医療機関における情報技術等への業務移管による医療従事者の労働時間短縮効果と経営上の負荷に基づく費用対効果の検証研究

文献情報

文献番号
202503005A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における情報技術等への業務移管による医療従事者の労働時間短縮効果と経営上の負荷に基づく費用対効果の検証研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AC1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 耕(国立大学法人一橋大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 阪口 博政(金沢大学 経済学経営学系)
  • 平木 秀輔(関西学院大学 経営戦略研究科)
  • 齊藤 健一(京都大学 医学研究科 附属医療DX教育研究センター)
  • 羽田 紘人(東京科学大学病院 放射線部)
  • 上條 由美(昭和医科大学 保健医療学部)
  • 的場 匡亮(昭和医科大学 大学院 保険医療学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
15,386,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人手不足が明らかになる中、情報技術の活用による業務効率化を進める必要がある。その際、各種ICTごとに労働時間短縮効果と経営上の負荷(回収期間)を明確にすることで、経営上より有利なICTから積極的に取り組んでもらうことができ、医療従事者の労働時間短縮につながると考えられる。そこで、実際の事例等を基に情報技術への業務移管の費用対効果を可視化し、業務負担軽減に資するICT等の導入を促すことを目的とした。
研究方法
そのため本年度は、4種類のICTの効果把握及び費用対効果調査とその結果を適切に解釈するための病院インタビュー調査、ICT投資と設備投資の比較調査、生成AIに関するインタビュー及びアンケート調査、3大学での実地病院調査の8調査を実施した。
結果と考察
4種ICTの効果把握及び費用対効果調査では、各ICTによる業務代替以前・以後の職種別業務所要時間と業務の年間発生件数の詳細なデータを収集して職種別の時短効果を把握するとともに、令和6年度に収集したコスト関連データとリンクさせて回収期間を算定して経営上の負荷を把握し、電子問診では36病院、音声入力では38病院、RPAでは36病院、動画説明では55病院を対象に、費用対効果を分析できた。各ICTの典型的な経営的負荷及び職種別時短効果や病院によるバラツキ状況を明らかにでき、より経営負荷を抑えつつ時短効果を大きくするための事前の検討と導入後の運用改善が重要であることが示唆された。また4種ICT間にも典型的な費用対効果に大きな違いが見られ、経営負荷が小さく時短数が大きいICTから優先的に導入する経営政策が有効に採りうることが確認された。典型的には、電子問診だけは回収不能であり経営負荷が特に大きい一方、他の3種ICTはいずれも経営負荷は重くない中、音声入力は年間時短数が特に大きく、費用対効果が一番良かった。
また病院インタビュー調査により、この4種類のICTの費用対効果分析の結果を適切に解釈するための知見が得られたほか、モバイルデバイス及び搬送ロボットに関するコスト及び効果についても質的に把握することができた。
さらにICT投資と設備投資の比較調査では、病院経営医療法人への調査から、両場合で投資マネジメントに基本的に相違はなく、従来の機器設備に関する知見をICTにも適用して議論することに大きな問題はなく、本研究の考え方には妥当性があることが確認された。
加えて生成AIに関する簡易インタビュー調査では、生成AIを利用した退院時サマリなどの文書作成業務について、費用や効果を含めた質的状況の概要を把握し、今後の本格的な調査研究のための基礎的な理解を得ることができた。一方、簡易アンケート調査からは、業務効率化等を主目的に費用対効果等を特に重視しつつ導入が始まっており、時短を効果とした費用対効果分析を通じて活用を促すことが重要であると確認された。また23種類の活用内容別の時短貢献度認識と利用状況を把握して、これらの相違を踏まえた分析対象としての優先順位を検討できた。
一方、実地病院調査では、東京科学大学病院では、自動受付機、自動音声入力、AI読影補助、画像再構成自動化、患者ポジショニング支援の5種類のシステムについて、時短効果や労務費節減効果を把握するとともに、回収期間を算出し、費用対効果の分析をした。また京都大学病院では、薬剤部でのRPAについて費用対効果に止まらず継承・保守の課題なども含めて分析できたほか、新たに搬送用ロボット、AI問診、生成AIによる説明用PDFの動画変換に関しても調査を試みた。さらに昭和医科大学病院群では、主に5つの急性期病院を対象として、入退院支援、一包化監査支援、医療文書作成支援、放射線読影補助、生成AI管理業務支援の主に5つのICT等について、時短効果等の把握と費用対効果の分析をできた。
結論
以上の4種ICT調査と実地病院調査による各種ICT等の費用対効果の明確化は、今後、経営上の負荷を抑えつつ医療従事者の業務負担軽減を図りたい病院にとって参考となる。また労働時間短縮を効果とし費用(経営負荷)対効果の観点からICT等の導入を評価する方法論を確立できたため、今回対象としていない多様なICT等に対しても今後適用できる。さらに、本研究で確立できた方法は、各種タスクシフトを対象に確立した方法を基礎として拡張させた方法であるため、人への業務移管と情報技術への業務移管の費用対効果を比較評価でき、この方法論によって病院は人的資源から物的資源までの広範な資源の配分の最適化を図ることが可能となる。加えて、生成AI関連調査からは、業務効率化手段として期待されつつある生成AI活用に関する基礎的な理解と時短貢献度認識及び活用状況に基づく分析対象としての優先順位の検討ができ、今後の本格的な調査研究のための基盤が得られた。

