文献情報
文献番号
199700773A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ大流行に備えた危機管理対策の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
田代 眞人(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
- 喜田宏(北海道大学)
- 中島捷久(名古屋市立大学)
- 中島節子(国立公衆衛生院)
- 中村喜代人(山形大学医学部)
- 鈴木康雄(静岡県立大学)
- 小田切孝人(金沢医科大学)
- 黒田和道(大阪薬科大学)
- 水田克巳(国立仙台病院)
- 菅谷憲夫(日本鋼管病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
A型インフルエンザは、数十年に一度「新型」ウイルスが出現して世界的な大流行を起こす。近くこの様な事態が起こることが想定されるが、この場合には、近年の生活環境の変化によって短期間に集中して感染が拡がり、未曾有の大被害と大きな社会的混乱が生じることが予想される。欧米ではインフルエンザ大流行に対する国家レベルでの危機管理対策の策定・実施が進んでいるが、わが国ではワクチン摂取率が極端に低下するなどインフルエンザに対する危機意識が低下しており、大流行の際には健康問題を含めて、社会的大混乱が生じることが危惧される。そこで、インフルエンザ対策の再構築を目的として、それに資する基礎データを収集するための調査研究と対策の方向性を検討するための基礎研究を行った。
研究方法
総合的インフルエンザ対策の中で、新型インフルエンザによる大流行に対する準備体制と対応に関して、・流行規模、被害状況、社会的影響等の予測とシュミレーション、・各シナリオにおける被害の最小化を図るための準備と対応、及び社会危機管理への対応策の策定、・大流行出現に関与するウイルス側及び生体側要因の解明と大流行予測方法の確立、の3点から調査研究と基礎研究を行った。それを基に、平成9年度に設置された厚生省新型インフルエンザ対策検討会において様々な方向から検討がなされ、10月24日に報告書としてまとめられた。更に、この報告書の行動指針に基づいて、平成9年5月に香港で出現した新型インフルエンザH5N1型に対する対応が図られ、情報収集、技術支援、ワクチン開発の面で国際的な貢献を果たすとともに、国内に於いても大きな混乱を避けるための行動を検討した。
結果と考察
1)情報収集・解析体制の確立。新型インフルエンザ大流行に対するわが国の準備体制と対応策策定の参考として、米国、英国、仏国、ベルギーの新型インフルエンザ対策計画を検討した。現在日本語に翻訳中であり、今後の検討材料として広く役立てたい。また、国内外のサーベイランス等の情報の共有体制を検討した。2)大流行シュミレーションと流行規模・被害の算定。新型ウイルス出現と大流行に関する様々なシナリオを作製し、各シナリオ毎の健康被害、社会・経済活動への影響をシュミレーションによって予測検討し、対応を検討した。3)大流行被害を最小限に留めるための政策検討。大流行による健康被害・社会的影響を最小限に留めるために、各シナリオに応じて、ワクチン政策、抗ウイルス剤の認可を含めた実行可能な準備体制と対応体制および健康危機・社会危機管理のための方策を検討した。4)新型インフルエンザ対策指針の作製。以上の結果を基に、厚生省新型インフルエンザ対策検討会で検討を重ね、わが国のインフルエンザ大流行に備えた危機管理体制の在り方を報告書としてまとめた。5)新型ウイルス出現と大流行の機序の解明。新型ウイルス出現機構と大流行の科学的予測及び有効なワクチンの設計・作製方法の確立及び抗ウイルス剤の開発を目的として、これらに必要な基礎研究を進めた。6)香港における新型H5N1ウイルスに対する対応。平成9年5月から12月にかけて香港で起こった新型H5N1インフルエンザに対応するために、上記報告書の方針に則り、情報収集、技術支援、ワクチン開発の3点から対応した。今後、大流行対策における具体的な行動マニュアルの策定と、それに沿った事前の準備体制の確立を継続して早急に進める必要がある。
結論
公開日・更新日
公開日
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更新日
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