わが国の今後の喫煙対策と受動喫煙対策の方向性とその推進に関する研究

文献情報

文献番号
201021003A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の今後の喫煙対策と受動喫煙対策の方向性とその推進に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 雅規(産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
  • 江口 泰正(産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院生活環境部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」第8条ではすべての建物内を100%禁煙化することを求めている。わが国においても公共施設、および、サービス産業を含む全ての職場を禁煙化させる受動喫煙防止法の成立に資するエビデンスを提供することである。
研究方法
飲食店等のサービス産業の店舗内、および、そこで働く従業員の胸元における粉じん濃度の測定により、従業員が曝露される受動喫煙の濃度を評価した。都道府県庁など121地方自治体の建物内禁煙の導入状況、および、医学系大学病院(本院80、分院58)の敷地内禁煙の導入状況を郵送法により評価した。公共交通機関(鉄道)の禁煙化率は、過去の列車内の粉じん濃度の測定結果、および、時刻表に公開されている列車編成表と立ち入り調査により評価した。
結果と考察
喫煙が行われているサービス産業で働く従業員は、勤務中に常時受動喫煙に曝露されていることがわかった。特に、喫煙者に接客する際に、テーブル上の灰皿から立ち上る副流煙、口から吐き出される吐出煙により危険なレベルの受動喫煙に曝されていることが認められた。都道府県庁は平成22年9月時点で、25道府県庁が建物内禁煙を実施済み、もしくは、年度内の導入が決定されていた。特に、「受動喫煙防止対策について」(健発0225第2号、平成22年2月25日)以降に禁煙化されたのは7県であり、健康局長通知の影響力は大きいことが考えられた。県庁所在市は46市中8市、23特別区は1区のみ、県庁所在市でない5政令市では2市であった。議会棟・フロアの禁煙化は一般庁舎に比較して低調であった。医学系大学病院の敷地内禁煙は、本院80施設中の72施設で実施、2施設で決定されていた。分院は58施設中35施設で実施、2施設で決定されていた。鉄道については、JR6社で在来線特急は寝台車を除き全面禁煙となった。新幹線では東海道・山陽と山陽・九州に、私鉄は関西の2社に喫煙車両・喫煙室が残るのみとなった。
結論
わが国の受動喫煙対策は、健康増進法(H15年)、健康局長通知(H22)などにより、徐々に進みつつあるが枠組条約が締約国に求めている内容には全く達していなかった。特に、サービス産業の従業員の受動喫煙防止については早急な対策が必要である。そのためには、諸外国のように罰則のある受動喫煙防止法を成立させることが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201021003B
報告書区分
総合
研究課題名
わが国の今後の喫煙対策と受動喫煙対策の方向性とその推進に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 真美(岐阜大学大学院 医学系研究科再生医科学 循環病態学)
  • 江口 泰正(産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室 )
  • 寶珠山 務(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
  • 太田 雅規     (産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室 )
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の最終目的は、わが国においても公共施設とサービス産業を含む全ての職場を禁煙化させる受動喫煙防止法の成立に対するエビデンスを提供すること、および、実際に全面禁煙化の推進を加速させることである。
研究方法
空間分煙は受動喫煙を防止できない不適切な対策であることを粉じん濃度のリアルタイムモニタリングで明らかにした上で、医歯学部と大学病院の敷地内禁煙の実施状況、公共交通機関(JR、私鉄)の禁煙化状況、官公庁(地方自治体)の建物内禁煙の実施状況、飲食店やタクシー等のサービス産業における受動喫煙の曝露状況とそこで働く従業員の個人曝露の状況、屋外の喫煙コーナー周囲の受動喫煙曝露の状況、残留タバコ成分の評価について研究をおこなった。
結果と考察
本研究の実施期間に、1)タクシーの全面禁煙化、2)JR在来線(寝台特急を除く)と新幹線(東海・山陽、山陽・九州を除く)、私鉄(関西の2社を除く)の全車両禁煙化、3)医歯学部と大学病院で敷地内禁煙を実施する施設の急速な増加、4)地方自治体で建物内禁煙を実施する施設の増加、5)研究成果の報道による飲食店等のサービス産業における禁煙化の必要性に関する啓発が行われた。
結論
以上の結果は、典型的な事例における粉じん濃度の測定結果を基に、郵送法および立ち入り調査による全数調査、その結果の公開、17医歯学会で構成される禁煙推進学術ネットワークより施設管理者に対する受動喫煙防止対策の強化を求める要望書の提出という手順を繰り返すことで実現されてきた。確かに、この手法は公共的な正確が強い医歯学部と大学病院、地方自治体、公共交通機関に対しては有効であったが、中小?零細事業者が多い飲食店等のサービス産業での徹底は困難であることも分かった。今後は、業種や事業場の規模に関わりなく、すべての屋内施設と職場を禁煙とする受動喫煙防止法の成立が必要であり、それに資するエビデンスを提供する研究が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究成果により、受動喫煙防止対策の方向性は喫煙室等を設置する空間分煙ではなく、建物内の全面禁煙が必要であること、また、屋外であっても喫煙場所を非喫煙者の動線から話さねばならないことを明確に示すことができた。
臨床的観点からの成果
本研究成果によりタクシー、JR6社の在来線(寝台特急を除く)、新幹線(東海道・山陽、山陽・九州を除く)、私鉄(関西の2社を除く)が全面禁煙化され、医歯学部と大学病院のほとんどが敷地内禁煙となり、都道府県庁などの地方自治体の建物内禁煙化が進んだ。これにより、多くの国民が受動喫煙から開放され、受動喫煙に起因する疾病を減少させることに寄与したと考えられる。また、飲食店等のサービス産業は危険なレベルの受動喫煙で汚染されていることを示し、国民の啓発に繋がった。
ガイドライン等の開発
「受動喫煙防止対策について」(健発0225第2号、平成22年2月25日)の元となった「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会」に、名古屋市の通学路での子ども達の受動喫煙曝露濃度の測定結果が提出され、報告書に「屋外であっても、子どもや多数の者の利用が想定される公共的な空間(例えば、公園、通学路等)での受動喫煙防止対策は重要」として反映された。
その他行政的観点からの成果
上記にくわえ、先行研究期間に、タクシー乗務員が勤務中の受動喫煙により健康被害を受けたとして損害賠償を求めた訴訟に、車内の受動喫煙曝露濃度のグラフが証拠書類として提出され、裁判長から「タクシー全面禁煙化の早期実現が望ましい」とのコメントが得られた。この一言が契機となり、全国のタクシーの禁煙化が本研究期間中に達成された。
その他のインパクト
「たけしの健康バラエティ、みんなの家庭の医学」、および、NHK「難問解決、ご近所の底力」を含む、マスコミ報道はH20年度が41件、H21年度が20件、H22年度が34件であった。この3年間の成果により、H23年度の厚生労働省主催、世界禁煙デーシンポジウムのパネリストとなり、喫煙室等を設置する空間分煙は不適切な対策であること、建物を全面禁煙とする以外に受動喫煙を防止する対策は存在しないことを紹介し、これも新聞等で報道された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
75件
H20、H21、H22年度の新聞、ラジオ、テレビ放映の件数

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamato, H.・Mori, N.・Horie, R.et al.
Designated Smoking Areas in Streets Where Outdoor Smoking is Banned
Kobe Journal of Medical Sciences , 59 (3) , E93-E105  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021003Z