ICD-11の適用を通じて我が国の死因・疾病統計の向上を目指すための研究

文献情報

文献番号
202502001A
報告書区分
総括
研究課題名
ICD-11の適用を通じて我が国の死因・疾病統計の向上を目指すための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AB1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
  • 篠原 恵美子(山田 恵美子)(東京大学 医学部附属病院)
  • 大津 唯(埼玉大学 大学院人文社会科学研究科)
  • 丸井 英二(順天堂大学 医学部)
  • 木下 博之(科学警察研究所)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 奥山 絢子(聖路加国際大学 看護学研究科)
  • 成田 瑞(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所行動医学研究部)
  • 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 高橋 秀人(帝京平成大学 薬学部)
  • 小川 俊夫(学校法人常翔学園 摂南大学 農学部食品栄養学科公衆衛生学教室)
  • 今井 健(東京大学 大学院医学系研究科 疾患生命工学センター)
  • 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,005,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICD-11(国際疾病分類第11版)は2019年5月の世界保健総会で採択され、2022年1月に発効した。日本では、2024年7月にICD-11の和訳案のとりまとめ、9月に告示範囲の決定、2025年5月に分類表(基本、疾病、死因)の決定が行われ、2026年1月19日に総務大臣により2027(令和9)年1月1日からの施行が告示された。
本研究はICD-11の告示案作成に資する死因・疾病分類に関する研究を行い、並行して、近年の疾病・死亡構造を適切に把握できる統計の在り方について、基礎的な検討・分析を行うことを目的とした。
研究方法
1. 新たな死因・疾病分類表の提案:
①ICD-11に対応した死因分類、疾病分類案を作成する。
②ICD-9からICD-10の移行期の統計断絶を解消し死因別死亡統計の再構築を行う。
③長期的、国際的に整合的な死因分類を作成する。
④WHO 製表分類と基本分類表、ICD10-11マッピングテーブルを組み合わせた手法(マクロアプローチ)と、大規模言語モデル(LLM)を用いた自由入力病名のICD-11コーディングシステムを用いた病名ベースの解析手法(ミクロアプローチ)の双方にて、新たな疾病分類表と死因分類表を用いたわが国の統計に対する影響について分析した。
⑤標準病名マスターとICD-11MMS並びにFoundationへの対応データベースの作成・更新を継続した。
2. 課題のある死因のICD-11枠組みにおける適切な把握手法の提案:
①老衰と死亡診断書に記載することに関する質的調査およびその分析を行う。
②新型コロナウイルス感染症の複合死因分析を行う。
③外因死に関する分析を行う。
3. ICD-11枠組みにおける適切な疾病分類の検討:
①NDBデータを用い、レセプトによる疾病量を患者調査と比較する。
②DPCデータを教師データとして医科レセプトの主疾患を予測する。
③全国がん登録データを用い、ICD-11適用によるがん罹患集計への影響を検討する。④精神・神経系疾患について、ICD-11で新たに追加されたゲーム行動症や関連する問題行動の病態生理を探索する。
4. ICD-11 V章を生かした生活機能・介護の統計分類の検討:
①生活機能評価の共通尺度開発および大規模介護データベースへの適用を検証する。
②「生活のしづらさ調査」を用い、難病・精神障害と生活機能の関連を明らかにする。
5. 国際動向の把握と国内外への発信: 1~4の研究実施および結果の公表・周知のために、国内外の学会、国際会議で情報収集・意見発信を行い、研究成果を公表する。
結果と考察
 本研究で作成したICD-11に対応した死因分類案、疾病分類案が告示内容に概ね反映された。ICD改訂時-10適用時およびそれ以外の死因統計の不連続性を解消した死因統計補正データをHuman Cause of Death Databaseに掲載すると共に、1875年からの衛生局死因統計および1899年からの人口動態統計の死因統計にも適用可能な死因長期推移分類を作成し、年齢調整死亡率を全国では1950年以降、都道府県では1975年以降について算定した。死因統計について、老衰記載に関する質的調査を行い、その分析を通じて、「死亡診断書記入マニュアル」への追加記載文章案を作成した。さらに死亡個票データの正規化・コード化を行い、新型コロナウイルス感染症の複合死因分析を行った。疾病統計について、NDBデータを用い主疾患解析を行うとともに、全国がん登録データを用いたがん罹患集計のICD-11適用による影響の分析、ICD-11で新たに収載されるゲーム行動症に関する分析を行った。生活のしづらさ調査データ等を用い、ICD-11 V章、WHODASを用いて共通尺度開発、および難病群・精神障害群の生活機能との対応付けとV章マッピングを行った。これらの研究成果は、WHO-FIC、UNESCAPを含めた国連会合、国際人口学会、国際がん学会、国際疫学会等で報告・発信を行った。
 ICD-11導入は、韓国のように既存の診療報酬システムとの強固な紐づけが移行を阻む国と、ブータンのようにデジタル検索機能を活かし死因統計を飛躍させる国など様々である。WHOはICDの利用について、自動システムによる医師の誘導を禁じるが、日本の死亡診断書記入の課題を見てもデジタル化の検討が不可避であると考えられる。
 
結論
ICD-11に対応した死因・疾病分類表案を作成したが、それが実際のデータでどのように集計されるかは、テキストデータをICD-11基本分類にどう変換していくか、という点に依存する。新たに設けられた分類や、整理された分類などの特徴を理解しつつ、ICD-10から11への移行に関する情報、およびICD-11の特徴を生かした、疾病・死因情報のさらなる分析を行うことが求められる。

