難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201020007A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大西 一功(浜松医科大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 竜三(愛知淑徳大学 医療福祉学部)
  • 大竹 茂樹(金沢大学 医薬保健研究域)
  • 直江 知樹(名古屋大学 医学系研究科)
  • 宮崎 泰司(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 小林 幸夫(国立がん研究センター 中央病院)
  • 松村 到(近畿大学 医学部)
  • 品川 克至(岡山大学 医学部・歯学部附属病院)
  • 宮脇 修一(東京都立大塚病院 血液内科)
  • 薄井 紀子(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 竹内 仁(日本大学 医学部)
  • 伊藤 良和(東京医科大学 医学部)
  • 熱田 由子(名古屋大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
17,536,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、成人白血病に対し遺伝子変異等のスクリーニングにより疾患の層別化を行ない、分子基盤に基づいた新たな標準的治療法の確立を目的とする。
研究方法
本年度は、再発・難治性フィラデルフィア(Ph)染色体陽性急性リンパ性白血病に対してダサチニブ併用化学療法のPh+ALL210R試験プロトコールを策定した。他の白血病の各病型に対しては臨床試験を継続した。本研究はJALSGとの共同研究である。
結果と考察
急性骨髄性白血病 (AML209試験)、急性前骨髄球性白血病(APL204試験)、急性リンパ性白血病(ALL202試験、Ph+ALL208試験)、慢性骨髄性白血病(CML207試験、イマチニブ間歇投与CML-DR1試験、イマチニブ耐性慢性骨髄性白血病CML210R試験)、高リスク骨髄異形成症候群(MDS206試験)、急性骨髄性白血病全体に対する前方向コホート研究(CS-07研究)、および血液疾患に併発する浸襲性糸状菌感染症の実態を把握するJASPER研究はそれぞれ登録継続または終了した。
 長期成績の解析では、急性リンパ性白血病では、第一寛解期における造血幹細胞移植の優位性を各グループの長期データによる臨床決断分析により明らかにした。Ph陽性急性リンパ性白血病ALL202試験では、分子標的薬イマチニブ併用化学療法は造血幹細胞移植に移行できる機会を増やすのみならず、移植自身の成績も改善する事を明らかにした。慢性骨髄性白血病については、1000μg/ml以上の血中濃度維持の臨床的、生物学的重要性をPKおよびPIA解析で確認した。慢性骨髄性白血病CML202試験では観察期間中央値65ヶ月の長期成績の解析を行い、全生存率93%の優れた成績を確認し、同時にイマチニブ用量別のサブ解析により日本人に対して400mgが至適であるが、300mgの用量でも体格の小さい患者では血中濃度が十分維持できる事を示した。
結論
急性骨髄性白血病に対して染色体・遺伝子変異に基づき造血幹細胞移植を含めた層別化治療の有効性と安全性の検討を行い、予後不良症例に対する移植を含む強力な化学療法の開発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201020007B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大西 一功(浜松医科大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 竜三(愛知淑徳大学 医療福祉学部)
  • 大竹 茂樹(金沢大学 医薬保健研究域)
  • 直江 知樹(名古屋大学 医学系研究科)
  • 宮崎 泰司(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 小林 幸夫(国立がん研究センター 中央病院)
  • 松村 到(近畿大学 医学部)
  • 品川 克至(岡山大学 医学部・歯学部附属病院)
  • 宮脇 修一(東京都立大塚病院 血液内科)
  • 薄井 紀子(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 竹内 仁(日本大学 医学部)
  • 伊藤 良和(東京医科大学 医学部)
  • 熱田 由子(名古屋大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、成人白血病に対し遺伝子変異等のスクリーニングにより疾患の層別化を行ない、分子基盤に基づいた新たな標準的治療法の確立を目的とする。
研究方法
急性骨髄性白血病(AML)では、染色体・遺伝子変異に基づき造血幹細胞移植を含めた層別化治療の有効性を検討するAML209試験、急性リンパ性白血病(ALL)ではPh+ALL208IMA試験、ダサチニブ併用化学療法のPh+ALL210R試験、慢性骨髄性白血病ではイマチニブ間歇投与CML-DR1試験、イマチニブ耐性慢性骨髄性白血病CML210R試験、高齢者白血病では高齢者白血病治療GML208試験、支持療法については深在性真菌症の大規模な実態調査であるJASPER研究を策定し開始した。本研究はJALSGとの共同研究である。
結果と考察
