早期前立腺がんにおける根治術後の再発に対する標準的治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201020016A
報告書区分
総括
研究課題名
早期前立腺がんにおける根治術後の再発に対する標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 誠二(九州大学 大学院医学研究院泌尿器科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 横溝 晃(九州大学病院泌尿器科)
  • 橋根 勝義(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター泌尿器科)
  • 佐藤 威文(北里大学医学部泌尿器科)
  • 筧 善行(香川大学医学部泌尿器・副腎・腎移植外科)
  • 神波 大己(京都大学大学院医学研究科泌尿器科学)
  • 平尾 佳彦(奈良県立医科大学泌尿器科学)
  • 羽渕 友則(秋田大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学講座)
  • 西澤 理(信州大学医学部泌尿器科学)
  • 篠原 信雄(北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科)
  • 川島 清隆(栃木県立がんセンター泌尿器科)
  • 頴川 晋(東京慈恵会医科大学泌尿器科学)
  • 後藤 百万(名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学)
  • 庭川 要(静岡県立静岡がんセンター泌尿器科)
  • 北村 康男(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 野口 正典(久留米大学先端癌治療研究センター臨床研究部門)
  • 市川 智彦(千葉大学大学院医学研究院泌尿器科学)
  • 大家 基嗣(慶応義塾大学医学部泌尿器科)
  • 井川 幹夫(島根大学医学部泌尿器科)
  • 栃木 達夫(宮城県立がんセンター泌尿器科)
  • 大園 誠一郎(浜松医科大学泌尿器科学)
  • 山口 秋人(原三信病院)
  • 塚本 泰司(札幌医科大学医学部泌尿器科)
  • 冨田 善彦(山形大学医学部腎泌尿器外科学分野)
  • 堀江 重郎(帝京大学医学部泌尿器科学)
  • 座光寺 秀典(山梨大学医学部泌尿器科学)
  • 藤澤 正人(神戸大学大学院医学研究科腎泌尿器科学)
  • 寺井 章人(倉敷中央病院泌尿器科)
  • 荒井 陽一(東北大学大学院医学系研究科泌尿・生殖器科学)
  • 藤元 博行(国立がん研究センター中央病院泌尿器科)
  • 谷川 俊貴(新潟大学医歯学総合病院泌尿器科)
  • 杉村 芳樹(三重大学大学院医学系研究科腎泌尿器外科学)
  • 西村 和郎(大阪府立成人病センター泌尿器科)
  • 江藤 正俊(熊本大学大学院生命科学研究部泌尿器病態学分野)
  • 中川 昌之(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科腫瘍学講座尿路系腫瘍学)
  • 大山 力(弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座)
  • 宮崎 淳(筑波大学大学院人間総合科学研究科腎泌尿器科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
19,904,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限局性前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術後のPSA再発患者に対して、内分泌療法前に放射線療法を行うことの臨床的有用性を、内分泌療法単独とのランダム化比較試験により評価し、標準的治療法の確立を目指す。Primary endpointは抗アンドロゲン剤のTime-to-Treatment Failure (TTF) とし、secondary endpointはプロトコール治療のTTF、全生存期間、臨床的無再発生存期間、放射線、抗アンドロゲン剤、LH-RHアナログの有害事象、QOLとした。
研究方法
登録時に適格患者はA群(内分泌療法群)かB群(放射線療法群)にランダム割付される。A群では抗アンドロゲン剤治療とその後の治療失敗(TF) に対するLH-RHアナログ治療をもってプロトコール治療とし、B群では前立腺床に対する64.8Gyの外照射、その後 TF を生じたらA群と同様の治療をもってプロトコール治療とした。本年度はプロトコール改訂を行い、登録期間は7年、追跡期間は登録終了後5年とし、総研究期間は12年に延長した。
結果と考察
当研究はJapan Clinical Oncology Group(JCOG)にプロトコール審査及び、データマネージメントを依頼し研究を行なっている。これまで重篤な有害事象は認めておらず、放射線治療の品質管理も良好である。2) 本研究は、H14-効果(がん)-030およびH17-がん臨床-003として採択され、H16年5月からの4年間に各群100名を目標に患者登録を開始した。登録症例数が予定を下回っていたことが問題であったが、全施設での登録候補患者の調査、参加施設の入れ替え、患者への説明医の固定、コアメンバーによる縮小班会議の定期的開催、説明パンフレットの作成、配布、カルテ用シール等の配布などの対策を行った結果、登録数は増加した。H22年12月の定期JCOGの施設監査の際、不適格登録の指摘を受け、調査した結果、合計9例の不適格登録があることが判明したため、登録数を10例増やし、計210例とし、平成23年5月9日、目標の患者登録を完遂することができた。今後は、プロトコールに従った厳密な患者追跡を行い、研究目的の達成に努める所存である。
結論
H22年12月の定期JCOGの施設監査の際、不適格登録の指摘を受け、調査した結果、合計9例の不適格登録があることが判明した。このため登録数を当初の計画より10例増やし、計210例とすることとした。そして、平成23年5月9日、目標の患者登録210例を完遂した。今後は、プロトコールに従った厳密な患者追跡を行い、研究目的の達成に努める所存である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201020016B
報告書区分
総合
研究課題名
早期前立腺がんにおける根治術後の再発に対する標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 誠二(九州大学 大学院医学研究院泌尿器科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 横溝 晃(九州大学病院 泌尿器科)
  • 住吉 義光・橋根 勝義(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 泌尿器科)
  • 佐藤 威文(北里大学医学部 泌尿器科)
