小児がんに対する標準治療・診断確立のための研究

文献情報

文献番号
201020017A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がんに対する標準治療・診断確立のための研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
堀部 敬三(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鶴澤 正仁(愛知医科大学医学部小児科)
  • 出口 隆生(三重大学医学部附属病院小児科)
  • 中澤 温子 (中川 温子)(独立行政法人国立成育医療研究センター病理診断部)
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 堀江 弘(千葉県こども病院検査部病理科)
  • 大喜多 肇(独立行政法人国立成育医療研究センター小児血液・腫瘍研究部)
  • 中川原 章(千葉県がんセンター)
  • 藤本 純一郎(独立行政法人国立成育医療研究センター臨床研究センター)
  • 原 純一(大阪市立総合医療センター小児血液腫瘍科)
  • 小田 慈(岡山大学大学院保健学研究科)
  • 石田 也寸志(聖路加国際病院小児科)
  • 石井 榮一(愛媛大学大学院医学系研究科小児医学分野)
  • 渡辺 新(明和会中通総合病院小児科)
  • 康 勝好(聖路加国際病院小児科)
  • 小川 千登世(聖路加国際病院小児科)
  • 森 鉄也(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 多和 昭雄(国立病院機構大阪医療センター小児科)
  • 嶋田 博之(慶應義塾大学医学部)
  • 真部 淳(聖路加国際病院小児科)
  • 矢部 普正(東海大学医学部基盤診療学系再生医療学)
  • 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター臨床疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
37,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がんの臨床研究基盤の整備を行い、造血器腫瘍の標準治療の確立を目指した質の高い臨床試験を実施してエビデンスを創出する。
研究方法
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)のもとに、小児造血器腫瘍の標準治療の確立のための臨床試験を実施する。また、小児がんの臨床研究基盤を整備する。(倫理面への配慮)臨床試験を実施するにあたって①匿名化して個人情報を保護する。②統一された説明文書を用いて文書による同意を得る。③中央研究審査委員会および施設倫理委員会の承認のもとに研究を実施する。
結果と考察
乳児急性リンパ性白血病(ALL)に対する臨床試験MLL03の登録(N=63)および観察が終了し、生存解析を行った。18か月無イベント生存率および全生存率は、それぞれ54.5%、80.8%であった。月齢6か月未満と中枢神経浸潤陽性が有意な予後不良因子であった。本年1月からMLL-10臨床試験を開始した。リンパ腫(NHL03)と急性骨髄性白血病(AML-05)の臨床試験は予定登録数を達成して登録終了となった。発生数が少ないLLB-NHL03、昨年度開始した再発ALLに対する臨床試験ALL-R08と慢性骨髄性白血病に対する観察研究CML-08、および国際共同研究ALCL99およびHLH2004の登録を継続した。今年度小児血液腫瘍性疾患すべてを対象とした前向きコホート研究を開始した。日本初の小児ALL全国統一臨床試験となるALL-T11と-B11の実施計画書が完成し、次年度に開始する。若年性骨髄単球性白血病に対する臨床試験JMML11、多臓器型および多発骨型ランゲルハンス組織球症に対する臨床試験LSG-10の準備も整えられた。リンパ腫病理中央診断は累積で742例となり、中央診断率は95%に達してシステムが定着した。小児固形腫瘍の中央診断を163例で実施し、小児固形腫瘍の診断の手引きを作成した。ALL-R08においてPCR法を用いたMRDとフリーサイトメトリ法を用いたMRDを比較検討し、良好な相関が得られた。余剰検体分譲手順書を策定しMLL03およびAML-05臨床試験の余剰検体の分譲を実施した。長期フォローアップのためのガイドライン作成を行った。施設訪問監査を新たに15施設で実施した。
結論
本研究により小児造血器腫瘍の全国統一の臨床研究が実施され、ほぼ全ての疾患で治療が標準化された。第一世代の多くの臨床試験が登録終了となり、成果が公表できる段階となった。また、小児がん全体で臨床研究の基盤整備が進められることで質の高い臨床試験が効率的に実施されるばかりでなく、医療の質の向上への直接的な貢献が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201020017B
報告書区分
総合
研究課題名
