GTINコードを活用した医療機関における効率的な標準コード管理のための研究

文献情報

文献番号
202506003A
報告書区分
総括
研究課題名
GTINコードを活用した医療機関における効率的な標準コード管理のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25CA2003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
山下 貴範(国立大学法人 九州大学 病院 メディカル・インフォメーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 医療情報学講座)
  • 柴田 慎一(九州大学 病院メディカル・インフォメーションセンター)
  • 瀬戸山 大樹(九州大学 九州大学病院検査部)
  • 折井 孝男(東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では少子高齢化の進展に伴い、医療の質向上と効率化が求められており、リアルワールドデータ(RWD)の利活用が重要となっている。医薬品等の市販後安全対策においてもRWDの活用が進んでいるが、複数の医療機関のデータを横断的に利用するためには、施設内コードを標準コードへ採番(マッピング)するデータ標準化が不可欠である。しかし、現状では各機関のマッピング率は低く、作業の効率化や自動化が課題となっている。さらに、医療DXの推進においては、電子カルテにおける標準コード運用の普及と、共通仕様および効率的な作業手順の確立が求められている。加えて、GS1標準バーコードの義務化によりGTINの活用基盤が整備されつつあり、医療機関における統合的なマスタ管理モデルおよびシステム連携モデルの提示が求められている。本研究では、国主導で構築が予定されている製品データベース(製品DB)の医療機関における円滑な活用を見据え、GTINを軸とした標準コード管理およびシステム連携の在り方を明らかにすることを目的とした。
研究方法
本研究は4つの観点から実施した。第一に、GTINと医薬品コード(YJ、HOT等)、臨床検査コード(JLAC)との関係を整理し、院内マスタ間の対応構造を明確化した。第二に、GTINを軸として各種コード体系を統合的に管理するマスタモデルを設計した。第三に、標準コードマッピングの効率化を目的とし、既存手法の整理およびAI活用による半自動化手法の検討を行った。さらに、JLAC11とMEDIS-DBを用いた照合により実証的検討を行った。第四に、製品DBと電子カルテ、薬剤・検査・物流等の各部門システムとの連携モデルについて、標準規格(GTIN、FHIR)との適合性を踏まえて検討した。また、医療機関およびベンダーへのアンケート調査により現状と課題を把握した。
結果と考察
医薬品および検査コードの分析から、「情報としての識別」と「物としての識別」という異なる目的を持つコードが、それぞれ異なる粒度で併存していることが明らかとなった。具体的には、処方・オーダ段階ではYJコードやHOTコード、検査項目管理ではJLACコードが用いられる一方、流通、在庫管理、投与確認、試薬識別等ではGTINが重要な役割を担っており、単一のコード体系のみでは医薬品・検査情報を一貫して管理することは困難であった。また、YJコードやJLACコードとGTINとの間に直接的な対応関係が十分に整備されていないことが、施設内マスタの統合やシステム間連携の障壁となっていることが確認された。特に、JLAC11とMEDIS-DBを用いた照合では、プロテインCおよびテストステロン検査において一定の対応付けが可能であったものの、データベースの網羅性不足、GTIN未整備、製品名称や承認番号等の表記揺れにより、完全な統合には至らなかった。この結果は、標準コードマッピングの効率化には、単なる照合技術だけでなく、基盤となるデータベースの整備と識別子の充実が不可欠であることを示している。さらに、医療機関への調査からは、標準コードの重要性が認識されている一方で、実運用では院内独自コードや既存コードを中心とした管理が継続しており、マッピングやマスタ更新作業が手作業に依存している実態が明らかとなった。ベンダー調査においても、GTIN活用による業務効率化、医療安全、トレーサビリティ向上への期待が示された一方、既存システムとの整合性、移行コスト、二重管理、コード更新タイミングの不一致といった課題が挙げられた。
これらの結果から、標準コード管理の課題は、個別施設や個別システムの努力のみで解決できるものではなく、コード体系、製品DB、医療情報システム、運用手順を一体的に整備する必要がある構造的課題であると考えられる。本研究で提案したGTINを軸とした統合マスタ管理モデルは、異なる粒度のコードを横断的に接続し、医薬品・検査情報を一元的に管理する有効な方策となり得る。また、AIによる候補抽出やスコアリングはマッピング作業の効率化に寄与する可能性があるが、最終的な妥当性確認には専門家の判断が必要であり、人手とAIを組み合わせた段階的な導入が現実的である。
結論
医療機関における標準コード管理の課題は、複数コード体系の併存と粒度差に起因する構造的問題であることが明らかとなった。これに対し、GTINを軸とした統合マスタ管理モデルおよび標準化されたマッピング手法を提示することで、医薬品・検査情報の一貫した管理とデータ連携の高度化が可能であることが示された。今後は、国が整備する製品DBを中核とし、標準化されたデータ提供、システム連携基盤の整備、AIを活用したマッピング支援を組み合わせることで、医療データの品質向上、トレーサビリティ確保、およびRWD利活用の促進が期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-08-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-08-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202506003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、医薬品・検査領域における標準コード管理の課題を体系的に整理し、「情報としての識別(YJコード、JLACコード等)」と「物としての識別(GTIN)」という異なるコード体系の構造的差異を明確化した。さらに、GTINを基軸として複数コード体系を統合するマスタ管理モデルを提案するとともに、JLAC11と製品情報データベースを用いたマッピング手法の実現可能性を検証した。これにより、医療データ標準化およびリアルワールドデータ活用に向けた新たな学術的知見を創出した。
臨床的観点からの成果
医療現場における医薬品・検査情報の管理実態を調査し、多くの施設で複数コード体系が併存し、マッピングやマスタ更新作業が手作業に依存していることを明らかにした。GTINを活用した統合管理モデルにより、処方、在庫管理、投与確認、検査管理などの業務間で一貫した情報管理が可能となり、医療安全の向上やトレーサビリティ確保への有用性が示された。また、データ整合性向上による診療支援および医療DX推進への貢献が期待される。
ガイドライン等の開発
GTINを中心とした医療機関向け統合マスタ管理モデルおよび標準コードマッピング手順の考え方を整理し、今後の製品データベース活用を見据えた運用モデルを提示した。また、電子カルテ、部門システム、物流システム等との連携を想定し、HL7 FHIR等の標準規格を活用した連携フレームワークの方向性を示した。本成果は、今後の製品データベース運用指針や標準コード管理ガイドライン策定の際の基礎資料として活用できる。
その他行政的観点からの成果
令和7年度から国が検討を始めている製品データベースの構築や医療機関への円滑な導入に向け、GTINを基軸とした標準コード管理およびシステム連携モデルを整理した。医療機関、ベンダー、行政の各立場から課題を抽出し、標準化推進に必要な基盤整備や移行上の論点を明確化した。本研究成果は、全国医療情報プラットフォームや電子カルテ情報共有サービス等の医療DX政策を支える実践的な検討資料として活用が期待される。
その他のインパクト
GTINを活用した標準コード管理の重要性を、医療機関、学会、医療情報システムベンダーに対して具体的に提示したことで、医療データ標準化への理解促進に寄与した。また、AIを活用したマッピング支援の可能性を示し、将来的な業務効率化や人材不足対策への展開可能性を明らかにした。さらに、医療データの品質向上とリアルワールドデータ利活用の促進を通じて、研究開発、医療安全、市販後安全対策など幅広い分野への波及効果が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-08-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
202506003Z