急性骨髄性白血病に対しては、AML201試験において高用量ダウノルビシンと標準量イダルビシンの比較によりその同等性を明らかにし、あわせて同種幹細胞移植の再発抑止効果が確認された。また急性前骨髄球性白血病APL97試験では、分子寛解症例に対して強化した維持療法追加の成績は観察のみの群に比べ有意に悪いことが判明し、分子寛解が得られた症例では強化した維持療法は不適切であると結論づけられた。ALL202試験では、分子標的薬イマチニブ併用化学療法は造血幹細胞移植に移行できる機会を増やすのみならず、移植自身の成績も改善する事を明らかにした。慢性骨髄性白血病CML202試験では観察期間中央値65ヶ月の長期成績の解析を行い、全生存率93%の優れた成績を確認した。
結論
急性骨髄性白血病に対して過去20年間のAMLの治療成績の向上は、抗生物質や抗真菌剤の開発が進むと同時に、染色体異常等の予後因子に基づいて初回寛解期に造血幹細胞移植の実施が基本的な戦略となって事によると考えられる。さらに初回治療不応例や再発例の存在は治療成績の向上に対して未だ大きな障害となっており、こうした症例に対しても造血幹細胞移植を積極的に行うことにより予後が改善されることが示された。またPh陽性白血病および慢性骨髄性白血病についてはイマチニブの有効性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201020007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
急性骨髄性白血病において197例の患者検体を用いた51遺伝子の網羅的遺伝子解析により、44遺伝子に505の変異が検出された。そのうち10パーセント以上の患者で認められる5つの遺伝子変異を用いて生存に関する5群の予後リスク分けが可能であることが明らかになった。
臨床的観点からの成果
次世代シーケンサーによるゲノム解析による遺伝子変異および染色体異常を予後因子としたリスク群分けは、今後の臨床試験の策定および移植を含めた治療方針決定に有用と考えられる。今後はゲノム異常のスクリーニングとそれを標的とした新規分子標的薬の開発が望まれる。
ガイドライン等の開発
急性前骨髄球性白血病APL204試験、急性リンパ性白血病ALL202-U試験の2試験は論文化され、そのエビデンスは今年度の造血器腫瘍診療ガイドライン改訂時に採用された。
その他行政的観点からの成果
亜砒酸は海外では急性前骨髄球性白血病の初発例に用いられ優れた成績が報告されている。本邦においても再発例に対する治療成績をもとに初発例に対する亜砒酸の適用拡大の要望書を提出した。
その他のインパクト
平成26年5月24日、25日に成人白血病を主題とした日本血液学会国際シンポジウムを浜松において開催し、米国血液学会、欧州血液学会と合同で白血病におけるゲノム研究、治療研究の発表と討論を行い、現状把握と今後の展望について大きな成果が得られた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
28件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
23件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
16件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shinagawa K,Ohtake S, Miyazaki Y, Ohnishi K,et al.
Tamibarotene as maintenance therapy for acute promyelocytic leukemia: results from a randomized controlled trial.
J Clin Oncol. , 32 (33) , 3729-3735  (2014)
10.1200/JCO.2013.53.3570.
原著論文2
Hayakawa F, Miyawaki S,Ohnishi K, Miyazaki Y, Ohtake S,et al.
Markedly improved outcomes and acceptable toxicity in adolescents and young adults with acute lymphoblastic leukemia following treatment with a pediatric protocol: a phase II study by the Japan Adult Leukemia Study Group.
Blood Cancer J. , 4 (10) , e252-  (2014)
10.1038/bcj.2014.72.
原著論文3
Kihara R, Kiyoi H, Ohtake S, et al.
Comprehensive analysis of genetic alterations and their prognostic impacts in adult acute myeloid leukemia patients.
Leukemia , 28 (8) , 1586-1595  (2014)
10.1038/leu.2014.55.
原著論文4
Iriyama H, Miiyazaki Y, Ohnishi K, et al.
Normal karyotype acute myeloid leukemia with the CD7+ CD15+ CD34+ HLA-DR + immunophenotype is a clinically distinct entity with a favorable outcome.
Ann Hematol , 93 (6) , 957-963  (2014)
原著論文5
Iriyama N, Ohtake S, Naoe T, et al.
