汎用性質問促進資材を含む、限局期がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援プログラムの開発・検証とその成果に基づく実装に向けた研究

文献情報

文献番号
202507017A
報告書区分
総括
研究課題名
汎用性質問促進資材を含む、限局期がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援プログラムの開発・検証とその成果に基づく実装に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1018
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
内富 庸介(東京慈恵会医科大学 がんサバイバーシップ・デジタル医療学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 麻衣子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 サバイバーシップ研究部 支持・緩和・心のケア研究室)
  • 上野 太郎(サスメド株式会社)
  • 明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
  • 朴 成和(東京大学医科学研究所 腫瘍内科)
  • 山口 拓洋(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科医学統計学分野)
  • 桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社)
  • 島津 太一(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
  • 白井 由紀(関西医科大学 看護学部・看護学研究科 治療看護分野 がん看護学領域)
  • 岡村 優子(国立がん研究センター がん対策研究所サバイバーシップ研究部)
  • 秋月 伸哉(がん・感染症センター都立駒込病院)
  • 小濱 京子(東京慈恵会医科大学 がんサバイバーシップ・デジタル医療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,309,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限局期を含むがん患者を対象に、質問リスト(Question Prompt List: QPL)を用いたデジタル化意思決定支援プログラム(Digital Decision-making Support Program: D2SP)を開発し、その有効性を検討するとともに、研究成果の論文化および公開を行うことを目的とした。さらに、患者向け情報提供法や医療者向け教育訓練法を含めた総合プログラムとして整備し、全国均てん化を目指した。
研究方法
令和7年度は3か年計画の最終年度として、これまでに開発・検証してきたD2SPおよびQPL導入総合プログラムを全国展開用に再構成した。D2SPは、17項目版QPLと患者向け説明動画から成る患者向け資材として整備した。さらに、医療者教育、施設導入フロー、FAQ、声かけ例、実装支援テキスト等を加えたQPL導入総合プログラムを開発した。患者・市民/患者支援関係者からの意見を取り入れ、資材内容の改訂および導入支援体制の整備を行った。
 また、九州がんセンターにおける単施設実装研究を通じて、導入上の阻害・促進要因を整理した。さらに、5施設を対象とした多施設実装研究を実施し、実装アウトカムを評価した。加えて、日本サイコオンコロジー学会と連携した実装ワークショップを開催するとともに、全国普及度調査を行い、質問リストの認知度や導入状況を把握した。
結果と考察
D2SPおよびQPL導入総合プログラムを、動画教材、実装支援テキストを含む全国展開用パッケージとして整備し、ウェブサイト上で公開した。さらに同一資材をUSB媒体セットとして整備し、インターネット環境に依存せず、導入準備に活用できる提供体制を整えた。患者・家族が診察前に疑問や希望を整理し、医療者との対話に活用できる環境を整備するとともに、医療者や施設が導入・継続しやすい支援体制と全国実装に向けた基盤を構築した。
 単施設および多施設実装研究では、質問リストの導入には単なる資材配布だけでなく、患者への説明、医療者間の周知、診療・相談場面での活用支援、施設内の役割分担が重要であることが示された。また、施設ごとに診療体制や患者導線が異なるため、「標準化」と「施設特性に応じた適応」の両立が必要であることが示唆された。
 QPL実装ワークショップには13名(医師12名、看護師1名)が参加し、実装支援テキストを用いてグループワークを実施した。ワークショップを通じて、導入を担う医療者が具体的な導入方法や実践上の課題を共有でき、全国均てん化に向けた実装推進者育成の有用性が示唆された。
 全国普及度調査では、医師496名中31%が質問リストを認知していた一方、使用経験は17%にとどまり、「質問リストを知らなかった」ことが主要な阻害要因として示された。これらの結果から、今後は普及啓発や導入支援体制の強化が重要であることが示唆された。さらに、患者市民団体による評価を通じて、患者視点に基づく分かりやすい表現や導線整備の重要性も確認された。
結論
本研究では、がん患者の共同意思決定を支援するD2SPおよびQPL導入総合プログラムを整備し、ウェブサイト公開や実装研究、ワークショップ等を通じて全国均てん化に向けた基盤を構築した。質問リスト導入には、資材提供のみならず、患者への説明や医療者教育、施設特性に応じた導入支援が重要であることが示された。今後は、実装研究および普及度調査で得られた知見を踏まえ、関連学会や患者支援団体と連携しながら、導入支援体制の充実とプログラムの継続的改良を進めることで、患者中心のコミュニケーション支援の普及が期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-07-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-29
更新日
-

