LDTの臨床実装に向けた研究

文献情報

文献番号
202506026A
報告書区分
総括
研究課題名
LDTの臨床実装に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25CA2026
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
大西 宏明(杏林大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮地 勇人(新渡戸文化短期大学 臨床検査学科)
  • 田澤 裕光(京都大学医学部附属病院 クリニカルバイオリソースセンター)
  • 松下 一之(千葉大学 医学部附属病院検査部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の公的医療制度、特に保険診療において臨床検査に用いる試薬は、医薬品医療機器等法に基づき評価され承認された体外診断用医薬品 (in vitro diagnostics: IVD) を使用して処理および分析する必要がある。ただし、希少難病の診断や新規治療薬の選択判断など特定の目的において、市販のIVD が存在しない事例が存在する。これらは、検査室で独自に開発・運用する検査(laboratory-developed tests: LDTs)と呼ばれる。技術の進歩と利用展開に伴いLDTsが日常的な臨床検査として利用が求められる状況が拡大しているが、LDTsの品質・精度を確保する基準は明確化されていない。本研究は、検体検査の精度の確保に係る法令およびこれまでの厚生労働科学研究の成果を踏まえ、現時点での我が国および諸外国におけるLDTsの運用体制について調査し、今後我が国におけるLDTsの臨床実装において品質、有効性及び安全性を確保するために必要な検査施設(臨床検査室)の管理的要件、人的要件を明らかにすることを目的とした。
研究方法
以下の3つの課題に対し、分担研究者において調査研究を実施した。すなわち、課題1:我が国の現状におけるLDTs の需要の調査、課題2:諸外国におけるLDTs 活用のルールとその運用体制についての調査、および課題3:LDTs の性能、品質、及び安全性を担保する仕組みのあり方についての検討である。
課題1においては、我が国におけるLDTsの臨床実装の実態と需要の把握を目的としてアンケート調査を行った。課題2においては、LDTsの社会実装に先行する諸外国におけるLDTsに関する制度の整備状況を把握し、実効性のある合理的な基準設計検討に資することを目的に、アメリカ、EU、イギリス、カナダ、オーストラリア、韓国、中国の7か国における実施基準や法令整備について調査した。課題3においては、過去の関連する厚生労働科学研究の成果を踏まえ、臨床検査精度確保に関わる文献調査および団体へのインタビューにより、我が国におけるLDTs実装に関する課題を整理し、LDTsを実施するための管理的・人的要件の検討を行った。
結果と考察
課題1では、保険収載されているLDTs以外にも、感染症に関する検査や悪性腫瘍の体細胞遺伝子検査などを中心に、臨床上の需要に対応して多様なLDTsが実施されている現状が明らかとなった。しかしながら、LDTsの精度や安全性の確保において必要と考えられる管理的・人的要件が満たされていない場合が少なからず認められた。これは、第三者認定を取得している施設においても同様であり、加えてLDTsの精度管理やリスクマネジメントに関する教育や研修、および外部精度管理を実施できる体制を整備する必要があると考えられた。また、現在遺伝子関連検査の一部にとどまっているISO 15189におけるLDTsの認定範囲の拡大や、海外では臨床使用が認められている研究用試薬のIVD承認の促進なども同時に必要となると考えられた。
課題2では、LDTsは国際的に「規制外」から「条件付きで制度化」する方向へ移行していることが明らかとなった。日本においては、EU型の制度設計を軸に、CLIAの精度管理思想を実装レベルで取り込むハイブリッド型実施基準が、患者安全性・臨床有用性・現場の持続可能性を最もバランスよく満たす方策であると考えられた。
課題3では、2022年度厚生労働科学研究において提示された、遺伝子関連・染色体検査を実施する臨床検査室において第三者認定を求める高度な技術および外部精度管理の選択フロー図を準用することで、LDTsを技術難度により分類し、第三者認定、外部精度管理、および要員の研修に関する要件を段階的に設定することが可能であると考えられた。特に、一部の簡易なLDTsを除いては、ISO 15189認定取得、適切なリスクマネジメントに係る研修、統計学的内部精度管理の実施、および代替法も含めた外部精度管理は義務化が妥当であると考えられた。
結論