  • 筧 善行(香川大学医学部 泌尿器科)
  • 賀本 敏行・神波 大己(京都大学大学院医学研究院 泌尿器病態学)
  • 平尾 佳彦(奈良県立医科大学医学部 泌尿器科学)
  • 羽渕 友則(秋田大学医学部生殖発達医学講座 泌尿器科学分野)
  • 西沢 理(信州大学医学部 泌尿器科学)
  • 篠原 信雄(北海道大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科)
  • 川島 清隆(栃木県立がんセンター 泌尿器科)
  • 頴川 晋(東京慈恵会医科大学 泌尿器科学)
  • 後藤 百万(名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学)
  • 庭川 要(静岡県立静岡がんセンター 泌尿器科)
  • 小松原 秀一・北村 康男(新潟県立がんセンター新潟病院 泌尿器科)
  • 野口 正典(久留米大学先端癌治療研究センター 臨床研究部門)
  • 市川 智彦(千葉大学大学院医学研究院 泌尿器科学)
  • 大家 基嗣(慶応義塾大学医学部 泌尿器科)
  • 井川 幹夫(島根大学医学部 泌尿器科学)
  • 栃木 達夫(宮城県立がんセンター 泌尿器科)
  • 大園 誠一郎(浜松医科大学 泌尿器科学)
  • 山口 秋人(原三信病院 泌尿器科)
  • 塚本 泰司(札幌医科大学医学部 泌尿器科)
  • 冨田 善彦(山形大学医学部 腎泌尿器外科学分野)
  • 堀江 重郎(帝京大学医学部 泌尿器科学)
  • 野村 照久・座光寺 秀典(山梨大学医学部 泌尿器科学)
  • 藤澤 正人(神戸大学大学院医学研究科 腎泌尿器科学)
  • 寺井 章人(倉敷中央病院 泌尿器科)
  • 荒井 陽一(東北大学大学院医学系研究科 泌尿・生殖器科学)
  • 藤元 博行(国立がん研究センター中央病院 泌尿器科)
  • 谷川 俊貴(新潟大学医歯学総合病院 泌尿器科)
  • 杉村 芳樹(三重大学大学院医学系研究科 腎泌尿器外科学)
  • 宇佐美 道之・西村 和郎(大阪府立成人病センター 泌尿器科)
  • 江藤 正俊(熊本大学大学院生命科学研究部 泌尿器病態学分野)
  • 中川 昌之(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 腫瘍学講座尿路系腫瘍学)
  • 大山 力(弘前大学大学院医学研究科 泌尿器科学講座)
  • 宮永 直人・宮崎 淳(筑波大学大学院人間総合科学研究科 腎泌尿器科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限局性前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術後のPSA再発患者に対して、内分泌療法前に放射線療法を行うことの臨床的有用性を、内分泌療法単独とのランダム化比較試験により評価し、標準的治療法の確立を目指す。Primary endpointは抗アンドロゲン剤のTime-to-Treatment Failure (TTF) とし、secondary endpointはプロトコール治療のTTF、全生存期間、臨床的無再発生存期間、放射線、抗アンドロゲン剤、LH-RHアナログの有害事象、QOLとした。
研究方法
登録時に適格患者はA群(内分泌療法群)かB群(放射線療法群)にランダム割付される。A群では抗アンドロゲン剤治療とその後の治療失敗(TF) に対するLH-RHアナログ治療をもってプロトコール治療とし、B群では前立腺床に対する64.8Gyの外照射、その後 TF を生じたらA群と同様の治療をもってプロトコール治療とした。登録期間は7年、追跡期間は登録終了後5年とし、総研究期間は12年とした。
結果と考察
当研究はJapan Clinical Oncology Group(JCOG)にデータマネージメントを依頼し研究を行なっている。放射線治療の品質管理も良好である。2) 本研究は、H14-効果(がん)-030、H17-がん臨床-003およびH20-がん臨床-一般-016として採択され、H16年5月からの4年間に各群100名を目標に患者登録を開始した。登録症例数が予定を下回っていたことが問題であったが、全施設での登録候補患者の調査、参加施設の入れ替え、患者への説明医の固定、コアメンバーによる縮小班会議の定期的開催、説明パンフレットの作成、配布、カルテ用シール等の配布などの対策を行った結果、登録数は増加した。H20年9月には、登録数が100例を超え、中間解析を行い、その結果、JCOG効果安全性評価委員会から「研究の続行」を承認され、登録期間の延長を指示された。そのため、プロトコール改訂を行い、登録期間を7年、追跡期間は登録終了後5年とし、総研究期間を12年とした。しかし、H22年12月の定期JCOGの施設監査の際、不適格登録の指摘を受け、調査した結果、合計9例の不適格登録があることが判明したため、登録数を10例増やし、計210例とした。登録期間の平成23年5月までに目標の患者登録を完遂できように、さらに積極的に患者登録推進に努め、H23年4月8日現在、208名の患者登録を行った。
結論
H23年4月8日現在、患者登録は208名となり、目標症例数まであと2例となった。両群ともに治療による重篤な有害事象は認めていない。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201020016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
この研究プロトコールを作成した背景を基に、根治的前立腺摘除術後の PSA 再発の評価と対応に関する review article (Jpn J Clin Oncol. 2005; 35:365-74) を執筆し、その別冊を参加施設に配布することで、本研究の位置づけと重要性について参加医師の認識を高めた。さらに、研究参加施設に本研究に関連する分担研究を毎年依頼し、様々な前立腺癌の基礎、臨床研究が推進された。
臨床的観点からの成果
日本の限局性前立腺癌に関する大規模な手術成績が不明のため、1192例のデータ集計と統計解析を行った。その結果、PSA再発率は25.3%で、PSA再発と有意に相関する因子は、生検の癌陽性率、術前PSA値、病理病期、全摘標本のGleason scoreの4項目であった。さらに、救済放射線治療を最初に受けた患者の3年後のPSA非再発率は60%であることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
本研究の結果がまだ明らかではないため、この結果はガイドライン等に掲載されていない。
その他行政的観点からの成果
本研究の結果がまだ明らかではないため、審議会等で参考にされたことや行政施策に反映されたことはない。
その他のインパクト
2004年5月3日の朝日新聞に以下の研究内容が掲載された。「前立腺がんで摘出手術を受けた患者のうち、ほぼ2割が後にがんを再発していたことが、厚生労働省研究班(班長=内藤誠二・九州大教授)が初めて実施した全国調査で明らかになった(以下省略)」。