文献情報

文献番号
202507017B
報告書区分
総合
研究課題名
汎用性質問促進資材を含む、限局期がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援プログラムの開発・検証とその成果に基づく実装に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1018
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
内富 庸介(東京慈恵会医科大学 がんサバイバーシップ・デジタル医療学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 麻衣子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 サバイバーシップ研究部 支持・緩和・心のケア研究室)
  • 上野 太郎(サスメド株式会社)
  • 山口 拓洋(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科医学統計学分野)
  • 明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
  • 朴 成和(東京大学医科学研究所 腫瘍内科)
  • 桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社)
  • 島津 太一(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
  • 白井 由紀(関西医科大学 看護学部・看護学研究科 治療看護分野 がん看護学領域)
  • 岡村 優子(国立がん研究センター がん対策研究所サバイバーシップ研究部)
  • 秋月 伸哉(がん・感染症センター都立駒込病院)
  • 小濱 京子(東京慈恵会医科大学 がんサバイバーシップ・デジタル医療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限局期を含むがん患者を対象に、質問リスト(Question Prompt List: QPL)を用いたデジタル化意思決定支援プログラム(Digital Decision-making Support Program: D2SP)を開発し、その効果を検討するとともに、原著論文および論文集を公表することを目的とした。さらに、患者向け情報提供法や医療者向け教育訓練法を加えた総合プログラムとして整備し、全国均てん化を目指した。
研究方法
2023~2025年度にかけて、QPLを用いた患者向け意思決定支援プログラムおよび実装支援プログラムの開発・検証・普及を段階的に実施した。
研究1)QPL介入研究に関する系統的レビューを実施し、ランダム化比較試験21本を対象として論文集を作成・公開した。先行研究から約400項目のQPL質問項目を収集し、国立がん研究センター患者・市民パネル参加者199名を対象とした3回のデルファイ調査を経て、限局期を含むがん患者を対象とした17項目版QPLを作成した。さらに、患者向け説明動画を作成した。
研究2)がん診療連携拠点病院の医療者インタビューを基に、QPL導入の阻害・促進要因を抽出し、実装戦略に基づくQPL総合プログラムを開発した。単施設実装研究により、QPL総合プログラムの実施可能性を検討するとともに患者および医療者調査を実施した。5施設を対象とした多施設実装研究により、施設特性に応じた導入方法を検討し実装アウトカムを評価した。開発した導入資材を用いて、日本サイコオンコロジー学会と連携したQPL実装ワークショップを開催した。また、全国普及度調査を実施し、QPLの認知度や普及状況を評価した。
結果と考察
研究1)系統的レビューでは、21本のQPL介入研究のデータを抽出し、QPLの有用性等について研究論文集を作成し、ウェブサイト上で公開した。デルファイ調査を通じて、17項目版QPLを開発し、「病気と検査」「症状と対処法」「治療の理解と選択」「生活・仕事・家族のこと」などを含む患者視点の質問項目を整備した。また、患者支援団体の代表者の協力を得て、患者向けQPL説明動画を作成した。D2SPは、17項目版QPLと患者向け説明動画から成る患者向け資材としてウェブサイト上で公開した。これにより、患者・家族が診察前に疑問や希望を整理し、医療者との話し合いに活用できる資材を、オンライン上で利用可能な形で提供した。
研究2)医療者向け教材や施設導入支援資材を含むQPL総合プログラムを公開し、各施設の実情に応じた導入を可能とした。単施設実装研究では、九州がんセンターにおいて17項目版QPLを初診患者へ配布し、QPLの導入に取り組んだワーキンググループの行動目標が達成されたことにより実施可能性評価基準を満たした。約9割の患者がQPLを有用と評価していた一方で、医療者が実際に診療場面でQPLを活用した割合は低く、導入には患者への説明、医療者間の周知、役割分担などを含む実装支援が必要であることが明らかとなった。多施設実装研究では、各施設が診療体制や患者導線に応じて導入方法を調整しており、全国均てん化には「標準化」と「施設特性に応じた適応」の両立が必要であることが示唆された。QPL実装ワークショップには13名(医師12名、看護師1名)が参加し、導入を担う医療者が具体的な導入方法や実践上の課題を共有でき、全国均てん化に向けた実装推進者育成の有用性が示唆された。全国普及度調査では、医師496名、がん相談部門担当者69名から回答を得た。医師496名中31%が質問リストを認知していた一方、使用経験は17%にとどまり、最大の阻害要因は「質問リストを知らなかった」であった。これらの結果から、今後は普及啓発や導入支援体制の強化が重要であると考えられた。さらに、患者市民団体による評価を通じて、患者視点に基づく分かりやすい表現や導線整備の重要性も確認された。
結論
本研究では、限局期がん患者を含む患者を対象としたQPLを活用したデジタル化意思決定支援プログラム(D2SP)およびQPL総合プログラムを開発し、ウェブサイト公開、実装研究、ワークショップ等を通じて全国均てん化に向けた普及実装基盤を整備した。QPLは患者の疑問や希望の整理を支援し、医療者との共同意思決定を促進する有用な資材であることが示された。一方で、その普及には、資材提供のみならず、医療者教育、施設特性に応じた導入支援、実装推進者育成が不可欠であることが明らかとなった。今後は、多施設導入後評価や全国普及度調査の結果を踏まえ、プログラムを継続的に改良し、関連学会、医療機関、患者支援団体等と連携しながら、患者中心のコミュニケーション支援および共同意思決定支援の普及を推進する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-07-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202507017C

収支報告書

文献番号
202507017Z