バイオマーカーを用いた加熱式たばこによる受動喫煙の健康影響を評価するための研究

文献情報

文献番号
202508003A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオマーカーを用いた加熱式たばこによる受動喫煙の健康影響を評価するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
大森 久光(国立大学法人熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 黒澤 一(東北大学 高等教育開発推進センター 学生生活支援部 保健管理室)
  • 緒方 裕光(女子栄養大学 疫学・生物統計学研究室)
  • 大坪 和明(熊本大学 大学院生命科学研究部(保))
  • 首藤 剛(熊本大学 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,加熱式たばこによる能動喫煙・受動喫煙が人の健康に及ぼす影響をバイオマーカーから予測し、評価することを目的とした。曝露指標(尿中ニコチン代謝物、尿中たばこ特異的ニトロソアミン類: NNAL)に加えて、肺への影響指標(エクソソーム(細胞外小胞)miRNA、 Fibulin-3及びSP-D)および臨床指標(炎症、呼吸機能)を分析し、加熱式たばこの使用によって呼吸器疾患につながりうる影響指標の探索を行った。
研究方法
「項目1:加熱式たばこ使用による受動喫煙曝露の実態調査(長期間の臨床指標への影響の評価)」および「項目2:呼吸器疾患につながりうる影響指標の探索」で構成されている。
人間ドック受診者(呼吸機能検査および肺CT検診を含む)を対象に令和7年度も新たに3,000名をリクルートした。すべての余剰尿、余剰血清を回収・保存した。
余剰血清より、エクソソーム(細胞外小胞)miRNAを次世代シーケンサーで解析し、そのプロファイルの取得を行った。主成分分析では、肺気腫の有無でクラスターが分かれること、つまり肺病変によってmiRNAプロファイルが変化することを見出し、さらに、肺障害関連miRNAの解析、たばこの種類の比較や、病態に繋がるバイオマーカーの探索を行った。
結果と考察
【項目1】総リクルート数は8,299名(尿、血清を保存)となり、追跡調査が可能な状況にある。そのうち、CT肺気腫あり174名(加熱式たばこ使用者:35名、紙巻たばこ喫煙者:35名、加熱式たばこおよび紙巻たばこ併用者3名を含む)、健常者(Control: CT肺気腫なし、呼吸機能正常)58名(受動喫煙あり:46名、受動喫煙なし:12名)を対象に、呼吸器疾患につながりうる影響指標の探索(項目2)を継続している。
また、長期間の臨床指標への影響の評価のため、特に呼吸機能の経年変化および炎症指標(hsCRP、白血球)との関連についての分析を継続している。
【項目2】・喫煙者・受動喫煙者の生体試料(尿)に含まれている曝露指標(たばこ由来のニコチン代謝物とNNAL)に対するトリプル四重極型(QQQ)LC-MSによる受動喫煙レベルでの高感度分析方法を確立した。
・微量な余剰血清よりエクソソームに含まれるmiRNAを抽出し、次世代シーケンシング (NGS:Next Generation Sequencing) によるmiRNAの発現プロファイル解析法およびクラスター分析(主成分分析)法を確立した。
 我々は肺気腫で増減するmiRNAを見出し、そのボルケーノプロットで解析により有意に上昇、低下するmiRNAを割り出した。Gene ontology解析を行った結果、慢性炎症や、脂質代謝、骨格筋の萎縮、細胞老化、血管内皮の障害、酸化ストレス応答、上皮細胞のアポトーシス、細胞マトリックスの破壊といった、肺疾患に特徴的な表現系(COPDの併存疾患)がエンリッチ(指し示め)された。血清中miRNAは肺疾患の良いバイオマーカーとなることが判明した。
さらに、リアルタイムPCRによるmiRNAの精密定量系を組み立てた。肺気腫で有意に増加していたmiR-766-3pを喫煙の種類別ごとに定量すると、このmiRNAが、喫煙により誘導されること、特に、加熱式たばこで有意に増加することが明らかとなった。miR-766-3pは、非小細胞がんを促進させる因子として知られており、この結果は、加熱式たばこは紙巻きたばこと比較して肺気腫患者への肺がん発症リスクをより高める可能性があることを示唆する。
次世代シーケンサーによりmiRNAのプロファイルを解析し、加熱式たばこによる能動喫煙および受動喫煙者で有意に変動するmiRNAを決定し、リアルタイムPCRで検証を行い、一般の医療機関での解析可能なmiRNAバイオマーカーの創出が可能となった。
さらに、miRNAを指標とした解析結果と曝露指標、臨床指標の経年変化、炎症指標および肺胞破壊やCOPDの病態マーカー(Fibulin-3、SP-D)との関連を解析することで、呼吸器疾患につながり得るバイオマーカーを見出し、その評価方法を開発する。
結論
総リクルート数は8,299名であり、加熱式たばこによる能動喫煙・受動喫煙を長期に追跡調査が可能な状況にある。参加者の過去のデータベースを活用したRetrospective cohort studyと長期のProspective cohort studyの構築も可能となった。
曝露指標に対する受動喫煙レベルでの高感度分析方法を確立した。
肺気腫で有意に増加していたmiR-766-3pが喫煙により誘導され、特に加熱式たばこ喫煙者で有意に増加した。
一般の医療機関での解析可能な加熱式たばこによる能動喫煙・受動喫煙に関連するmiRNAバイオマーカーの創出が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2026-09-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-10
更新日
-