小児がんに対する標準治療・診断確立のための研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
堀部 敬三(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鶴澤 正仁(愛知医科大学医学部小児科)
  • 出口 隆生(三重大学医学部附属病院小児科)
  • 中澤 温子(独立行政法人国立成育医療研究センター病理診断部)
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 堀江 弘(千葉県こども病院検査部病理科)
  • 大喜多 肇(独立行政法人国立成育医療研究センター小児血液・腫瘍研究部)
  • 中川原 章(千葉県がんセンター)
  • 藤本 純一郎(独立行政法人国立成育医療研究センター臨床研究センター)
  • 原 純一(大阪市立総合医療センター)
  • 小田 慈(岡山大学大学院保健学研究科)
  • 石田 也寸志(聖路加国際病院小児科)
  • 石井 榮一(愛媛大学大学院医学系研究科小児医学分野)
  • 渡辺 新(明和会中通総合病院小児科)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター血液腫瘍科)
  • 小川 千登世(聖路加国際病院小児科)
  • 森 鉄也(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 多和 昭雄(国立病院機構大阪医療センター小児科)
  • 嶋田 博之(慶應義塾大学医学部)
  • 真部 淳(聖路加国際病院小児科)
  • 矢部 普正(東海大学医学部基盤診療学系再生医療学)
  • 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター臨床疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がんの臨床研究基盤の整備を行い、造血器腫瘍の標準治療の確立を目指した質の高い臨床試験を実施してエビデンスを創出する。
研究方法
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)のもとに、小児造血器腫瘍の標準治療の確立のための臨床試験を実施する。また、小児がんの臨床研究基盤を整備する。
結果と考察
国際共同研究ALCL99により大量methotrexateの投与法とvinblastine投与の有用性が検証された。乳児急性リンパ性白血病(ALL)に対する早期造血幹細胞移植の有効性を検証する臨床試験MLL03で54.5%の18か月無イベント生存率と80.8%の全生存率が得られ、予後不良因子として月齢6か月未満と中枢神経浸潤陽性が明らかとなった。リンパ腫(NHL03)と急性骨髄性白血病(AML-05)の臨床試験は予定登録数を達成して登録終了となった。新たに再発ALLに対する臨床試験ALL-R08と慢性骨髄性白血病(CML)に対する観察研究CML-08、およびMLL-10臨床試験を開始した。小児血液腫瘍性疾患すべてを対象とした前向きコホート研究を開始した。日本初の小児ALL全国統一臨床試験となるALL-T11と-B11の実施計画書が完成した。リンパ腫中央病理診断はこれまでの累積症例数が742例で、中央診断率は95%に達し、中央診断システムが定着した。ALLのマーカー検査およびMRDの免疫学的・分子生物学的手法による検査体制が確立できた。同種造血細胞移植治療の標準化を目的として小児造血細胞移植臨床試験プロトコールマニュアルを作成した。長期フォローアップ体制整備としてガイドライン作成、治療サマリーの作成と情報提供の普及を行った。小児固形腫瘍の病理中央診断システムを既存の固形腫瘍研究グループと連携して日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会が主体となって構築した。余剰検体分譲手順書を策定し分譲を実施した。施設訪問監査の体制を整備し、40施設で実施した。
結論
本研究により小児造血器腫瘍の全国統一の臨床研究が実施され、ほぼ全ての疾患で治療が標準化された。第一世代の多くの臨床試験の症例登録が終了した。また、小児がん全体で臨床研究の基盤整備が進められたことで質の高い臨床試験の効率的実施が可能となるとともに、わが国の小児がん医療の質の標準化と向上が図られた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201020017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
施設訪問監査体制、検体保存と研究利用体制、固形腫瘍を含む中央診断体制の構築により、小児がんの臨床試験の質の向上が図られた。ALCL99研究により未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)の治療におけるビンブラスチン維持療法の有用性を明らかにした。MLL03研究により乳児急性リンパ性白血病の予後因子を明確化した。分子標的薬イマチニブによる成長障害を明らかにした。急性リンパ性白血病の微小残存病変の検出系を確立し、再発例において造血幹細胞移植適応の判断基準に応用した。
