高度リンパ節転移を伴う進行胃癌の根治を目指した術前化学療法+拡大手術法の確立

文献情報

文献番号
201020057A
報告書区分
総括
研究課題名
高度リンパ節転移を伴う進行胃癌の根治を目指した術前化学療法+拡大手術法の確立
課題番号
H22-がん臨床・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐野 武(財団法人癌研究会有明病院 消化器外科)
研究分担者(所属機関)
  • 大下 裕夫(岐阜市民病院)
  • 木下 平(国立がん研究センター東病院)
  • 齋藤 俊博(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター)
  • 田中 洋一(埼玉県立がんセンター)
  • 辻本 広紀(防衛医科大学校)
  • 二宮 基樹(広島市立広島市民病院)
  • 平塚 正弘(市立伊丹病院)
  • 平林 直樹(広島市立安佐市民病院)
  • 藤田 淳也(市立豊中病院)
  • 藤谷 恒明(宮城県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度リンパ節転移を伴う胃癌では、たとえ肉眼的治癒切除が行えたとしても予後は極めて不良である。しかし、遠隔転移、腹膜播種などの切除不能因子を有する進行胃癌と異なり、強力な術前化学療法と拡大手術の組み合わせにより治癒できる可能性がある。
研究方法
JCOG胃がんグループによる多施設共同第II相臨床試験としてスタートする。上腹部造影CTにて高度リンパ節転移陽性(第2群リンパ節転移が一塊となって腫瘤を形成するBulky N2と、第3群大動脈周囲リンパ節No.16a2/b1転移のどちらか、または両方)と診断された症例を対象とし、DCS療法を2コース行った後、腫瘍縮小効果をRECISTで評価し、手術を行う。治癒切除を目指し、D3郭清を伴う胃切除を行う。術後はS-1補助化学療法を1年間行う。
 主評価項目は術前化学療法による奏効割合、副次評価項目は3年生存割合、5年生存割合、根治切除割合、治療完遂割合、組織学的奏効割合、有害事象発生割合とする。平成23年度早々にプロトコールを完成させ登録を開始する。平成24年度末までに50例を集積し、安全性・有効性が認められれば、現在暫定標準とみなされる術前S-1 + CDDPを対照として、第III相試験を開始する予定である。
結果と考察
平成22年度はプロトコール作成を行った。DCS療法の投与スケジュールについては、臨床腫瘍学的標準化の立場から、すでに第2相試験が論文報告されている北里大学レジメンを用いることとなった。リンパ節郭清をどこまで行うかについて大きな議論となった。治療前に大動脈周囲リンパ節No.16が腫大している症例に関してはこれを切除するD3郭清を行うことで問題はないが、Bulky N2のみの症例でD3を行うべきか否かで意見が伯仲した。最終的には、従来の試験との比較性を保つことも念頭に、全例D3を行うことで意見の統一をみた。JCOGプロトコール審査委員会の審査を経て改訂を行い、最終審査を待つ段階となった。
高度リンパ節転移を有する胃癌に対し、現時点では術前S-1 + CDDPとD3胃切除(JCOG 0405)で得られた成績が最良である。本研究では、さらに生存期間の改善を目指してDCSという強力な術前化学療法と拡大郭清手術を行い、これまで極めて予後不良と事実上諦められていた症例の多くに治癒をもたらすことが期待される。
結論
今日のわが国の胃癌は、確実に治る早期癌と、非治癒因子を持つ高度進行癌に2極化されつつあると言われるが、この境界領域にある本研究対象患者の予後が改善すれば、わが国のみならず世界の胃癌治療全般の底上げにつながると期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020057Z