軽度・中等度難聴の診療の手引きの作成に向けた研究

文献情報

文献番号
202506005A
報告書区分
総括
研究課題名
軽度・中等度難聴の診療の手引きの作成に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25CA2005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
大森 孝一(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,031,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、軽度・中等度難聴について、早期発見に結びつく健診の内容、患者が耳鼻咽喉科医を受診した際の選択すべき聴力検査、治療を優先すべき疾患、補聴器の適応決定、補聴器の選択と種類、補聴器フィッティングと適合評価の実際、聴覚リハビリテーション、適応すべき社会福祉制度、難聴の予防・啓発、騒音性難聴、イヤホン・ヘッドホン難聴への対応などの内容を系統立てて記載した診療の手引きを作成し、医師、言語聴覚士、認定補聴器技能者等が統一した考え方の下で成人の軽度・中等度難聴患者に対応できるようにすることを目的として診療の手引きを作成することとした。
研究方法
本研究では、成人軽度・中等度難聴診療に関する標準的診療指針を作成するため、専門家合意形成を基盤とした研究を実施した。 まず、研究代表者および研究分担者により、軽度・中等度難聴診療における現状の課題を整理し、健診、検査、診断、補聴器適応、補聴器適合、聴覚リハビリテーション、社会保障制度、予防・啓発を含む診療体系全体を俯瞰したうえで、手引きの全体構成および主要項目を決定した。各項目については、それぞれの専門領域を有する研究分担者を担当者として配置し、国内外の文献、既存ガイドライン、制度資料、臨床経験等をもとに内容を作成した。作成にあたっては、単なる知識の整理にとどまらず、一般耳鼻咽喉科診療において実践可能な内容となるよう配慮した。 作成された原稿については、研究班内で複数回の討議および校正を行い、内容の整合性、記載様式、診療方針の統一化を図った。その後、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会学術委員会、福祉医療・成人老年委員会、および日本聴覚医学会による査読・意見集約を行い、必要な修正を加えた。 さらに、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会員を対象としたパブリックコメントを実施し、実地診療における意見を反映した。最終的に日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会理事会で承認を得て完成版を作成した。
結果と考察
1. 目次 Ⅰ.総論 Ⅱ.各論 第1章 健診・検査・診断・治療 1.健診の現状:学校健診、職場健診、高齢者健診(健診チェックリスト)など 2.行うべき聴覚検査:標準純音聴力検査、語音聴力検査、不快レベル検査、その他3.診断と治療:聴力改善が期待できる場合とできない場合第2章 補聴診療とリハビリテーション1.補聴器適応決定:聴力レベルと難聴の程度、語音明瞭度、社会的背景2.補聴器の選択:気導補聴器(耳かけ、耳あな、補聴器の機能)、骨導補聴器、その他(軟骨伝導補聴器、人工聴覚機器、OTC 補聴器など) 3.補聴器フィッティング:自施設実施、補聴器販売店への依頼 4.補聴器適合評価:補聴器適合検査、補聴器販売店との連携 5.聴覚リハビリテーション:環境調整、家族指導、家族・介護施設などでの対応を含む第3章 社会保障制度 1.身体障害者福祉法・障害者総合支援法 2.補聴器購入費用助成制度 第4章 予防・啓発 1.騒音性難聴 2.ヘッドホン・イヤホン難聴 3.早期受診・早期対応 Ⅲ.総括
今回の手引き作成により、従来の聴力レベル中心ではなく、「聴力+語音明瞭度+社会背景」を統合的に評価する生活機能重視型の補聴診療モデルを提示し、診療現場での意思決定を支援する構造を明確化した。本研究では、成人軽度・中等度難聴に対する診療の標準化を目的として、健診、検査、診断、補聴器適応、補聴器フィッティング、聴覚リハビリテーション、社会保障制度、予防・啓発を含めた包括的な診療の手引きを作成した。 本手引きは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、日本聴覚医学会、関連委員会による査読および学会員からのパブリックコメントを経て作成されており、現時点での専門家合意を反映した診療指針として位置づけられる。一方で、軽度・中等度難聴に対する介入効果については、QOL、認知機能、社会参加、医療経済評価などを含めた長期的エビデンスは十分ではなく、今後さらなる研究の蓄積が必要である。
