今後のたばこ対策の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201021005A
報告書区分
総括
研究課題名
今後のたばこ対策の推進に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
望月 友美子(独立行政法人国立がん研究センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 片野田 耕太(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 中村 正和(大阪府立健康科学センター 健康推進部)
  • 曽根 智史(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部)
  • 野村 英樹(金沢大学附属病院 総合診療部)
  • 細野 助博(中央大学大学院 公共政策研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今後のたばこ対策の推進のために必要な政策評価の手法開発、新たな科学的根拠の創出、政策受容に関わる社会要因の分析、政策形成過程の分析を行い、根拠に基づいたたばこ政策の実現のために必要な推進要因と阻害要因を抽出することを目的とした。
研究方法
たばこ規制政策の導入にあたり、規制影響評価を用いて、公共的施設・職場の禁煙規制の経済影響を評価した。公表データに基づき、わが国の受動喫煙起因死亡数の試算を行い、また、三府県コホート研究の10年追跡データを用いて非喫煙女性における受動喫煙と脳卒中および虚血性心疾患との関連を調べた。喫煙とメタボリック・シンドローム(MS)発症との関連性について、MS対策における禁煙の意義や介入のあり方を検討するための文献レビューを行った。たばこ産業による国内を中心にした様々な社会貢献活動について事例収集分析し、また、喫煙関連健康リスク行動に対し、ソーシャルマーケティング的介入法が採用できるかを検討した。日本におけるたばこ政策の課題を、財政制度等審議会等の議事録を通じて分析した。
結果と考察
公共的施設・職場における全国一律の全面禁煙規制により1年で2兆9,082億円というプラスの経済的影響、国や県における部分的規制(分煙)では、1年で1兆1,727億円というマイナスの経済的影響が発生すると推計された。男性2,221人(職場1,814人)、女性4,582人(職場1,811人)、計6,803人(職場3,625人は全体の53%)が、1年間に受動喫煙が原因で死亡していることが推計された。喫煙の糖代謝および糖尿病発症への影響についてはエビデンスレベルの評価が終了していないが、喫煙が糖代謝異常や糖尿病の発症のリスクを高めることが強く示唆された。たばこ産業による社会貢献活動として、子どもを対象、各界の著名人の参画、JTの貢献が大きな分野の存在、自治体、新聞社などの外部組織を巻き込んだ活動が数多く、社会的に受容されやすいことが分かった。喫煙に対しては「プラスの集団的無知」現象が存在し、他者に対して受動喫煙を強いる行動は「社会的規範アプローチ」の導入により抑制できる可能性、「マイナスの集団的無知」現象は上向性ソーシャルマーケティング手法の導入により、法(条例を含む)整備を促進する必要が示された。
結論
たばこ政策形成において政策オプションに対する事前政策評価、新たな政策根拠の付加、推進要因としての社会への働きかけと阻害要因としての産業活動を考慮した適切な介入が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-16
更新日
-

文献情報

文献番号
201021005B
報告書区分
総合
研究課題名
今後のたばこ対策の推進に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
望月 友美子(独立行政法人国立がん研究センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 片野田 耕太(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 中村 正和(大阪府立健康科学センター 健康推進部)
  • 曽根 智史(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部)
  • 野村 英樹(金沢大学附属病院 総合診療部)
  • 細野 助博(中央大学大学院 公共政策研究科)
  • 星 桂芳(北里大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国のたばこ政策を巡る政策環境の変化は著しく裾野も広がってきたが、政治的障碍を乗り越えるための戦略的基盤が必要である。本研究は、政策根拠の継続的な供給体制と研究や施策の効果を増強するための連携体制を構築し、新たな政策展開を図ることが目的である。成果は、出版、報告書やウェブ、会議等を通じて情報発信するが、これらの成果を基礎資料として、研究組織内外のステークホルダー(特に学会やNGO等)との相互作用を促進し、自発的意志による持続可能な戦略形成基盤を構築する。
研究方法
根拠と評価の枠組みを統合する基本設計として、文献や政策資料の収集に加え、関係者による合同戦略会議において課題を洗い出した。文献データベース構築と情報発信・共有のためのウェブ構築、コホート研究の併合解析やシステマティックレビューによる新たな証拠の創出、たばこに関する研究を概観し課題発掘を目的としたリサーチマッピング等による科学的証拠の情報基盤の整備に着手した。社会における政策形成の推進要因と阻害要因の分析、さらに審議会等の政策形成の分析を行った。
結果と考察
合同戦略会議により、国際的なたばこ政策水準に照らし、我が国では警告表示、広告規制、政策基盤(戦略と資源)などにギャップがあること、研究課題もそれに呼応していないことを明らかにした。たばこ増税と公共の場所や職場の禁煙政策に関する事前評価を行い、たばこ増税による消費半減をきたしても、負の波及効果が出る一方でたばこ税収は増となり、乗数効果の高い公共投資により埋め合わせが可能と試算した。全面禁煙は正の効果、全国的な分煙は負の効果をもたらすことも試算された。受動喫煙による死亡数は年間6800人で半数が職場起因であることを明らかにした。喫煙とメタボリックシンドロームの関係について文献考察により、喫煙が糖代謝異常や糖尿病の発症のリスクを高めることが示唆された。たばこ政策の推進要因として集団的無知と介入政策の選択、阻害要因としてたばこ産業による社会的受容を得るための活動が明らかになった。審議会における政策形成は構成員の自発的な協議に基づくことが、語句分析により明らかにされた。
結論
根拠に基づいたたばこ政策の実現のためには、科学的根拠や政策根拠を生み出す基盤とともに、政策決定者に伝達する仕組みが必要である一方、たばこ産業の阻害活動についても留意すべきである。我が国の戦略的なたばこ政策基盤の構築が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021005C

収支報告書

文献番号
201021005Z