乳がん検診の受診率に関わる諸因子の解明と、受診率向上に向けた効果的な方策に資する研究

文献情報

文献番号
202507004A
報告書区分
総括
研究課題名
乳がん検診の受診率に関わる諸因子の解明と、受診率向上に向けた効果的な方策に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 昭彦(東北医科薬科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
  • 笠原 善郎(福井県済生会病院 乳腺外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳癌検診の受診率向上は、社会的に検診の効果を発揮するためには必須の事項であるが、我が国においては欧米諸国との比較で受診率が低いことが問題とされている。本研究では乳がん検診の受診率に影響を与える因子の解明と、その対策について検討することを目的としている
研究方法
乳癌検診の受診対象となる年齢層の女性に対し、検診の受診動機や受診の障害となる因子を検討する目的でアンケート調査を行った。
 宮城県内の自治体が行っている住民検診での自己負担、それぞれの自治体での検診受診率のデータを収集し、関連性を調査した
結果と考察
住民検診を受診した理由では、早期発見したいから46%のほか、費用の補助があったからが41%、自治体の広報・パンフレットを見たからが32%であり、費用補助がモチベーションになっていることが明らかとなった。アンケート調査の結果を多変量ロジスティック回帰分析、因子分析およびクラスター分析を行った。受診は年齢上昇と有意に関連し、50–59歳は40–49歳に比しOR1.67(95%CI 1.33–2.09)であった。既婚、子の有無、高学歴、中~高所得、運転免許保有も独立した関連因子であった。受診者(n=3,907)は4クラスターに分類され「動機不明型」が80%を占め、制度依存的受診の傾向が示唆された。一方、未受診者(n=734)は7クラスターに分類され、「動機希薄型」46%、「コスト懸念型」18%、「後回し型」11%が主要群であった。
宮城県内の住民検診を提供している30自治体の乳がん検診の受診率と検診受診時の自己負担額の関連を調査した。自治体の検診受診率は全体で13.2%であったが、市町村毎の受診率は最低5.2%から最高31.7%までの開きがあった。検診での自己負担額は無料から4200円までの範囲で徴収されており、また年齢によって徴収額が異なっていた。40-64歳では平均1823円(中央値2000円)、65-74歳では平均1128円(中央値1200円)、75歳以上では平均526円(中央値500円)であった。若年から検診料金無料の自治体で受診率が高い傾向は見られたが有意差はなかった。自己負担額を無料化した自治体で無料化前後の受診率が12.8%→13.5%に上昇した事例や、逆に個人負担金を有料化した自治体では受診率が18.6%→16.8%と低下した事例があった。

D. 考察
今回調査を行った住民検診の範囲では、検診費用の補助が受診率に影響は与えるものの、決定的な違いを生むほどのインパクトはなかった。また、自治体によっては加入する医療保険の種類(国保、社保)によって費用負担に差を設けている自治体が約半数あった。40-65歳の年代では職場での検診を受けている女性も多いと見られ、これらの影響も考慮する必要がある。
結論
未受診者は均質ではなく、多様な心理的・社会的背景を有していた。これらの結果はHealth Belief Modelおよび行動経済学的枠組みに整合する多層的行動構造を示し、受診率向上には制度設計の改善、利便性向上、リマインド強化、費用支援、教育および信頼醸成を統合した個別化戦略が不可欠である

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

文献情報

文献番号
202507004B
報告書区分
総合
研究課題名
乳がん検診の受診率に関わる諸因子の解明と、受診率向上に向けた効果的な方策に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 昭彦(東北医科薬科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
  • 笠原 善郎(福井県済生会病院 乳腺外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳癌検診の受診率向上は、社会的に検診の効果を発揮するためには必須の事項であるが、我が国においては欧米諸国との比較で受診率が低いことが問題とされている。本研究では乳がん検診の受診率に影響を与える因子の解明と、その対策について検討することを目的としている
研究方法
乳癌検診の受診対象となる年齢層の女性に対し、検診の受診動機や受診の障害となる因子を検討する目的でアンケート調査を行った。
 宮城県内の自治体が行っている住民検診での自己負担、それぞれの自治体での検診受診率のデータを収集し、関連性を調査した。
 宮城県、福井県の自治体が行っている住民検診、職域での検診について状況解析を行った。自己負担、それぞれの自治体での検診受診率のデータを収集し、関連性を調査した
結果と考察
住民検診を受診した理由では、早期発見したいから46%のほか、費用の補助があったからが41%、自治体の広報・パンフレットを見たからが32%であり、費用補助がモチベーションになっていることが明らかとなった。アンケート調査の結果を多変量ロジスティック回帰分析、因子分析およびクラスター分析を行った。受診は年齢上昇と有意に関連し、50–59歳は40–49歳に比しOR1.67(95%CI 1.33–2.09)であった。既婚、子の有無、高学歴、中~高所得、運転免許保有も独立した関連因子であった。受診者(n=3,907)は4クラスターに分類され「動機不明型」が80%を占め、制度依存的受診の傾向が示唆された。一方、未受診者(n=734)は7クラスターに分類され、「動機希薄型」46%、「コスト懸念型」18%、「後回し型」11%が主要群であった。
宮城県内の住民検診を提供している30自治体の乳がん検診の受診率と検診受診時の自己負担額の関連を調査した。自己負担額を無料化した自治体で無料化前後の受診率が12.8%→13.5%に上昇した事例や、逆に個人負担金を有料化した自治体では受診率が18.6%→16.8%と低下した事例があった。
乳癌検診受診者の全国集計では総受診者(登録者)数は215~270万人で2019年度までは増加したが2020年度の新型コロナ感染症蔓延時期に220万人まで落ち込み、2022年度でも240万人台と2019年(コロナ前)レベルには回復してない。
対策型、任意型の占める割合についてみると任意型検診が35%前後から40%以上に徐々に増加傾向にある
考察
1)受診行動の社会的決定要因は、乳がん検診受診行動が社会経済的要因および心理的要因の多層的影響を受けることを明確に示した。
2)受診者の80%が「動機不明型」に分類されたことは、本研究の重要な特徴である
3) 未受診者は均質ではなく、心理的・社会的背景に基づく明確な異質性を示した
4)受診行動は個人認知のみならず、家族・職域・地域・政策といった複数階層に規定される。したがって受診率向上は、「個人への啓発」にとどまらず、制度的導線の整備、職域・自治体の実装力向上、教育および信頼醸成を統合した多層戦略として設計される必要がある。
5)限界と今後の課題
本研究はインターネット調査であり、健康リテラシーの高い層に偏る可能性がある。また、都道府県均等抽出のため人口比を厳密には反映していない。受診歴および心理要因は自己申告であり、想起バイアスを含む可能性がある。
結論
本研究は、全国4,700名を対象とした解析により、乳がん検診受診行動が社会経済的背景および心理的要因の多層構造を有することを明らかにした。未受診者は均質ではなく、動機の希薄さ、経済的負担、先延ばし傾向、不信や不安など、異なる行動特性を有する複数の集団から構成されていた。したがって受診率向上には、一律の啓発ではなく、層別化された個別化介入と制度設計の最適化を統合した戦略が不可欠である。本研究の知見は、日本における乳がん検診政策の再設計および実装科学的評価の基盤となるものであり、今後は縦断的研究およびクラスター別介入の効果検証を通じて、持続可能かつ公平な検診体制の構築を目指す必要がある

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202507004C

収支報告書

文献番号
202507004Z