ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)推進における新たな要素の同定と世界のUHC達成に向けた我が国の施策検討のための研究

文献情報

文献番号
202505004A
報告書区分
総括
研究課題名
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)推進における新たな要素の同定と世界のUHC達成に向けた我が国の施策検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24BA1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
本田 文子(国立大学法人一橋大学 社会科学高等研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 大曲 貴夫(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 国際感染症センター)
  • 野田 信一郎(国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
3,058,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、国際政策レビューを通して、国際社会におけるUHC概念の変遷および新たな要素を整理し、我が国によるUHC関連の国際貢献の要点を明らかにする。また、UHCにおける「新たな要素」を幅広く探索的に分析する活動と並行して、近年UHCの礎石として重要性が高まっており、かつ我が国の経験を活かすことが可能なテーマである「健康危機」および「保健医療サービスの質」を重点課題として取り上げ、UHCとの関連から詳細な検証を行う。
研究方法
本研究班では、研究活動を以下の6つのワーキンググループ(WG)に区分し、研究分担者および研究協力者を配置して運営している。
WG1:UHCに関する政策トラッキング(Prospective review)
WG2:UHC国際政策レビュー(Retrospective review)
WG3:健康危機とUHCに関する概念整理
WG4:健康危機と保健医療財政
WG5:保健医療サービスの質
WG6:日本の公的医療保険制度の公平性の分析
結果と考察
WG1では、2025年4月から2026年3月までに公表されたUHC関連情報を継続的に収集し、テーマ分析によりグローバル政策動向を整理した。その結果、国・地域ごとに重点課題は異なるものの、国内資源動員、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)の強化、財政持続性の確保が共通課題として確認された。また、従来の人口・財政・サービスカバレッジに加え、効果的カバレッジや未充足ニーズなど、多面的な指標が注視されていることが示された。さらに、デジタル化、民間連携とガバナンス、公共財政管理など、保健システム全体の実装能力の重要性も明らかとなった。
WG2では、国際機関が公式文書の中でどのような「UHCの新しい要素」を認識しているかを分析した。WHO世界保健総会決議文に加え、11の国際組織の文書を対象にテーマ分析を実施し、保健課題76テーマ、保健システム課題105テーマを抽出した。さらに、各テーマの経年変化や組織間の特徴を整理することで、国際的な政策潮流を可視化した。
WG3では、Pandemic Prevention, Preparedness and Response(PPPR)とUHC/保健システム強化(HSS)の関連性を整理するため、公式文書および92篇の文献レビューを実施し、概念的枠組み案を作成した。また、過去のパンデミックが保健システムへ与えた影響や、PPPRとレジリエンス向上に寄与する要素を分析した結果、保健システム機能に加えてヘルスプロモーションの重要性が示唆された。
WG4では、WHO、OECD、世界銀行等の文献を対象とした迅速レビューを通して、健康危機下における公共財政管理の課題を検討した。その成果として「公衆衛生と緊急対応のレジリエンスを高める財政メカニズム」をテーマとしたスコーピングレビューの研究プロトコールを作成し、平時と緊急時を接続する制度・資金配分・ガバナンス構造の分析を進めている。
WG5では、UHCが掲げる「良質なサービスへのアクセス」の実現に向け、制度・組織・コミュニティの三層に着目したスコーピングレビューを実施した。ソーシャルメディアを活用した患者報告情報や、医療従事者の内発的動機づけに関するレビューを通し、コミュニティ・組織レベルでの医療の質向上に関する知見を整理した。また、患者報告アウトカム(PROs)および患者報告経験(PREs)の医療財政への活用可能性についても検証を進めている。
WG6では、日本の公的医療保険制度における公平性を分析した。2010~2022年の国民生活基礎調査を用いて分析を行なった結果、制度全体では市場所得ベースで逆進的である一方、税・社会保険料控除後所得基準では累進的となり、一定の再分配効果が確認された。また、被用者保険と非被用者保険では負担構造に違いがみられ、負担の公平性は制度類型や所得定義によって異なることが示された。
結論
本研究は、SDGs目標3に位置づけられるUHCについて、国際政策レビューをもとに概念の変遷と新たな要素を整理し、日本の国際貢献の方向性を検討することを目的とした。研究は6つのWGで構成され、政策動向分析、健康危機、保健医療財政、医療の質、公平性を含め、UHCをヘルスシステムのレジリエンス強化という包括的視点から検討した。今年度の研究では、PHC強化、包摂的カバレッジ、財政持続性、患者中心のケアとサービスの質、デジタル化などが重要課題として特定された。また、PPPRや健康危機対応との統合的視点の必要性も示された。最終年度にはデルファイ法を用いて関係者間の合意形成を図り、日本の制度経験を踏まえた国際協力への提言を取りまとめる予定である。

公開日・更新日

公開日
2026-09-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202505004Z