公開日・更新日

公開日
2026-06-23
更新日
2026-06-29

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-06-23
更新日
2026-07-03

文献情報

文献番号
202502001B
報告書区分
総合
研究課題名
ICD-11の適用を通じて我が国の死因・疾病統計の向上を目指すための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AB1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
  • 篠原 恵美子(山田 恵美子)(東京大学 医学部附属病院)
  • 大津 唯(埼玉大学 大学院人文社会科学研究科)
  • 丸井 英二(順天堂大学 医学部)
  • 木下 博之(科学警察研究所)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 奥山 絢子(聖路加国際大学看護学研究科)
  • 成田 瑞(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所行動医学研究部)
  • 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 高橋 秀人(帝京平成大学 薬学部)
  • 小川 俊夫(学校法人常翔学園 摂南大学 農学部食品栄養学科公衆衛生学教室)
  • 今井 健(東京大学 大学院医学系研究科 疾患生命工学センター)
  • 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICD-11(国際疾病分類第11版)は2019年5月に世界保健総会で採択され、2022年1月に発効した。日本では、2024年7月にICD-11の和訳案のとりまとめ、9月に告示範囲の決定、2025年5月に分類表(基本、疾病、死因)の決定が行われ、2026年1月19日に総務大臣により2027(令和9)年1月1日からの施行が告示された。本研究はICD-11の告示案作成に資する死因・疾病分類に関する研究を行い、並行して、近年の疾病・死亡構造を適切に把握できる統計の在り方について、基礎的な検討・分析を行うことを目的とした。
研究方法
本研究は、以下の5つの内容により構成される。
1. 新たな死因・疾病分類表の提案1. 新たな死因・疾病分類表の提案:
①ICD-11に対応した死因分類、疾病分類案の作成。
②分類表作成のために、心不全の分類についての詳細検討。
③分類表作成のために、血液がんの分類の詳細検討。
④ICD移行による統計断絶を解消した死因別死亡統計の再構築。
⑤長期的、国際的に整合的な長期推移分類の作成。
⑥マクロ・ミクロアプローチにより新たな疾病分類表と死因分類表の統計に対する影響分析。
⑦標準病名マスターとICD-11MMS、Foundationの対応データベースの作成。
2. 課題のある死因のICD-11枠組みにおける適切な把握手法の提案:
①老衰と死亡診断書に記載することに関する質的調査およびその分析に基づく提案。
②死亡個票データを正規化・コード化し、新型コロナウイルス感染症の複合死因の分析。
③外因死に関する分析。
3. ICD-11枠組みにおける適切な疾病分類の検討:
①NDBサンプリングデータセットを用い、入院と外来について、傷病コード、ICD-10、ICD-11に対応した疾病分類別の患者数(主傷病数)と総傷病数の集計・分析。
②DPCデータを教師データとして医科レセプトの主疾患を予測するモデルの検討。
③全国がん登録データを用い、ICD-11適用によるがん罹患集計への影響の検討。
④精神・神経系疾患について、ICD-11で変更・追加された抑うつ症群、不安又は恐怖関連症群、ゲーム行動症について病態生理の探索。
4. ICD-11 V章を生かした生活機能・介護の統計分類の検討:
①Raschモデルを用いたICD-11 V章の生活機能評価の標準化を通じた生活機能と疾病情報の連結に資する基盤整備。
②「生活のしづらさ調査」を用いた、疾病(難病・精神疾患)とICF・ICD-11V章の枠組による生活機能のマッピング。
5. 国際動向の把握と国内外への発信: 1~4の研究実施および結果の公表・周知のために、国内外の学会、国際会議で情報収集・意見発信、研究成果の公表。
結果と考察
 上記「研究方法」に示した1~5を執り行った。
 2027年1月からのICD-11適用に向け、国内では統計担当部局による利用段階に入っている。ICDの変更は、日本においてはレセプト実務への直接的な影響は避けられているが、電子化のための素材活用や疾病・死因情報のデジタル化は不可避である。
 死因統計では、過去の分類移行に伴う統計の不連続性を補正し、国際的に比較可能で、長期的に整合性のある死因統計を示すことができた。しかし、老衰のように国際比較が難しい現状や、死亡診断書の正確性の問題もある。今後は、死亡個票のみならず、NDBや関連統計を用いた多角的な分析が必要である。
 疾病統計では、日本の既存分類や活用実績を考慮し、中分類を基にした一つの分類が提案された。NDBの活用により、速報的な情報や複数疾患を捉えた総傷病数の提示など、ニーズに応じた疾病統計の公表は十分可能である。ただし、そのためには標準病名とICD-11の対応作業の完了が不可欠である。がん、精神疾患等、ICD-11分類を用い、新たな疾病構造に対応した分析が可能になる。
 ICD-11 V章を用いることで介護や難病と生活機能の連携を明確化できる可能性があり、疾病と生活機能を定量的に接続して生活の質を高める枠組みの構築が求められる。
結論
ICD-11において新たに設けられた分類や、整理された分類などの特徴を理解しつつ、ICD-10から11への移行に関する情報、およびICD-11の特徴を生かした、疾病・死因統計の向上を図るための研究を今後も継続的に行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-06-23
更新日
2026-06-29

行政効果報告

文献番号
202502001C

収支報告書

文献番号
202502001Z