健康づくりのための休養や睡眠の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201021002A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくりのための休養や睡眠の在り方に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
兼板 佳孝(日本大学医学部 社会医学系公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 真(日本大学医学部 精神医学系)
  • 赤柴 恒人(日本大学医学部 内科学系睡眠医学分野)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 精神医学)
  • 中路 重之(弘前大学大学院 医学研究科 社会医学)
  • 三島 和夫(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神生理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、休養と睡眠のあり方を疫学研究の立場から検証して、指針の改定に必要な科学的根拠を提供することを目的とする。
研究方法
(1) 平成19年国民健康・栄養調査のデータを分析した。(2)非器質性不眠症患者52名を対象に治療前後の気分状態および生活の質(QOL)を比較検討した。(3)睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者について、喫煙とSASの重症度および血圧との関連を検討した。(4) A県I町の成人について睡眠障害と抑うつ度、生活習慣との関係を検討した。(5) 全国から無作為抽出された成人の面接調査データを用いて健康感不足と睡眠の問題の関連を検討した。(6) 19年国民健康・栄養調査データを用いて日本国民のストレスおよび睡眠について分析した。(7) 全国から無作為抽出された成人より面接聞き取りデータが得られ、疲労に関する集計を行った。(8) 健康づくりのための休養指針(案)と休養実践のための啓発プログラムを作成した。(9)日本人医師3,486名を対象とした自記式質問調査データを分析して日中の過剰な眠気やメディカルインシデントとの関連要因を検討した。
結果と考察
(1)不眠症やいびきとメタボリックシンドロームが有意な関連性を示した。(2) 不眠の治療後、睡眠障害、日中眠気、気分状態、QOLの得点が有意に改善した。(3) 重症で喫煙者の血圧は他群に比し有意に高く、重症SASに喫煙が加わると相乗効果で血圧が上昇すると思われた。(4) すべての年代において、睡眠障害と抑うつ度との間に正の相関を示した。(5) 身体健康感不足と睡眠の問題の関連を検討し、中途覚醒、短睡眠時間 、睡眠充足感不足 が有意な負の関連を示し、精神健康感不足と、入眠困難、日中の眠気、睡眠充足感不足 が有意な負の関連を示した。(6) 男女共通してストレス対処行動として趣味を行うことにおいて、不眠についてのオッズ比が低値となった。余暇を友人と過ごすことはストレスに関する調整オッズ比が低値を示した。(7) 易疲労感を訴える人は17.2%、残疲労感を訴える人は13.6%であった。易疲労感及び残疲労感に共通して、女性、熟眠感の喪失、日中のQOLの低下、ストレスと正の関連がみられた。(8)成果をインターネットホームページに掲載した。(9) 短時間睡眠、睡眠休養不足、高頻度の夜勤・当直において、日中の過剰な眠気に関するオッズ比が高値となった。長時間労働、高頻度の夜勤・当直、睡眠休養不足、不眠症において、メディカルインシデントに関するオッズ比が高値となった。
結論
健康づくりにおける休養や睡眠の重要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201021002B
報告書区分
総合
研究課題名
健康づくりのための休養や睡眠の在り方に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
兼板 佳孝(日本大学医学部 社会医学系公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 真(日本大学医学部 精神医学系)
  • 赤柴 恒人(日本大学医学部 内科学系睡眠学分野)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 精神医学)
  • 中路 重之(弘前大学大学院 医学研究科 社会医学)
  • 三島 和夫(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神生理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、健康づくりのための休養指針や睡眠指針の改定が検討されている状況にあって、休養と睡眠のあり方を疫学研究の立場から検証して、指針の改定に必要な科学的根拠を提供するものである。
研究方法
