抗がん剤効果予測による乳がん患者の再発リスク抑制と毒性軽減および医療経済負担低減に関する検証的研究

文献情報

文献番号
201020086A
報告書区分
総括
研究課題名
抗がん剤効果予測による乳がん患者の再発リスク抑制と毒性軽減および医療経済負担低減に関する検証的研究
課題番号
H22-がん臨床・一般-039
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
戸井 雅和(京都大学 大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 笹野 公伸(東北大学 大学院医学系研究科 医科学専攻病理病態学講座 病理診断学講座)
  • 山城 大泰(京都大学 大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学)
  • 石黒 洋(京都大学医学部附属病院 探索医療センター検証部 外来化学療法部)
  • 稲本 俊(天理よろづ相談所病院 乳腺外科)
  • 内藤 泰宏(慶応義塾大学 環境情報部)
  • 杉本 昌弘(慶応義塾大学 環境情報学部)
  • 近藤 正英(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 黒井 克昌(東京都立駒込病院 外科(乳腺) 臨床試験科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,810,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原発性乳がんの治療における化学療法の最適化は再発リスクの抑制と毒性の軽減、quality of life (QOL)の向上に寄与する。また、医療経済負担の軽減に貢献する。乳がんのサブタイプ別に化学療法の適応、効果予測、標的療法との併用時の効果予測、予後予測に関する検討を行うことを主目的とした。新規の診療手法導入の医療経済学的効率性に及ぼす影響も分析、評価した。
研究方法
Luminal-type乳がんでは最近の診療症例を対象にして、組織学的グレード、細胞増殖指標Ki67 labeling index、多遺伝子検査等を組み合わせた分析を行った。Alternating decision treeの手法を用いて、強力な予後因子で化学療法の適応決定に密接に関与する腋窩リンパ節転移の有無の予測、術前化学療法の組織学的抗腫瘍効果の予測、に関するモデルを開発し性能評価検証試験を行った。術前化学療法の効果予測としてCD44/CD24に関する検討、ホルモン療法耐性に関してmiR7の検討を行った。HER2陽性乳がんでは、術前抗HER2療法+化学療法施行例を対象にして、組織学的抗腫瘍効果の予後に及ぼす影響を検討することとし予備的検討を行った。Basal-type乳がんでは遺伝子修復関連酵素の発現調節を検討した。多遺伝子検査、術前抗HER2療法等に関して、医療経済学的効率性を分析した。
結果と考察
Luminal-type乳がんでは、Ki67、組織グレード、多遺伝子検査を症例に応じて組み合わせることにより、より的確な予後予測と治療効果の予測が可能になると考えられた。腋窩リンパ節転移の有無、術前化学療法の組織学的効果を予測する高性能モデルを作成した。いずれも臨床応用に向けた検討が可能と考えられた。新規のバイオマーカー研究からは、今回検討したマーカーはいずれも化学療法効果予測、予後予測に有用である可能性が示唆された。術前抗HER2療法に関する組織学的抗腫瘍効果別の予後分析は、今後のHER陽性乳癌の治療個別化につながり、また医療経済効率性向上にも寄与すると考えられた。費用対効果について、多遺伝子検査は良好な結果を示し、重要な知見と考えられた。
結論
これらの研究成果は、原発性乳がん患者における治療成績向上、QOLの改善、医療経済学的効率性の改善に寄与すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020086Z