三大感染症等に関連する保健システム強化について我が国から行う国際機関への戦略的・効果的な関与に資する研究

文献情報

文献番号
202505009A
報告書区分
総括
研究課題名
三大感染症等に関連する保健システム強化について我が国から行う国際機関への戦略的・効果的な関与に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24BA2001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
駒田 謙一(国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、グローバルファンド(GF)等の国際機関に対する我が国の戦略的かつ効果的な関与の在り方を検討することを目的とする。具体的には、GFを中心とする国際機関の戦略、政策動向および事業実施状況を分析し、これらの機関のガバナンス会合等における日本政府の対応について実務的かつ技術的な提言を行う。これにより、日本政府を通じた質の高いインプットを促進し、SDGs達成に不可欠な三大感染症対策および健康危機対応を含む保健システム強化への国際的貢献を図る。
研究方法
GF理事会における事務局文書および会合参加を通じて収集した情報を基に、三大感染症対策および保健システム強化の進展、課題、主要ステークホルダーの動向について体系的に分析を行った。得られた知見のうち我が国の国際保健政策に資する内容については、厚生労働省および外務省に対して適宜提言を行った。
令和7年度は、第53回および第54回GF理事会に日本理事区の一員として参加し、事前に事務局文書を精査した上で、日本政府の発言および交渉方針に資する技術的インプットを実施した。特に、資金制約の顕在化を踏まえた優先順位付けおよび支援からの移行(Transition)に伴う事業継続性確保に重点を置いた。さらに、ザンビアにおいて現地調査を実施し、資金活用の実態と外部支援の変化が現場に与える影響を分析した。
結果と考察
第53回理事会では、世界的な資金制約の顕在化を背景に、従来の事業拡大型モデルの持続可能性に対する懸念が強く共有され、資源を優先度の高い分野へ集中させる方針への転換が議論の中心となった。保健システム強化(RSSH)については、COVID-19対応資金(C19RM)に依存して拡大してきた投資の持続性が課題として認識され、今後は人材、検査体制、保健情報システムといった基盤的機能への戦略的投資がより重要になることが示された。本研究では、短期的な効率性のみならず中長期的な制度強化の観点から、これら基盤機能への継続的投資の必要性を指摘した。また、三大感染症対策においては、各国における保健人材不足やサプライチェーンの停滞など、外部資金依存構造の脆弱性が顕在化しており、必須サービス維持のための資源再配分の必要性が示唆された。
第54回理事会では、第8次増資結果を踏まえた次期資金サイクル(2026–2028年)の枠組み(約10.8 billion USD)が決定され、資源制約を前提とした運営への構造的転換がより明確となった。特に、支援からの移行(Transition)、低所得国・高負担国への重点化、国内資金動員の強化などの戦略転換が提示され、GFの支援モデルが再構築されつつあることが確認された。本研究では、移行の方向性自体は不可避であると評価しつつも、各国の財政能力や制度的脆弱性を踏まえた柔軟な設計の必要性を指摘した。
ザンビアにおける現地調査では、抗レトロウイルス療法(ART)の継続率など主要指標の改善が確認された一方で、外部支援縮小の影響により検体搬送やボランティア体制の維持が困難となり、モニタリング機能の低下などサービスの質に影響が生じつつあることが明らかとなった。これは、資金減少の影響が即時に主要アウトカムに現れなくとも、基盤機能の弱体化として蓄積し、将来的な成果悪化につながる可能性を示唆するものである。
以上を踏まえると、GFを取り巻く環境は資金拡大型から資源制約型へと不可逆的に転換しており、今後は持続可能性の確保が最重要課題となる。この文脈において、移行は単なる支援縮小ではなく、外部資金依存からの脱却を伴う制度再構築の過程として位置付けられるべきである。特に、検体搬送、保健情報システム、人材、コミュニティ活動といった基盤機能は長期的成果に不可欠であり、戦略的に維持・強化する必要がある。また、コミュニティ活動の制度化(social contracting)は、資源制約下における持続可能な保健システムの中核的要素として重要性を増している。限られた資源の中では、必須サービスとそれを支える基盤機能の双方を確保するための優先順位付けが不可欠である。
結論
GFは資源制約を前提とした新たな段階に移行しており、移行と資源配分の最適化が政策の中核となっている。ザンビア調査からは、表面的な成果の背後で基盤機能の脆弱性が進行している可能性が示唆された。今後は限られた資源の中で基盤機能を維持しつつ持続可能な制度移行を進めることが重要である。その過程において、国際協力の現場の知見に基づく実効的な技術的インプットを通じ、日本が国際保健政策の質の向上に主体的かつ継続的に貢献していくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-09-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202505009Z