(1)休養・睡眠に関する全国横断調査として、平成20年8月と平成21年11月に無作為抽出した成人に面接聞き取り調査を行った。また、平成12年保健福祉動向調査と平成19年国民健康・栄養調査のデータを分析した。(2)地域住民の縦断研究として、A県I町の住民を対象に身体計測、血液検査、体力測定、生活習慣調査を行った。(3)睡眠センター受診者の調査として、閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者について、メタボリックシンドロームとの関連性を検討した。(4)不眠症患者の抑うつとQOLに関する研究として、非器質性不眠症患者を対象に治療前後の気分状態および生活の質(QOL)を比較検討した。(5)職域の縦断研究として、男性地方公務員の7年間の縦断研究データを解析した。また、日本人医師を対象とした自記式質問調査データを分析した。(6) 健康づくりのための休養指針(案)と休養実践のための啓発プログラムを作成した。
結果と考察
(1)休養と余暇の利用が独立して主観的健康度と関連した。睡眠による休養不足、短い睡眠時間、自由時間の活用度が低いこと、趣味活動に使用できる時間数が少ないことが、心の不健康感や体の不健康感と独立した正の関連性を示した。睡眠自己調節法として入浴や規則正しい生活を心がけていることは日中の過剰な眠気と負に関連し、軽食をとることは正に関連した。不眠症やいびきとメタボリックシンドロームが有意な関連性を示した。(2) 男性ではメタボリックシンドロームに罹患しているものほど睡眠障害を有する率が高かった。女性において睡眠時間が長いほど動脈硬化が進行していた。(3) 非肥満例では無呼吸の回数が多い群において、高血圧、脂質代謝異常、糖代謝異常の合併が多かった。(4) 不眠の治療後、睡眠障害、日中眠気、気分状態、QOLの得点が有意に改善した。(5) 短い睡眠時間は肥満、高血糖、高トリグリセライド血症の発症リスクを高めた。交代制勤務は高血糖と高トリグリセライドの発症を促進した。短時間睡眠、睡眠休養不足、高頻度の夜勤・当直、長時間労働、不眠症が日中の過剰な眠気やメディカルインシデントと関連した。(6) 成果をインターネットホームページに掲載した。
結論
複数の疫学研究によって、健康づくりにおける休養や睡眠の重要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究課題は、健康づくりのための休養指針や睡眠指針の改定が検討されている状況にあって、休養と睡眠のあり方を疫学研究の立場から検証して、指針の改定に必要な科学的根拠を提供するものである。3年間の研究によって、睡眠障害や休養不足がうつ状態などの精神疾患や生活習慣病などの身体疾患と密接に関連することなどの知見が得られた。また、睡眠に関連する問題が心身の疾患の発症を促進することなどの知見が得られた。
臨床的観点からの成果
不眠症に対するの治療を行うことは、不眠症状や日中の眠気の症状を改善するだけではなく、気分状態や生活の質をも改善させることが明らかとなった。睡眠時無呼吸症候群がメタボリックシンドロームと密接に関連することが明らかとなった。以上に述べたごとく、本研究によって、睡眠に関連する疾患の臨床像や病態生理の一端が明らかとなった。
ガイドライン等の開発
平成6年に厚生省より健康づくりのための休養指針が発表されたが、それ以降、本指針の改訂は行われていない。そのため、国民の生活スタイルや勤労形態の多様化、社会経済情勢の変化などにより、対応できない状況が増えつつある。そこで、本研究課題では、得られた疫学研究知見に基づいて健康づくりのための休養指針の改定案を作成した。
その他行政的観点からの成果
現時点においては行政的観点からの成果として特記事項はない。本研究課題から提案した健康づくりのための休養指針の改定案が、今後の公衆衛生活動に利用されることを期待したい。
その他のインパクト
研究成果の一部が平成20年6月24日付け日本経済新聞夕刊で紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Aritake-Okada S, Kaneita Y, Uchiyama M, et al.
Non-Pharmacological Self-Management of Sleep Among the Japanese General Population.
Journal of Clinical Sleep Medicine , 5 , 464-469  (2009)
原著論文2
Itani O, Kaneita Y, Murata A, et al.
Association of onset of obesity with sleep duration and shift work among Japanese adults.
Sleep Medicine , 12 , 341-345  (2011)
原著論文3
Furihata R, Uchiyama M, Takahashi S, et al.
Self-help behaviors for sleep and depression: A Japanese nationwide general population survey.
Journal of Affective Disorders , 130 , 75-82  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
支出には利息が723円と自己資金35円が含まれるため補助金確定額との間に差異がある。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-