がん対策の医療経済的評価に関する研究

文献情報

文献番号
201020005A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策の医療経済的評価に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部)
研究分担者(所属機関)
  • 武村 真治(国立保健医療科学院公衆衛生政策部)
  • 菅原 琢磨(国立保健医療科学院経営科学部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学薬学部薬学科)
  • 石川ベンジャミン光一(国立がんセンターがん対策情報センター情報システム管理課)
  • 福田 敬(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻疫学保健学講座臨床疫学・経済学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策に投入される費用とそれによって産出される効果を測定し、費用と効果の両面からみたがん対策の医療経済的評価を包括的・総合的に行うことによって、がん対策の効率的な推進のあり方を検討する。
研究方法
がん検診(子宮頸がん、胃がん、大腸がん、乳がん)の受診率の向上の長期的影響を評価するために、検診受診率が現状から50%に増加した場合について、40歳人口コホートを64歳まで追跡して累積される費用(検診・精密検査の費用、医療費)と効果(延べ生存人年)の増分を推計した。また質調整生存年(QALYs:Quality-Adjusted Life Years)を用いたがん検診の費用効果分析、がん検診・健診サービスの提供機関における積極的かつ先進的な取り組み事例の抽出・分析などを実施した。
結果と考察
いずれのがん検診も、受診率の向上によって、延べ生存人年の増加、検診・精密検査の費用の増加、医療費の減少、総費用の増加の傾向がみられた。1人の国民の生存年数を1年延長させるために要する費用(増分費用効果比)は、子宮頸がん検診で980.2万円、胃がん検診で686.4万円、大腸がん検診で181.9万円、乳がん検診で499.0万円と推計された。
医療費を除く検診費用を費用、質調整生存年を効果とした増分費用効果比はいずれのがん検診も500万円/QALY未満であり、一般に費用対効果が良好と判断される結果となった。
検診・健診事業の経営管理上の課題として、健保財政悪化による影響、特定健診・保健指導等による受診機会の減少、検査技術・精度の課題、医師不足、稼働率の季節性が抽出され、特に、深刻な医師(女性医師)不足の問題、検診・健診の精度管理の問題、需要の平準化を含めた受診インセンティブの賦与に関しては自治体や国の対応が必要であることが示唆された。
結論
がん検診の受診率が向上することによって、早期発見のがん患者の増加によって延べ生存人年が増加すること、受診者数の増加によって検診・精密検査の費用が増加すること、相対的に医療費の低い早期発見のがん患者の割合が増加することによって医療費が減少する可能性があること、が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201020005B
報告書区分
総合
研究課題名
がん対策の医療経済的評価に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部)
研究分担者(所属機関)
  • 武村 真治(国立保健医療科学院公衆衛生政策部)
  • 菅原 琢磨(国立保健医療科学院経営科学部)
  • 石川ベンジャミン光一(国立がんセンターがん対策情報センター情報システム管理課システム開発室)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学薬学部薬学科)
  • 福田 敬(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策に投入される費用とそれによって産出される効果を測定し、費用と効果の両面からみたがん対策の医療経済的評価を包括的・総合的に行うことによって、がん対策の効率的な推進のあり方を検討する。
研究方法
がん検診の医療経済的連関・遷移モデルの構築、がん検診の受診率の向上が費用と効果に及ぼす短期的影響(人口全体の1年間の費用(検診・精密検査の費用、医療費)と効果(延べ生存人年))及び長期的影響(40歳人口コホートを64歳まで追跡して累積される費用と効果)の評価、がんの疾病費用の推計、がん対策の効果の関連指標のデータベースの構築、がんのQOL評価のための効用値の測定ツールの開発、がん検診実施機関の経営実態の分析などを実施した。
結果と考察
平成17年度のがんの疾病費用は、直接費用(医療費)が2.57兆円、間接費用が7.10兆円であった。また平成11、14、17年度の経年変化では、直接費用は増加していたが、間接費用、特に死亡費用(死亡によって喪失した将来所得)が減少傾向にあり、がんの予防等の対策の推進が死亡による経済的損失を削減できる可能性があることが示唆された。
受診率が10%増加することによる短期的な効果と費用の増加は、子宮頸がん検診で約0.98万人年、約290億円、胃がん検診で約1.20万人年と約800億円、大腸がん検診で約1.40万人年と約300億円、乳がん検診で約1.57万人年と約450億円であった。
受診率が現状から50%に増加することによる長期的な効果と費用の増加は、子宮頸がん検診で約0.26万人年と約254億円、胃がん検診で約1.60万人年と約1,128億円、大腸がん検診で約1.25万人年と約228億円、乳がん検診で約0.84万人年と約419億円であった。
検診・健診事業の経営管理上の課題として、健保財政悪化による影響、特定健診・保健指導等による受診機会の減少、検査技術・精度の課題、医師不足、稼働率の季節性が抽出され、医師不足、検診・健診の精度管理、需要の平準化を含めた受診インセンティブの賦与に関しては自治体や国の対応の必要性が示唆された。
結論
がん検診の受診率の向上の影響として、早期発見・早期治療によって生存年数が増加すること、受診者数の増加によって検診・精密検査の費用が増加すること、医療費削減の効果はあるもののその大きさは相対的に小さいことが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201020005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん検診の受診率の向上の影響として、早期発見・早期治療によって生存年数が増加すること、受診者数の増加によって検診・精密検査の費用が増加すること、医療費削減の効果はあるもののその大きさは相対的に小さいことが示唆され、がん検診による費用の変化だけでなく、効果の変化も含めて、増加した費用と効果の比、つまり増分費用効果比を検討することが重要であることを示した。
臨床的観点からの成果
開発した「医療経済的連関・遷移モデル」を用いて、国・都道府県のがんに関する現状値(がんのリスク・罹患状況、がん対策の実施状況等)を入力することによって、がん対策の費用の将来予測、たばこ対策、がん検診等のがん対策による医療費等の削減と健康状態の改善の予測等のシミュレーションに活用でき、がん対策の効率的な推進のための具体的な方策を検討することが可能となる。また個別の対策・プログラムだけでなく、複数の対策・プログラムの組み合わせ、及びがん対策全体の医療経済的評価を行うことが可能となる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
がん検診の受診率の向上によって費用(検診・精密検査の費用)と効果(生存年数)がともに増加することが示されたが、増加した費用と効果の比、つまり増分費用効果比をどこまで許容するか、などについて国民全体で議論することによって、これまでのがん対策の成果と今後のがん対策の重要性に関して、経済的側面から国民や関係機関の理解を促進することが可能になる。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020005Z