】
第8次医療計画中間見直しに向け、3自治体へのヒアリング、前年度結果の再共有等を通して議論した。
【3. 患者からの視点を把握】
日本糖尿病協会およびつくば市での患者調査の成果を報告し、協会けんぽ佐賀支部加入者への質問票調査について議論した。さらに、2018年3月から2023年2月まで、小児・思春期1型糖尿病の診療実態を追跡調査した。
結果と考察
【1. 糖尿病及び合併症の実態把握】
NDB研究テーマを整理しながらデータ分析を進めた。第8次医療計画糖尿病の医療体制構築に係る指標については、未定義指標の定義案をJMDC Claims Databaseで作成し、外部のNDB解析委託先と議論を進め、NDB分析および自治体への情報提供に貢献した。1型糖尿病に関する研究では、NDB特別抽出データを分析し、患者数を複数定義で算出し、属性分布、罹患率、デバイス使用状況を分析した。糖尿病性腎症重症化予防プログラムの介入効果では、複数自治体を対象に腎機能、受診率、HbA1c等を評価し、厚生労働省へ還元するとともに論文発表した。さらに、重症低血糖の発症率を年齢別・地域別に解析し、検査実施割合の経年推移と地域差を分析し、国際共同研究への参画も推進した。
【2. 自治体・行政からの視点を把握】
第7次医療計画と第8次医療計画までの糖尿病に関する指標策定の経緯を共有し、追加指標案の策定に向けた方向性を議論した。3自治体へのヒアリングにより、糖尿病指標の作成・活用状況、二次医療圏別データの必要性、指標の目標値設定に関するニーズ等を把握した。これらを踏まえ、糖尿病合併の循環器疾患を含む指標について既存の定義や先行研究を整理し、第9次医療計画を見据えた基礎資料の整備に貢献した。
【3. 患者からの視点を把握】
日本糖尿病協会会員を対象に、受診中断者の割合や理由、生きづらさやスティグマ、社会生活や将来への不安を調査した。受診中断の主な理由は治療の優先順位、経済的負担、医療関係者への不信感等であり、治療再開の動機は体調悪化等であった。つくば市の調査では、眼底検査実施率は受診勧奨経験により差を認め、教育機会と治療への希望反映状況の関係、1型糖尿病の人における生活上の不便さや社会の理解不足も明らかにした。さらに協会けんぽ佐賀支部で質問票調査を実施し、就労世代を含む糖尿病のある人の主観的経験や課題を把握した。
1型糖尿病に関する検討では、小児・思春期患者を5年間追跡した。インスリン投与方法では頻回注射法(MDI)が約56%から減少し、持続皮下インスリン注入療法(CSII)が約26%から増加する傾向を認めた一方、20歳以降では使用率の低下が観察された。血糖モニタリングではisCGMの使用が増加傾向であった。HbA1cは改善傾向に乏しく、特に思春期年齢で高値を示した。学校での療養行動は、中学生・高校生では教室やトイレが増加し、トイレ実施例は教室実施例より平均HbA1cが有意に高値であった。これらから、思春期の療養行動支援、適切な転院支援システム、20歳以降の継続的な治療支援体制の整備が必要と考えられた。
結論
第8次医療計画糖尿病の医療体制構築に係る現状把握のための指標について、未定義であった3指標の定義を確定し、公表版の定義表を作成した。これにより、厚生労働省を通じて自治体に提供される情報が継続的かつ効果的に活用される可能性がある。NDB等を用いた分析により、糖尿病および合併症の実態や診療上・政策上の課題を明らかにし、今後の糖尿病対策の政策立案への活用が期待される。第8次医療計画中間見直しでは追加指標の提案は行わないこととなったが、ヒアリング調査の知見および3年間の議論は、第9次医療計画に向けた指標の方向性の検討に資する。患者調査では、糖尿病を持つ人の実態や困難を多面的に明らかにし、支援、社会的理解の促進、政策立案への活用が期待される。思春期の1型糖尿病患者の血糖コントロールには学校における療養行動への支援が重要であり、20歳以降の継続的なデバイス使用・治療継続支援体制および適切な転院支援体制の整備が期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202508013C

収支報告書

文献番号
202508013Z