結論
本研究では、成人軽度・中等度難聴に対する標準的診療体系の構築を目的として、健診、検査、診断、補聴器適応、補聴器フィッティング、聴覚リハビリテーション、社会保障制度、予防・啓発を含めた包括的な診療の手引きを作成した。本手引きでは、従来の純音聴力レベル中心の評価に加え、語音明瞭度、社会背景、生活機能を含めた総合的評価の重要性を示し、「聴力+語音明瞭度+社会背景」を統合した補聴診療モデルを提示した。また、耳鼻咽喉科医、言語聴覚士、認定補聴器技能者等の多職種連携による支援体制の重要性を整理し、軽度・中等度難聴に対する早期診断・早期介入の方向性を示した。 本手引きが全国の診療現場で活用されることで、地域差の少ない補聴診療体制の構築、難聴者の生活機能維持および社会参加支援につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202506005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
成人軽度・中等度難聴は有病率が高く、認知症、フレイル、社会的孤立等との関連が指摘される一方で、これまで国内に標準的診療指針が存在しなかった。本研究では、耳鼻咽喉科、聴覚医学、リハビリテーション、社会福祉分野の専門家による学際的検討を行い、文献レビューと専門家合意形成に基づく診療の手引きを作成した。特に「聴力レベル・語音明瞭度・社会背景」を統合的に評価する新たな診療モデルを提示し、今後の難聴診療研究の基盤を構築した。
臨床的観点からの成果
本研究では、健診から診断、補聴器適合、聴覚リハビリテーション、社会保障制度活用までを一連の診療プロセスとして整理し、一般耳鼻咽喉科診療でも実践可能な手引きを作成した。従来の純音聴力中心の評価から一歩進め、語音明瞭度や生活環境を重視した補聴診療の考え方を示したことで、早期診断・早期介入の推進と、地域差の少ない標準的な難聴診療体制の構築に寄与する成果が得られた。
ガイドライン等の開発
本研究の主要成果として、「軽度・中等度難聴の診療の手引き」を作成した。手引きには、健診、聴覚検査、診断、補聴器適応決定、補聴器選択・適合評価、聴覚リハビリテーション、社会保障制度、予防・啓発までを体系的に収載した。作成にあたっては、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、日本聴覚医学会による査読、学会員からのパブリックコメント、理事会承認を経て完成しており、全国で活用可能な標準的診療指針として整備された。
その他行政的観点からの成果
軽度・中等度難聴者の多くは身体障害者福祉法の対象外でありながら、日常生活や社会参加に大きな支障を抱えている。本研究では、補聴器購入費助成制度や合理的配慮を含む社会支援制度を整理するとともに、難聴の早期発見・早期介入の重要性を明確化した。これにより、自治体における難聴対策、補聴器助成事業、介護予防施策、認知症対策等の行政施策を検討する際の基礎資料として活用できる成果を提供した。
その他のインパクト
完成した手引きは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会関連施設、補聴器相談医、補聴器関連団体、日本言語聴覚士協会等に配布され、全国的な普及が開始された。本成果は、医療職間の共通認識形成のみならず、難聴に対する社会的理解の向上や補聴器装用への適切な受療行動の促進にも寄与すると期待される。また、認知症予防や健康寿命延伸に向けた社会的機運の醸成にも波及効果を有する成果である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「軽度・中等度難聴の診療の手引き」刊行 編集:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 印刷所:株式会社 朝陽会 発行年月:令和8年3月 ページ数:125ページ、付録11ページ
その他成果(普及・啓発活動)
1件
シンポジウム1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
202506005Z