文献情報

文献番号
202508003B
報告書区分
総合
研究課題名
バイオマーカーを用いた加熱式たばこによる受動喫煙の健康影響を評価するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
大森 久光(国立大学法人熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 黒澤 一(東北大学 高等教育開発推進センター 学生生活支援部 保健管理室)
  • 緒方 裕光(女子栄養大学 疫学・生物統計学研究室)
  • 大坪 和明(熊本大学 大学院生命科学研究部(保))
  • 首藤 剛(熊本大学 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,加熱式たばこによる能動喫煙・受動喫煙が人の健康に及ぼす影響をバイオマーカーから予測し、評価することを目的とした。曝露指標(尿中ニコチン代謝物、尿中たばこ特異的ニトロソアミン類: NNAL)に加えて、肺への影響指標(エクソソーム(細胞外小胞)miRNA、 Fibulin-3及びSP-D)および臨床指標(炎症、呼吸機能)を分析し、加熱式たばこの使用によって呼吸器疾患につながりうる影響指標の探索を行った。
研究方法
「項目1:加熱式たばこ使用による受動喫煙曝露の実態調査(長期間の臨床指標への影響の評価)」および「項目2:呼吸器疾患につながりうる影響指標の探索」で構成されている。
人間ドック受診者(呼吸機能検査および肺CT検診を含む)を対象に令和5-7年度の3年間リクルートを行った。すべての余剰尿、余剰血清を回収・保存した。
余剰血清より、エクソソーム(細胞外小胞)miRNAを次世代シーケンサーで解析し、そのプロファイルの取得を行った。主成分分析では、肺気腫の有無でクラスターが分かれること、つまり肺病変によってmiRNAプロファイルが変化することを見出し、さらに、肺障害関連miRNAの解析、たばこの種類の比較や、病態に繋がるバイオマーカーの探索を行った。
結果と考察
【項目1】総リクルート数は8,299名(尿、血清を保存)であり、追跡調査が可能な状況にある。そのうち、CT肺気腫あり174名(加熱式たばこ使用者:35名、紙巻たばこ喫煙者:35名、加熱式たばこおよび紙巻たばこ併用者3名を含む)、健常者(Control: CT肺気腫なし、呼吸機能正常)58名(受動喫煙あり:46名、受動喫煙なし:12名)を対象に、呼吸器疾患につながりうる影響指標の探索(項目2)を継続している。
また、長期間の臨床指標への影響の評価のため、特に呼吸機能の経年変化および炎症指標(hsCRP、白血球)との関連についての分析を継続している。
【項目2】・喫煙者・受動喫煙者の生体試料(尿)に含まれている曝露指標(たばこ由来のニコチン代謝物とNNAL)に対するトリプル四重極型(QQQ)LC-MSによる受動喫煙レベルでの高感度分析方法を確立した。
・微量な余剰血清よりエクソソームに含まれるmiRNAを抽出し、次世代シーケンシング (NGS:Next Generation Sequencing) によるmiRNAの発現プロファイル解析法およびクラスター分析(主成分分析)法を確立した。
 我々は肺気腫で増減するmiRNAを見出し、そのボルケーノプロットで解析により有意に上昇、低下するmiRNAを割り出した。Gene ontology解析を行った結果、慢性炎症や、脂質代謝、骨格筋の萎縮、細胞老化、血管内皮の障害、酸化ストレス応答、上皮細胞のアポトーシス、細胞マトリックスの破壊といった、肺疾患に特徴的な表現系(COPDの併存疾患)がエンリッチ(指し示め)された。血清中miRNAは肺疾患の良いバイオマーカーとなることが判明した。
さらに、リアルタイムPCRによるmiRNAの精密定量系を組み立てた。肺気腫で有意に増加していたmiR-766-3pを喫煙の種類別ごとに定量すると、このmiRNAが、喫煙により誘導されること、特に、加熱式たばこで有意に増加することが明らかとなった。miR-766-3pは、非小細胞がんを促進させる因子として知られており、この結果は、加熱式たばこは紙巻きたばこと比較して肺気腫患者への肺がん発症リスクをより高める可能性があることを示唆する。
次世代シーケンサーによりmiRNAのプロファイルを解析し、加熱式たばこによる能動喫煙および受動喫煙者で有意に変動するmiRNAを決定し、リアルタイムPCRで検証を行い、一般の医療機関での解析可能なmiRNAバイオマーカーの創出が可能となった。
さらに、miRNAを指標とした解析結果と曝露指標、臨床指標の経年変化、炎症指標および肺胞破壊やCOPDの病態マーカー(Fibulin-3、SP-D)との関連を解析することで、呼吸器疾患につながり得るバイオマーカーを見出し、その評価方法を開発する。
結論
総リクルート数は8,299名であり、加熱式たばこによる能動喫煙・受動喫煙を長期に追跡調査が可能な状況にある。
曝露指標に対する受動喫煙レベルでの高感度分析方法を確立した。
血清中miRNAは肺疾患(肺気腫)の良いバイオマーカーとなることが判明した。肺気腫で有意に増加していたmiR-766-3pが喫煙により誘導され、特に加熱式たばこ喫煙者で有意に増加した。
本研究の重要な成果の一つは、加熱式たばこによる能動喫煙および受動喫煙者で有意に変動するmiRNAを決定し、リアルタイムPCRで検証を行い、一般の医療機関での解析可能なmiRNAバイオマーカーの創出が可能となったことである。

公開日・更新日

公開日
2026-09-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202508003C

収支報告書

文献番号
202508003Z