文献情報
文献番号
202501012A
報告書区分
総括
研究課題名
分娩取扱施設における出産に係る費用構造の把握のための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA2005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
研究分担者(所属機関)
- 片岡 弥恵子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
- 増澤 祐子(新潟県立看護大学 看護学部)
- 川村 顕(早稲田大学 人間科学学術院)
- 関沢 明彦(学校法人昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
22,954,000円
研究者交替、所属機関変更
令和7年度においては、全国調査で収集したデータの整備・解析体制の強化、およびタイムスタディ調査に係る画像解析等を実施するため、川村顕氏(早稲田大学・人間科学学術院・教授)を分担研究者として追加した。川村氏には、主として全国調査データの整備・解析およびタイムスタディ調査に関連する画像解析に参画頂いた。また、妊婦健康診査(妊婦健診)費用に関する追加調査の実施に伴い、調査項目の精査およびデータ解析体制を強化するため、関沢明彦氏(昭和医科大学・医学部産婦人科学講座・教授)を分担研究者として追加した。関沢氏には、主として妊婦健診に関する追加調査項目の確定、調査設計に対する専門的助言、および収集データの解析に参画頂いた。これにより、妊婦健診費用に関する分析の精度向上および、妊娠期を含めた費用構造分析の充実を図った。
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、「こども未来戦略方針」(令和5年閣議決定)において示された出産費用の見える化および将来的な正常分娩の保険適用の検討に資する基礎資料の整備を目的として、分娩取扱施設における出産に係る費用構造およびその形成要因を多面的に把握することを目的として実施した。特に、医療行為に係る費用のみならず、人的資源投入、施設構造、付帯サービスおよび経営実態を含めた統合的な費用構造の把握を行うとともに、妊婦健康診査(以下、妊婦健診)の費用を含めた妊娠期から産後に至る一連の費用負担の実態を明らかにすることを目的とした。
研究方法
令和6年度には、全国の分娩取扱施設を対象に、施設構造および医療提供体制を把握する悉皆調査(A票)と、患者単位の診療内容、人的資源投入、ならびに収益・費用・財務構造を把握するサンプル調査(B票)を実施した。さらに令和7年度には、フォローアップ調査によりデータの精査および補完を行うとともに、妊婦健診費用に関する追加調査を実施した。加えて、分娩過程における人的資源投入の実態把握に向け、修正デルファイ法を用いた観察項目の検討を行い、分娩期における医療行為、観察、ケアおよび業務を対象とする102項目の必須観察項目を整備した。これに基づき、他計式タイムスタディ調査を実施した。
結果と考察
分析の結果、分娩取扱施設は病院、診療所、助産所の3類型において明確な機能分化が存在し、それぞれが異なる医療提供体制および対象症例を有していることが確認された。病院では高リスク分娩に対応する高度医療機能を担い、診療所では標準的分娩管理とサービス提供を組み合わせた体制、助産所では低リスク分娩を対象とした助産師主導の継続的ケアが提供されていた。
出産費用については、医療行為に係る費用に加え、室料差額や付帯サービスといった非医療的要素が重要な役割を果たしており、施設類型ごとに異なる費用構造が形成されていることが明らかとなった。また、診療所では無痛分娩に係る価格設定が相対的に高い傾向がみられた。収益・費用および財務構造の分析からは、病院では固定費負担の大きさに起因する赤字傾向、診療所では収支均衡、助産所では低コスト構造に基づく黒字傾向が確認され、費用構造と経営構造が密接に関連していることが示された。加えて、病院では高度医療を支える設備投資および借入に依存した資本集約型構造、助産所では低資本・低負債の軽量な財務構造が確認され、施設類型ごとに異なる資本構造が存在していた。
一方、タイムスタディ調査の結果から、分娩は助産師を中心とした長時間かつ継続的なケアを基盤としつつ、産婦人科医師や新生児科医師等が必要に応じて専門的介入を行う多職種協働構造によって成立していることが明らかとなった。特に、助産師の関与は時間的にも業務範囲においても最も大きく、分娩前後を通じたケアの中核を担っていることが確認された。
加えて、妊婦健診費用に関する分析から、医療機関間および地域間で自己負担額にばらつきが存在し、公費負担水準および医療機関の価格設定がその差異に影響していることが示唆された。特に、関東甲信越地域では自己負担額が相対的に高い傾向が確認された。一方で、「望ましい基準」に含まれる費用とそれ以外の費用の区分が必ずしも明確ではなく、費用の比較可能性に課題があることも明らかとなった。このことは、出産に係る経済的負担を分娩時の費用に限定せず、妊娠期から産後に至る一連の費用として捉える必要性を示すものである。
出産費用については、医療行為に係る費用に加え、室料差額や付帯サービスといった非医療的要素が重要な役割を果たしており、施設類型ごとに異なる費用構造が形成されていることが明らかとなった。また、診療所では無痛分娩に係る価格設定が相対的に高い傾向がみられた。収益・費用および財務構造の分析からは、病院では固定費負担の大きさに起因する赤字傾向、診療所では収支均衡、助産所では低コスト構造に基づく黒字傾向が確認され、費用構造と経営構造が密接に関連していることが示された。加えて、病院では高度医療を支える設備投資および借入に依存した資本集約型構造、助産所では低資本・低負債の軽量な財務構造が確認され、施設類型ごとに異なる資本構造が存在していた。
一方、タイムスタディ調査の結果から、分娩は助産師を中心とした長時間かつ継続的なケアを基盤としつつ、産婦人科医師や新生児科医師等が必要に応じて専門的介入を行う多職種協働構造によって成立していることが明らかとなった。特に、助産師の関与は時間的にも業務範囲においても最も大きく、分娩前後を通じたケアの中核を担っていることが確認された。
加えて、妊婦健診費用に関する分析から、医療機関間および地域間で自己負担額にばらつきが存在し、公費負担水準および医療機関の価格設定がその差異に影響していることが示唆された。特に、関東甲信越地域では自己負担額が相対的に高い傾向が確認された。一方で、「望ましい基準」に含まれる費用とそれ以外の費用の区分が必ずしも明確ではなく、費用の比較可能性に課題があることも明らかとなった。このことは、出産に係る経済的負担を分娩時の費用に限定せず、妊娠期から産後に至る一連の費用として捉える必要性を示すものである。
結論
以上の結果から、出産費用は医療内容、対象症例のリスク水準、人的資源投入、資本構造およびサービス要素等が複合的に作用して形成されており、単一の指標による比較では十分に評価できないことが明らかとなった。なお、本研究では、フォローアップ調査を通じて収益・費用・資産・負債等に関するデータの精査および補完を行うことで、費用構造分析に用いるデータ基盤の信頼性向上を図った。また、修正デルファイ法を用いて分娩過程における観察項目を標準化し、人的資源投入を体系的に把握するための分析枠組みを構築した。
以上により、本研究は、出産費用の構造的理解を深化させるとともに、人的資源投入を含めた包括的な費用評価の必要性を提示し、出産費用の見える化や費用の比較可能性の向上に資する基礎的エビデンスを提供するものである。
以上により、本研究は、出産費用の構造的理解を深化させるとともに、人的資源投入を含めた包括的な費用評価の必要性を提示し、出産費用の見える化や費用の比較可能性の向上に資する基礎的エビデンスを提供するものである。
公開日・更新日
公開日
2026-06-22
更新日
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