発表件数

原著論文(和文)
2件
総合、総括報告書参照
原著論文(英文等)
58件
総合、総括報告書参照
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
113件
主に、日本泌尿器科学会総会、及び東部、中部、西部総会、 日本癌治療学会などで発表した。
学会発表(国際学会等)
20件
主に、米国泌尿器科学会、欧州泌尿器科学会、米国臨床腫瘍学会などで発表した。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shiota M, Yokomizo A, Tada Y, et al.
Peroxisome proliferator activated receptor γ coactivator-1α interacts with the androgen receptor and promotes prostate cancer cell growth by activating the androgen receptor.
Mol Endocrinol , 24 , 114-127  (2010)
10.1210/me.2009-0302.
原著論文2
Shiota M, Song Y, Yokomizo A, et al
Human heterochromatin protein 1 isoform HP1{beta} enhances androgen receptor activity and is implicated in prostate cancer growth.
Endocr Relat Cancer , 17 , 455-467  (2010)
10.1677/ERC-09-0321.
原著論文3
Shiota M, Yokomizo A, Masubuchi D, et al.
Tip60 promotes prostate cancer cell proliferation by translocation of androgen receptor into the nucleus.
Prostate , 70 , 540-554  (2010)
10.1002/pros.21088.
原著論文4
Shiota M, Yokomizo A, Tada Y, et al.
Castration resistance of prostate cancer cells caused by castration-induced oxidative stress through Twist1 and androgen receptor overexpression.
Oncogene , 29 , 237-250  (2010)
10.1038/onc.2009.322.
原著論文5
Yokomizo A, Shiota M, Kashiwagi E, et al.
Statins reduce the androgen sensitivity and cell proliferation by decreasing the androgen receptor protein in prostate cancer cells.
Prostate , 71 , 298-301  (2011)
10.1002/pros.21243.
原著論文6
Yokomizo A, Tobisu K, Kawamoto H, et al.
Randomized Controlled Trial to Evaluate Radiation plus Endocrine Therapy or Endocrine Therapy alone for PSA failure after radical prostatectomy: Japan Clinical Oncology Group Study JCOG 0401.
Jpn J Clin Oncol , 34 , 34-36  (2005)
原著論文7
Yokomizo A, Murai M, Baba S, et al.
Percentage of positive biopsy cores, preoperative prostate-specific antigen (PSA) level, pT and Gleason score as predictors of PSA recurrence after radical prostatectomy: a multi-institutional outcome study in Japan.
BJU Int , 98 , 549-553  (2006)
原著論文8
Kashiwagi E, Shiota M, Yokomizo A, et al.
Downregulation of phosphodiesterase 4B (PDE4B) activates protein kinase A and contributes to the progression of prostate cancer.
Prostate , 72 (7) , 741-751  (2012)
10.1002/pros.21478.
原著論文9
Shiota M, Takeuchi A, Song Y, et al.
Y-box binding protein-1 promotes castration-resistant prostate cancer growth via androgen receptor expression.
Endocr Relat Cancer , 18 (4) , 505-517  (2011)
10.1530/ERC-11-0017.

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2015-10-06

収支報告書

文献番号
201020016Z