自由診療となる訪日外国人患者に係る診療価格に関する研究

文献情報

文献番号
202506013A
報告書区分
総括
研究課題名
自由診療となる訪日外国人患者に係る診療価格に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25CA2013
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
田倉 智之(日本大学 医学部 社会医学系 医療管理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 範宏(東京女子医科大学 医学部)
  • 蓋 若エン(ガイ ジャクエン)(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,473,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 政府は、令和5年に閣議決定された新たな「観光立国推進基本計画」において、観光の質的向上を象徴する、「持続可能な観光」、「消費額拡大」、「地方誘客促進」の3つを柱として、戦略的に取り組むことを掲げている。本研究は、社会医療法人等における訪日外国人患者受入れに係る業務負担等を明らかにするための基礎資料の整備を目的とした。
研究方法
 本研究は、「理論・手法、先行研究のサーベイ」を踏まえ、「訪日外国人の診療価格算定手法の研究」と「医療経営支援のマニュアルの整備」の3つの課題から構成された。具体的には、各医療機関に負担をかけずに代表的かつ悉皆的に診療価格設定を実現する手法の研究開発を行った。文献サーベイは、医療分野における価格設定等の算定手法や算定結果に関わる先行研究を整理した。検索方法は、調査対象期間を過去10年間とし、対象のデータベースを医中誌とPubMed等とした。検索基準は、原著を主体として総説も範囲とした。訪日外国人の診療コストのマクロ的な算定手法は、最初に「日本人の診療コスト」を算出し、その結果に外国人係数を適用し「外国人の診療コスト」を算定する方式とした。具体的には、医師を基軸に医療従事者の人件費を算出し、その結果と医療施設の「経費科目構成の割合」を応用して、各経費科目の費用および全体の総費用を推定する手順とするモデルを構築した。
結果と考察
 医療機関の価格設定アプローチに関わる動向調査を行ったところ、医療価格の議論は伝統的に医療費原価が基盤であることが明らかとなった。その大きな理由として、医療経営の観点からは収支管理と資源管理が最重要であることが挙げられた。一方で、診療価格は、「原価」のみでは決まらないことも示唆された。医療サービス価格は、費用だけでなく、需要・供給、市場構造、各種規制、第三者支払の影響を考慮するのが望まれた。マクロアプローチによる価格算定の結果、訪日外国人の診療価格は、日本人の数倍(循環器の例:外来は約1.7倍:2.3万円、入院は約3.4倍:189.8万円)にすることが、医療経営リスクの軽減等の観点から、概ね妥当であると示唆された(数値はモンテカルロ法による確率感度分析の前)。この算定結果は、病院経営の汎用的なベンチマークとして医療管理者が参考にすることで、各種の検討に資するすることも期待される。
結論
 本研究は、各医療機関に負担をかけずに代表的かつ悉皆的に診療価格設定を実現する手法の研究開発、及びそれとの相乗効果を念頭におきつつ、病院管理者が自立して訪日外国人に対する適正な価格設定、請求方法、経営管理、人材育成等を展開できるマニュアル等の整備を行った。その結果、訪日外国人の診療価格は、日本人の数倍(循環器の例:外来は約1.7倍、入院は約3.4倍)にすることが、医療経営リスクの軽減等の観点から、概ね妥当であると示唆された。

公開日・更新日

公開日
2026-08-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202506013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 医療機関における診療価格の設定は、医療費原価が基軸となるがそのデータ収集と解析の負担が大きい。本研究で開発と検証を進めた、日本全体の医療資源消費(マクロ的コスト)から、1件の外国人診療の費用を算定するアプローチは、他の先行研究も少なく、データサイエンスを応用した点からも、独創的で画期的である。医療管理学分野等における新たな学術テーマとしてもその発展性が期待される。また、この算定結果は、病院経営の汎用的なベンチマークとして医療管理者が参考にすることも望まれる。
臨床的観点からの成果
 本研究において、訪日外国人の医療資源消費が日本人の数倍(循環器の例:外来は約1.7倍:2.3万円、入院は約3.4倍:189.8万円)であることが明らかとなった。この結果を踏まえた診療体制や経営運営の整備を、医療機関、特に社会医療法人が展開することで、訪日外国人に対する救急医療等の向上が期待される。さらに、関わる経営基盤の盤石化等に伴い、日本人を中心とした地域医療への貢献も期待され、広義の意味から我が国の臨床プラクティスや医療システムに対する貢献が期待される。
ガイドライン等の開発
 本研究においては、令和元年の「訪日外国人に対する適切な診療価格に関する研究(厚生労働科学特別研究事業)」におけるマニュアルを参照しつつ、訪日外国人診療を取り巻く時流の変遷(医療技術、市場や制度等)に配慮した外国人診療の診療価格設定等のマニュアルを整備した。本マニュアルは、自院の置かれた内外の経営環境にそって、医療機関が価格設定の精度や説明力の向上等を進める時に役立つと考えられる。そのため、我が国おけるインバウンド医療の拡がりが増すほど、普及や活用が期待される。

その他行政的観点からの成果
 本研究は、社会医療法人等における訪日外国人患者受入れに係る業務負担等を明らかにし、社会医療法人等における自由診療に係る診療価格制限を緩和する必要性を示すことが出来た。社会医療法人等に関わる令和8年度税制改正や令和8年度診療報酬改定の動向等、昨今の医療経営を取り巻く政策潮流も踏まえると、本研究で創出した知見(医療機関における価格設定の戦略や概念、算定手法の開発、そのマニュアル)は、医療経営対策の効果的な推進に貢献すると推察される。
その他のインパクト
本研究の成果は、グローバルヘルス合同大会2026のシンポジウムで公表予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-08-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202506013Z