本研究の成果は、技術の進歩に伴う良質な臨床検査と患者診療の遂行のため、LDTsの臨床実装において、適切な運用基準の具体化と必要な指針の策定に向けて活用されるよう期待される。
今後は、LDTsが利用されている領域、あるいは利用が求められる領域において、検査の特性に応じてこれらの要件の設定とそのための体制整備を進めることが求められる。また将来的には、個別の領域におけるLDTsに関する検討や各種体制の整備を通じて、LDTsの技術難度に応じた要件の設定が臨床実装において必要になるが、これらの要件の具体例や、円滑な制度移行のための移行措置の必要性や具体策については、今後検討されるべきであると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202506026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アンケート調査により、我が国においてLDTsの利用が求められる領域を含め、LDTs実施の現状とその準備体制を明らかにした。また海外のLDTs実施体制の調査では、LDTsは国際的に「規制外」から「条件付きで制度化」する方向へ移行していることが明らかとなり、我が国における制度設計に資する結果が得られた。さらに、現在の法令や過去の厚生労働科学研究の成果を踏まえ、医療機関自らLDTsを実施する場合の基準に関する課題が整理され、臨床検査室の管理的要件・人的要件が明らかにされた。
臨床的観点からの成果
国内外におけるLDTsの現状、およびLDTsの臨床導入に必要な人的・管理的要件が明らかにされたことで、これまで我が国において体外診断薬と比較して例外的な取り扱いがなされていたLDTsについて、今後は諸外国と同様に我が国でも、適切な体制整備に基づいた臨床実装に向けた道筋が開けた。
ガイドライン等の開発
LDTsの信頼性・安全性を確保する上で最低限必要となる要件・基準について、当面の利用の手引きとして「LDTsの臨床実装に向けた検体検査の精度の確保に関するガイダンス」をまとめ、令和7年12月25日に公表した。本ガイダンスに基づき、令和7年12月26日に厚生労働省医政局から「LDTsの臨床実装に係る精度管理の基準等について(通知)」が発出された。
その他行政的観点からの成果
上記ガイダンスに基づき発出された「LDTsの臨床実装に係る精度管理の基準等について(通知)」を受けて、令和8年1月に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)診療報酬基本問題小委員会及び総会において、「令和8年度診療報酬改定に向けた医療技術の評価について(案)」が発出され、我が国におけるLDTsの臨床実装に向けた体制構築に貢献した。
その他のインパクト
研究代表者・研究分担者が関与するNPO法人日本遺伝子関連検査品質保証・教育機構Japan Organization for Molecular-GENetic Testing Quality Assurance & Education (J-GENE)のウェブサイトにおいて、本研究の成果として作成された「LDTsの臨床実装に向けた検体検査の精度の確保に関するガイダンス」を掲載し、周知に努めた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
該当なし
原著論文(英文等)
0件
該当なし
その他論文(和文)
0件
該当なし
その他論文(英文等)
0件
該当なし
学会発表(国内学会)
0件
該当なし
学会発表(国際学会等)
0件
該当なし
その他成果(特許の出願)
0件
該当なし
その他成果(特許の取得)
0件
該当なし
その他成果(施策への反映)
2件
審議会での議論1件、ガイドライン作成1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-05-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
202506026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,160,000円
(2)補助金確定額
4,160,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,626,811円
人件費・謝金 1,127,361円
旅費 22,095円
その他 424,022円
間接経費 960,000円
合計 4,160,289円

備考

備考
分担研究者の田澤氏の物品購入額が、当初の予定より289円高く、その分補助金確定額を超過した。超過分は、田澤氏の施設の研究費から支出した。

公開日・更新日

公開日
2026-05-28
更新日
-