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
202503005B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機関における情報技術等への業務移管による医療従事者の労働時間短縮効果と経営上の負荷に基づく費用対効果の検証研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AC1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 耕(国立大学法人一橋大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 阪口 博政(金沢大学 経済学経営学系)
  • 平木 秀輔(関西学院大学 経営戦略研究科)
  • 齊藤 健一(京都大学 医学研究科 附属医療DX教育研究センター)
  • 羽田 紘人(東京科学大学病院 放射線部)
  • 上條 由美(昭和医科大学 保健医療学部)
  • 的場 匡亮(昭和医科大学 大学院 保険医療学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人手不足が進む中、ICT等の活用による業務効率化の必要性が高まっている。そこで、ICT等導入の時短効果とともに、導入に必要な資源とその経営上の負荷を調査し、ICT等への業務移管の費用対効果を可視化し、業務負担軽減に資するICT等の導入を促すことを目的とした。
研究方法
そのため、令和6年度には、病院及び事業者へのインタビュー調査、ICT等コスト把握全国病院調査、ICT等期待効果・考慮要素調査、実地病院調査を実施した。また令和7年度には、4種ICTの効果把握及び費用対効果調査と病院インタビュー調査、ICT投資と設備投資の比較調査、生成AIに関するインタビュー調査とアンケート調査、3大学での実地病院調査を実施した。
結果と考察
令和6年度には、インタビュー調査から、ICT等への業務移管に関する全国病院調査のための質問票設計や集計結果の解釈に向けた留意事項を明確にでき、全国調査では、電子問診・音声入力・RPA・動画説明の4種類のICTにかかる導入及び運用段階の外部支出及び院内対応各種業務所要時間などの詳細なコスト関連データを収集できた。この収集データにより、4種の各ICTへの業務移管に伴う必要コストの構造を可視化することができ、典型的な導入及び運用段階の外部支出と院内部門別人件費なども明らかにできた。
またICT等期待効果・考慮要素調査では、ICT等全般でも上記4種類のICTでも、労働時間短縮が最も重視度が高い期待効果であり、費用対効果の大小が最も重視度が高い導入時考慮要素であることが判明し、労働時間短縮を効果と捉え費用対効果という観点からICT等導入を分析することの妥当性が確認された。
加えて実地病院調査では、東京科学大学病院では画像再構成自動化や撮影条件意思決定支援などのICT等について、京都大学病院ではRPAや救急部門情報共有システムなどについて、昭和医科大学病院群では退院調整支援や画像レポート作成、救急トリアージ補助などのICT等について導入費用等の把握を試みた。
令和7年度には、4種ICTの効果把握及び費用対効果調査では、各ICTによる業務代替以前・以後の職種別業務所要時間と業務の年間発生件数の詳細なデータを収集して職種別の時短効果を把握するとともに、令和6年度に収集したコスト関連データとリンクさせて回収期間を算定して経営上の負荷を把握し、費用対効果を分析できた。また各ICTによる時短効果を事例類型別にも明確にできた。さらに病院インタビュー調査により、この4種類のICTの費用対効果分析の結果を適切に解釈するための知見が得られた。
またICT投資と設備投資の比較調査では、両場合で投資マネジメントに基本的に相違はなく、従来の機器設備に関する知見をICTにも適用して議論することに大きな問題はなく、本研究の考え方には妥当性があることが確認された。
さらに生成AIに関する簡易インタビュー調査では、生成AIを利用した退院時サマリなどについて質的状況の概要を把握し、今後の本格的な調査研究のための基礎的な理解を得ることができた。一方、簡易アンケート調査からは、業務効率化等を主目的に費用対効果等を特に重視しつつ導入が始まっており、時短を効果とした費用対効果分析を通じて活用を促すことが重要であると確認された。
加えて実地病院調査では、東京科学大学病院では、自動受付機、自動音声入力、AI読影補助、画像再構成自動化、患者ポジショニング支援の5種類のICTについて、京都大学病院では薬剤部でのRPAなどについて、昭和医科大学病院群では、入退院支援、一包化監査支援、医療文書作成支援、放射線読影補助、生成AI管理業務支援の主に5つのICT等について、時短効果等と費用対効果の把握をできた。
結論
本研究全体を通して、各種ICT等の費用対効果が明確となり、今後、経営上の負荷を抑えつつ医療従事者の業務負担軽減を図りたい病院にとって参考となる。また労働時間短縮を効果とし費用(経営負荷)対効果の観点からICT等の導入を評価する方法論を確立できたため、今回対象としていない多様なICT等に対しても今後適用できる。さらに、本研究で確立できた方法は、各種タスクシフト(人への業務移管)を対象として筆者らの先行研究班において確立した費用対効果分析の方法を基礎として拡張させた方法であるため、人への業務移管と情報技術への業務移管の費用対効果を比較評価することが可能であり、この方法論によって、厳しい経営環境下において医療機関は人的資源から物的資源までの広範な資源の配分の最適化を図ることが可能となる。加えて、生成AI関連調査からは、業務効率化手段として期待されつつある生成AI活用に関する基礎的な理解と費用対効果分析の対象としての優先順位の検討ができ、今後の本格的な調査研究のための基盤が得られた。

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202503005C

収支報告書

文献番号
202503005Z