医薬品特許情報の専門的評価の枠組み構築に向けた調査研究

文献情報

文献番号
202506036A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品特許情報の専門的評価の枠組み構築に向けた調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25CA2036
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 浩(日本大学 法学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 隆司(東京大学 大学院法学政治学研究科)
  • 清水 紀子(札幌医科大学 医学部先端医療知財学講座)
  • 下川 昌文(山陽小野田市立山口東京理科大学 薬学部薬学科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,071,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では厚生労働省のいわゆる二課長通知に基づき、医薬品の安定供給の観点からパテントリンケージ制度が運用されているが、国内法上の明文化された根拠規定が不見当であることに加え、医薬品特許の効力範囲に関する裁判例や学説の蓄積が十分でないこと等に起因して厚生労働省による確認が困難な事例が増加していること等の課題が顕在化している。この改善策として、昨年、専門委員制度の試行的運用が始まったが、依然として課題は残されており、専門委員制度の運用改善をはじめとした、パテントリンケージ制度の在り方については引き続き検討が求められている状況にある。そこで、本研究では、まず、最近の医薬品特許の裁判例の動向について分析するとともに、専門委員制度の最適化について検討する。加えて、海外のパテントリンケージ制度の調査とその比較分析を行ったうえで、日本におけるパテントリンケージ制度の中長期的な仕組み案について、主に行政法の観点から検討する。
研究方法
①最近の医薬品特許の裁判例の動向の分析、②有識者へのアンケート調査、③業界団体との意見交換、④専門委員への意見照会制度の試行的運用による課題の抽出について実施し、これらを踏まえ、専門委員制度について、改善提案を取りまとめた。さらに、日本におけるパテントリンケージ制度の中長期的な仕組みのあり方について、上記の調査及び分析に加えて、行政法等の観点からも調査研究を行うほか、パテントリンケージ制度に関するTPPとの整合性についても確認した。
結果と考察
研究では、最近の医薬品特許の裁判例の動向について分析したうえで、専門委員制度の試行的運用に至る経緯、専門委員制度の概要を報告した。また、有識者及び業界団体に対するヒアリングを実施し、その結果に基づいて、専門委員制度における課題と改善提案を整理した。具体的には、①意見照会の対象とする特許の範囲、②バイオ医薬品特許の取扱い、③均等侵害・間接侵害に関する評価、④意見書作成のために必要な資料の収集、⑤個別案件における専門委員の委嘱プロセスの透明化、⑥専門委員による意見書作成期間について、引き続き検討すべき事項を整理した。
また、外国のパテントリンケージ制度との比較を行い、日本の制度への示唆を検討した。具体的には、日本に米国型のパテントリンケージ制度を導入する場合の制度設計や、EUにおける分離原則とその帰結を分析することによるEUの制度設計からの示唆を得た。
さらに、日本におけるパテントリンケージ制度の中長期的な仕組み案のあり方について、主に行政法の観点から調査研究を行った。具体的には、日本におけるパテントリンケージの法制度デザインについて、有識者や業界団体に対する調査結果も踏まえた検討をし、パテントリンケージ制度の新たな仕組み案として、TPP第18.53条第1項と第2項のそれぞれに適合する制度設計を複数、提案した。これらの提案については、国際法の専門家による見解において、TPP第18.53条との整合性を有することが示唆された。
結論
本研究において、「専門委員制度における課題と改善提案」及び「パテントリンケージ制度の新たな仕組み案」の資料を取りまとめることができた。これらの資料は、今後、日本におけるパテントリンケージ制度の運用改善、及び、中長期的なあり方を検討する際、参考になり得るものである。本研究の成果が、今後のパテントリンケージ制度の運用改善や制度の見直しに資することに期待したい。

公開日・更新日

公開日
2026-07-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202506036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、医薬品の承認審査におけるパテントリンケージ制度に関して、「専門委員制度における課題と改善提案」及び「パテントリンケージ制度の新たな枠組み(案)」を取りまとめた。これらは、国内外の制度比較及び行政法的観点を含めて検討したものであり、今後のパテントリンケージ制度における専門委員制度の運用改善、及び、パテントリンケージ制度の新たな枠組みの検討に向けて、一定の専門的・学術的観点からの成果があったと考えられる。
臨床的観点からの成果
パテントリンケージ制度は、医薬品の製造販売が承認されて医薬品が上市されたのち、特許抵触により後発医薬品の製造販売が差し止められるリスクを未然に抑制し、医薬品の安定供給を確保する上で重要な役割を担っている。したがって、パテントリンケージ制度に関する本調査研究により、専門委員制度の改善提案やパテントリンケージ制度の新たな枠組み(案)を示したことは、医薬品の安定供給に貢献し、臨床現場における医薬品の適切な利用の推進に寄与することが期待されるなど、臨床的な観点からも成果があったと考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究で取りまとめた「専門委員制度における課題と改善提案」は、前年度の調査研究により策定された「パテントリンケージにおける専門委員制度の運用指針」について、その改訂(運用改善)に向けた検討資料として位置づけることができる。また、本研究で取りまとめた「パテントリンケージ制度の新たな枠組み(案)」は、パテントリンケージ制度の中長期的な制度設計の方向性を示すものであり、パテントリンケージ制度の法制度改革に向けた基礎資料として位置づけることができる。
その他行政的観点からの成果
パテントリンケージ制度には、令和7年11月より専門委員制度が導入(施行)されているが、運用上の課題が指摘されている。また、二課長通知に基づいて運用されている現行のパテントリンケージ制度について、国内法上の根拠規定、手続保障のあり方、外国の制度との比較(裁判例の扱い等)などにおいて課題が指摘されている。本研究は、これらの課題について検討し、課題を解決する方向性を示していることから、今後のパテントリンケージ制度の運用改善及び法制度改革に向けて、行政的成果が得られたと考えられる。
その他のインパクト
本研究により、医薬品の承認審査におけるパテントリンケージ制度において、「専門委員制度における課題と改善提案」及び「パテントリンケージ制度の新たな枠組み(案)」についての研究成果が公表される。その結果、行政、産業界及び学術界において、共通認識の形成に資することが期待される。また、医薬品業界において、先発医薬品企業と後発医薬品企業の双方にとって、パテントリンケージ制度の理解と適切な実務が推進されるという点で、一定のインパクトが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
清水紀子
医薬品の特許権存続期間延長登録制度(3)
知的財産法政策学研究 ,  (71) , 129-184  (2025)
原著論文2
南藤佳奈
日本版パテントリンケージ制度の最新動向と実務上の対応 -二課長通知と専門委員制度を中心に
NBL ,  (1304) , 38-47  (2025)
原著論文3
加藤浩・南藤佳奈・清水紀子
パテントリンケージの実務と今後の対応(理論と裁判例)
日本知財学会・第23回学術研究発表会・予稿集 , 2C1-  (2025)
原著論文4
南藤佳奈・加藤浩・清水紀子
パテントリンケージの実務と今後の対応(実務・運用の最前線)
日本知財学会・第23回学術研究発表会・予稿集 , 2C2-  (2025)
原著論文5
加藤浩・成川衛・下川昌文
パテントリンケージ制度の国際比較に関する研究
研究イノベーション学会・第40回学術大会・予稿集 , 2E18-  (2025)

公開日・更新日

公開日
2026-07-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
202506036Z