臨床的観点からの成果
乳児リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病の全国統一研究が行われ、治療の標準化がなされた。最も多い急性リンパ性白血病についても全国統一研究の合意と実施計画書の作成がなされ、まもなく治療が標準化される。日本小児白血病リンパ腫研究グループの参加施設基準を明確にし、毎年施設調査と施設訪問監査を実施することで、小児血液がんの診療施設の診療および研究の質の向上が図られた。小児がんの中央診断システムの構築を行い、診断の標準化が図られた。
ガイドライン等の開発
本研究で小児造血器腫瘍の臨床試験を実施するにあたって標準化された診断基準、各種定義、治療指針が日本の小児造血器腫瘍の診療の規範となっている。実際、本研究で作成された診断基準等が日本血液学会日本リンパ網内系学会編の造血器腫瘍取扱い規約に引用された。また、本研究の成果を踏まえて日本小児血液学会編の小児白血病・リンパ腫の診療ガイドライン2011年版が作成中である。長期フォローアップガイドラインが策定された。
その他行政的観点からの成果
小児造血器腫瘍の診療および研究の質を担保するために本研究の臨床試験への参加施設基準を明確にしたことで、我が国の小児がん診療の質の向上と標準化に貢献したものと考えられる。また、本研究の成果により、がん臨床研究事業において小児急性骨髄性白血病の標準治療確立を目的とした研究課題が採択された。
その他のインパクト
がんの子供を守る会講演会(一般向け)で成果発表を行った(平成20年6月22日、東京; 平成22年7月24日、大阪)。

発表件数

原著論文(和文)
24件
原著論文(英文等)
166件
その他論文(和文)
51件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
354件
学会発表(国際学会等)
71件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
小児白血病・リンパ腫の診療ガイドライン、造血器腫瘍取扱い規約
その他成果(普及・啓発活動)
2件
一般向け講演会2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
堀部敬三、土田昌宏、鶴澤正仁 他
わが国の小児造血器腫瘍診療施設の実態
日本小児科学会雑誌 , 113 (1) , 105-111  (2009)
原著論文2
Shima H, Tokuyama M, Tanizawa A et al.
Distinct Impact of Imatinib on Growth at Prepubertal and Pubertal Ages of Children with Chronic Myeloid Leukemia
J Pediatr  (2011)
原著論文3
Wrobel G, Mauguen A, Rosolen A et al.
Safety assessment of intensive induction therapy in childhood anaplastic large cell lymphoma: Report of the ALCL99 randomised trial.
Pediatr Blood Cancer , 56 (7) , 1071-1077  (2011)
原著論文4
Ishida Y, Honda M, Kamibeppu K et al.
Social outcomes and quality of life of childhood cancer survivors in Japan: a cross-sectional study on marriage, education, employment and health-related QOL (SF-36).
Int J Hematol , 93 (5) , 633-644  (2011)
原著論文5
Attarbaschi A, Mann G, Rosolen A et al.
Limited stage I disease is not necessarily indicative of an excellent prognosis in childhood anaplastic large cell lymphoma (ALCL)
Blood  (2011)
原著論文6
Fujita N, Kobayashi R, Takimoto T et al.
Results of the Japan Association of Childhood Leukemia Study (JACLS) NHL-98 protocol for the treatment of B-cell non-Hodgkin lymphoma and mature B-cell acute lymphoblastic leukemia in childhood
Leuk Lymphoma , 52 (2) , 223-229  (2011)
原著論文7
Ohta H, Iwamoto S, Kiyokawa N et al.
