放射線による認知機能障害を回避する転移性脳腫瘍の治療法に関する研究

文献情報

文献番号
201020033A
報告書区分
総括
研究課題名
放射線による認知機能障害を回避する転移性脳腫瘍の治療法に関する研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(独立行政法人国立がん研究センター 国立がん研究センター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 若林 俊彦(名古屋大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 三國 信啓(札幌医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 渋井 壮一郎(国立がん研究センター中央病院 脳神経外科)
  • 小川 彰(岩手医科大学 医学部)
  • 佐伯 直勝(千葉大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 大西 丘倫(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 宝金 清博(北海道大学病院 脳神経外科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学包括的がんセンター 脳脊髄腫瘍科)
  • 白土 博樹(北海道大学病院 放射線科)
  • 冨永 悌二(東北大学病院 神経外科)
  • 城倉 英史(鈴木二郎記念ガンマハウス 脳神経外科)
  • 藤堂 具紀(東京大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 中川 恵一(東京大学医学部附属病院 放射線科)
  • 角 美奈子(国立がん研究センター中央病院 放射線科)
  • 佐藤 慎哉(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 現在、多発病変に対して全脳照射単独治療が選択される以外、転移性脳腫瘍の治療は、摘出術+全脳照射が標準治療とされている。しかし脳以外の臓器転移のコントロール率の改善に伴い、全脳照射による遅発性高次脳機能障害の発生が、がん患者のQOLを著しく低下させる原因として問題視されている。近年、転移性脳腫瘍に対する新たな治療モダリティーとして定位放射線照射が注目されている。定位放射線照射は、病巣に選択的に放射線照射を行うため、全脳照射と異なり新病巣の発生予防効果はないが、病変周囲の正常脳への影響を抑えることが可能である。本研究は、この定位放射線照射を活用し、全脳照射後の遅発性高次神経障害を回避する新たな治療レジメの開発が目的である。
研究方法
 術前の転移個数が4個以下の症例を対象に、標準治療である腫瘍摘出術+全脳照射に対して、腫瘍摘出術後に全脳照射を行わず、残存病変、および新病変に対して定位放射線照射の追加を行うことの有効性の比較(非劣性)を比較する前方視的ランダム化比較試験を行う。予定登録数:270例、登録期間:6年、追跡期間:登録終了後1年。
結果と考察
 本臨床試験は、平成17年11月登録開始、昨年度末の時点で登録症例数が中間解析に必要な135例に達し今年度中間解析が行われた。また、平成23年3月末現在の登録症例数は174例である。中間解析の結果は、平成22年9月11日に報告され、試験の続行が認められた。現在も登録継続中である。
 転移性脳腫瘍の治療に関しては、これまで、このようなランダム化比較試験は行われておらず、独創的である。以前は定位放射線治療のアームのなかった米国のNational Comprehensive Cancer Network (NCCN)の転移性脳腫瘍治療のガイドラインでも、最新版では定位放射線治療を含む治療アームが取り上げられており、本研究が求める治療法は、正に世界が求めているものといえる。
結論
 本研究班で検討中の治療レジメの有効性が示されれば、全脳照射に係る入院期間の短縮と放射線障害によって引き起こされるADLの低下を抑制でき、転移性脳腫瘍患者の自宅復帰・家庭介護の可能性を高め、国民に計り知れない福利を提供することが期待されるとともに、日本発の数少ないがん臨床に関係するエビデンスとなることも期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020033Z