CD56 expression is an independent prognostic factor for relapse in acute myeloid leukemia with t(8;21).
Leuk Res. , 37 (9) , 1021-1026  (2013)
原著論文6
Fujita H, Ohnishi K, Miyawaki S, et al.
Role of hematopoietic stem cell transplantation for relapsed acute promyelocytic leukemia: a retrospective analysis of JALSG-APL97.
Cancer Sci. , 104 (10) , 1339-1345  (2013)
原著論文7
Yanada M, Ohtake S, Miyawaki S, et al.
The demarcation between younger and older acute myeloid leukemia patients: a pooled analysis of 3 prospective studies.
Cancer , 119 (18) , 3326-3333  (2013)
原著論文8
Yanada M, Ohtake S, Miyazaki Y, et al.
Phase 2 study of arsenic trioxide followed by autologous hematopoietic cell transplantation for relapsed acute promyelocytic leukemia.
Blood , 121 , 3095-3102  (2013)
原著論文9
Experts in Chronic Myeloid Leukemia
The price of drugs for chronic myeloid leukemia (CML) is a reflection of the unsustainable prices of cancer drugs: from the perspective of a large group of CML experts.
Blood , 121 (22) , 4439-4442  (2013)
原著論文10
Ohnishi K, Takeuchi J,Ohtake S, et al.
Long-term outcome foloowing imatinib therapy for chronic myelogenous leukemia, with assessment of dosage and blood levels:the JALSG CML202 study.
Cancer Sci. , 103 , 1071-1078  (2012)
原著論文11
Wakita A, Miyazaki Y, et al.
Randomized comparison of fixed-schedule versus response-oriented individualized induction therapy and use of ubenimex during and after consolidation therapy for eldery patients with acute myeloid leukemia:the JALSG GML200 study.
Int J Hematol. , 96 (4) , 485-491  (2012)
原著論文12
Ono T, Shinagawa K, Ohtake S, et al.
Long-term outcome and prognostic factors of elderly patients with acute promyelocytic leukemia.
Cancer Sci. , 103 (11) , 1974-1978  (2012)
原著論文13
Ohtake S, Ohnishi K, et al.
Randomized study of induction therapy comparing standard-dose idarubicin with high-dose daunorubicin in adult patients with previously untreated acute myeloid leukemia: JALSG AML201 Study.
Blood , 117 , 2358-2365  (2011)
原著論文14
Miyawaki S, Ohnishi K, et al.
A randomized comparison of four courses of standard-dose multiagent chemotyerapy versus three courses of high-dose cytarabine alone in post-remission therapy for acute myeloid leukemia in adults: the JALSG AML201 study.
Blood , 117 , 2366-2372  (2011)
原著論文15
Mizuta S, Ohnishi K, et al.
Pre-transplant imatinib-based therapy improves the outcome of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for BCR-ABL-positive acute lymphoblastic leukemia.
Leukemia , 25 , 41-47  (2011)
原著論文16
Ono T, Naoe T, Ohno R,et al.
Impact of additional chromosomal abnormalities in patients with acute promyelocytic leukemia: 10-year results of the Japan Adult Leukemia Study Group APL97 study.
Haematologica , 96 , 174-176  (2011)
原著論文17
Ono T, Ohnishi K, et al.
BCR-ABL1 mutations in patients with imatinib-resistant Philadelphia chromosome-positive leukemia by use of the PCR-Invader assay.
Leuk Res. , 35 (5) , 598-603  (2011)
原著論文18
Yoshida M, Ohnishi K, et al.
Analysis of bacteremia/fungemia and pneumonia accompanying acute myelogenous leukemia from 1987 to 2001 in the Japan Adult Leukemia Study Group.
Int J Hematol , 93 , 66-73  (2011)
原著論文19
Kako S, Ohnishi K, et al.
A decision analysis of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation in adult patients with Philadelphia chromosome-negative acute lymphoblastic leukemia in first remission who have an HLA-matched sibling donor.
Leukemia , 25 , 259-265  (2011)
原著論文20
Sakamaki H,Ohno R. et al.
Allogeneic stem cell transplantation versus chemotherapy as post-remission therapy for intermediate or poor risk adult acute myeloid leukemia: results of the JALSG AML97 study.
Int J Hematol , 91 , 284-292  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-28
更新日
2015-10-06

収支報告書

文献番号
201020007Z