Flow cytometric analysis of de novo acute myeloid leukemia in childhood: report from the Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group
Int J Hematol , 93 (1) , 135-137  (2011)
原著論文8
Imaizumi M, Tawa A, Hanada R et al.
Prospective study of a therapeutic regimen with all-trans retinoic acid and anthracyclines in combination of cytarabine in children with acute promyelocytic leukaemia: the Japanese childhood acute myeloid leukaemia cooperative study.
Br J Haematol , 152 (1) , 89-98  (2011)
原著論文9
Kamibeppu K, Sato I, Honda M et al.
Mental health among young adult survivors of childhood cancer and their siblings including posttraumatic growth.
J Cancer Surviv , 4 (4) , 303-312  (2010)
原著論文10
Aricò M, Schrappe M, Hunger SP et al.
Clinical outcome of children with newly diagnosed Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia treated between 1995 and 2005.
J Clin Oncol , 28 (31) , 4755-4761  (2010)
原著論文11
Le Deley MC, Rosolen A, Williams DM et al.
Vinblastine in Children and Adolescents With High-Risk Anaplastic Large-Cell Lymphoma: Results of the Randomized ALCL99-Vinblastine Trial.
J Clin Oncol , 28 (25) , 3987-3993  (2010)
原著論文12
Mizushima Y, Taki T, Shimada A et al.
Prognostic significance of the BAALC isoform pattern and CEBPA mutations in pediatric acute myeloid leukemia with normal karyotype: a study by the Japanese Childhood AML Cooperative Study Group.
Int J Hematol , 91 (5) , 831-837  (2010)
原著論文13
Ishida Y, Honda M, Ozono S et al.
Late effects and quality of life of childhood cancer survivors: part 1. Impact of stem cell transplantation.
Int J Hematol , 91 (5) , 865-876  (2010)
原著論文14
Ishida Y, Sakamoto N, Kamibeppu K et al.
Late effects and quality of life of childhood cancer survivors: Part 2. Impact of radiotherapy.
Int J Hematol , 92 (1) , 95-104  (2010)
原著論文15
Suzuki N, Yumura-Yagi K, Yoshida M et al.
Japan Association of Childhood Leukemia Study (JACLS). Outcome of childhood acute lymphoblastic leukemia with induction failure treated by the Japan Association of Childhood Leukemia study (JACLS) ALL F-protocol.
Pediatr Blood Cancer , 54 (1) , 71-78  (2010)
原著論文16
Tsukimoto I, Tawa A, Horibe K et al.
Risk-stratified therapy and the intensive use of cytarabine improves the outcome in childhood acute myeloid leukemia: the AML99 trial from the Japanese Childhood AML Cooperative Study Group
J Clin Oncol , 27 (24) , 4007-4013  (2009)
原著論文17
Mitsui T, Mori T, Fujita N et al.
Retrospective analysis of relapsed or primary refractory childhood lymphoblastic lymphoma in Japan.
Pediatr Blood Cancer , 52 (5) , 591-595  (2009)
原著論文18
Brugières L,Le Deley MC, Rosolen A et al.
Impact of the methotrexate administration dose on the need for intrathecal treatment in children and adolescents with anaplastic large-cell lymphoma: results of a randomized trial of the EICNHL Group.
J Clin Oncol , 27 (6) , 897-903  (2009)
原著論文19
Tauchi H, Tomizawa D, Eguchi M et al.
Clinical features and outcome of MLL gene rearranged acute lymphoblastic leukemia in infants with additional chromosomal abnormalities other than 11q23 translocation.
Leuk Res , 32 (10) , 1523-1529  (2008)
原著論文20
Fujita N, Mori T, Mitsui T et al.
The role of hematopoietic stem cell transplantation with relapsed or primary refractory childhood B-cell non-Hodgkin lymphoma and mature B-cell leukemia: a retrospective analysis of enrolled cases in Japan.
Pediatr Blood Cancer , 51 (2) , 188-192  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020017Z