ピロリ菌除菌による胃癌予防の経済効果に関する研究

文献情報

文献番号
201020051A
報告書区分
総括
研究課題名
ピロリ菌除菌による胃癌予防の経済効果に関する研究
課題番号
H22-がん研究・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 元嗣(北海道大学 北海道大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 濃沼 信夫(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 菊地 正悟(愛知医科大学 医学部)
  • 浅香 正博(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 神谷 茂(杏林大学 医学部)
  • 奥田 真珠美(兵庫医科大学 医学部)
  • 柳岡 公彦(和歌山県立医科大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胃癌はピロリ菌感染に伴う慢性胃炎から発生し、除菌による胃癌予防は臨床試験によって認められている。わが国の胃癌予防対策にピロリ菌除菌の導入をすべきで、そのためには除菌による胃癌予防の経済効果を予測する必要がある。しかし、分析の基礎となる、わが国の性年齢別の感染率や胃粘膜萎縮の程度、除菌後胃癌のデータが不足している。本研究では小児成人の最新の感染率や胃粘膜状態を求め、そのデータから除菌による胃癌予防について年齢別の経済効果を予測する。また、小児と接触する感染者の除菌による小児への感染伝播阻止についても分析する。
研究方法
全国各地域から健診における血清抗H. pylori抗体および血清ペプシノゲン値のデータを集積して、成人での性別年齢別の罹患率、胃粘膜萎縮を検討する。また、内視鏡的診断がされた患者のピロリ診断や血清ペプシノゲン値のデータを集積して検討する。小児では便や血清の抗体とペプシノゲンの測定から、年齢別罹患率や同一対象者の時系列、さらに便中ピロリ菌DNAの相同性から感染源を検討する。
結果と考察
健診対象者や外来受診者の血清データ収集の年間対象者数は合計2万人以上で、最近5年間のデータ蓄積を予定してその一部が解析された。ピロリ菌の罹患率は20?39歳が15%前後、40歳代が20-30%、50歳代が30-45%、60歳代が40-55%であった。小児のピロリ菌感染率については、和歌山県の1000例の小児のデータに加え、兵庫県篠山市の保育園、こども園、幼稚園、小学校の0-8歳の小児1299人うち689人から協力が得られ、年齢別の陽性数/検体提出数は、乳児0/19(0 %)、1歳0/29(0%), 2歳0/36(0%)、3歳0/62(0%)、4歳1/120(0.8%), 5歳5/134(3.7%)、小学校1年生2/89(2.2%)、2年生2/110(1.8%)、3年生3/90(3.3%)で、全体の陽性率は13/689(1.9%)であった。便中ピロリ菌DNAの相同性から感染源を特定を進めている。健常人のピロリ菌罹患率は低化傾向にあり、コフォート現象が認められるが、胃疾患での罹患率に変化がなかった。今後は、これらの性・年齢別ピロリ菌感染率、胃粘膜萎縮の分布の基礎データに胃癌予防効果を検討する。中学生以上で①全感染陽性者への除菌の場合、②ピロリ菌抗体とペプシノゲンの結果別に内視鏡や除菌などの対応を変えた場合、③現行の胃癌検診の場合、④検診も除菌も行わなかった場合の費用と便益を検討する。小児への感染対策についても費用と便益を検討する。
結論
わが国の健常人のピロリ菌罹患率は低下している。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020051Z