出産育児一時金の見直しを踏まえた出産費用の分析並びに産科医療機関等の適切な選択に資する情報提供の実施及び効果検証のための研究

文献情報

文献番号
202501009A
報告書区分
総括
研究課題名
出産育児一時金の見直しを踏まえた出産費用の分析並びに産科医療機関等の適切な選択に資する情報提供の実施及び効果検証のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2007
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
田倉 智之(日本大学 医学部 社会医学系 医療管理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部看護学科/大学院スポーツ・健康科学研究科予防医学)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,241,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 社会保障審議会医療保険部会における議論の整理(令和4年12月15日)や全世代型社会保障構築会議の報告書(令和4年12月16日)に基づき、令和5年4月の出産育児一時金の見直しを踏まえ、支給額の引き上げ後の令和8年を目途に行う出産育児一時金の在り方の議論が進んでいる。以上を踏まえ、本研究は、見える化と引き上げが妊産婦等の受療行動や分娩施設等の運営行動にどのような影響を及ぼすのか明らかにし、出産育児一時金の制度や少子化対策等の周辺政策の将来の議論に資することを目的とした。        
 具体的には、出産費用の「見える化」に伴い、妊産婦のニーズや不満、さらには施設経営の課題やニーズ等がどのように変化をするのか、考証を行なった。また、本研究は、調査の負担や分析の期間等の限界を背景に、分娩サービスの費用構造を通常の研究アプローチ(原価計算)ではなく、既存の公的統計データ等からモデリング等の手法も応用しつつ、一定の条件下で開発を試行した。
研究方法
 本年度は、前年度までの研究成果を踏まえつつ、出産費用の「見える化」の効果検証を実施した。妊産婦の視点による評価は、見える化前である過年度の研究結果とも比較をしつつ、アンケート調査(サンプル数は1,000件:全体回収5,000件の一部解析)にて見える化の各項目の影響(新たなニーズや課題の把握も含む)を整理した。なお、サンプリングの構造は、日本の代表性を論じられるように、地域(都道府県)と年齢(5歳帯)の条件で、妊産婦の人口構成で補正された。
 併せて、出産費用の新たな算定方法についても試行的な開発を実施した。本研究では、過年度で議論を進めた内容にそって、日本全体の医療資源消費(マクロ的コスト)から、1件の出産費用を算定するアプローチを検討した。具体的には、1)日本全体の分娩関連のマクロ的コストを整理する、2)マクロ的コストは、統計資料データから算定する、3)マクロ的コストから原価計算方式(モデル計算)で1件の出産費用を推計する、4)結果の不確実性は、シミュレーション(モンテカルロ、確率感度)で対応する、という方針とした
 以上を踏まえつつ、「見える化」の普及度や各課題を整理した。なお、本研究は、日本産科医会や外部有識者等の協力のもと、見える化の各項目の影響(ニーズや課題の把握も含む)も整理した。
結果と考察
 本研究の結果、2026年2月時点の当調査において、調査対象の妊産婦の中で、「出産なび」サイトを知っている人は約33%、サイトの利用者は約14%であることが明らかとなった。また、情報収集の程度は、サイト利用群のほうが総じて高かったほか、施設機能やアクセス、説明を除く費用に関する情報収集への満足度が高かった。以上により、妊婦にとって「出産なび」が出産費用等の情報へアクセスするツールとして、一定程度の認知があり活用されており、出産に関わる各意思決定の支援において、貢献していることが示唆された。さらに、「出産なび」を利用した層は、文字識別や内容読解の情報リテラシーについて2極化の傾向にもあるなか、健康関連活動における情報選択について有意に良い傾向にあった。
 また、出産費用の算出手法の開発を推進した結果、各医療施設の調査負担を軽減しつつ、日本全体の分娩資源(費用)を網羅し、かつ日本全体の診療実績(実態)を反映した、日本全体の分娩費用の代表性・悉皆性を担保した算定が一定水準で可能と推察された。具体的には、本算定において、最初に人件費を基軸に我が国の「出産全体の費用」を算出し、その結果と医療施設の「経費科目構成の割合」を応用して、各経費科目の費用および全体の出産費用を推定する手順とするモデルを構築した。その出産費用は、分娩行為自体と付帯サービスに分類(分娩費用と総出産費)すると同時に、施設特性別(周産期母子医療センター指定の有無)に整理を行った。
結論
 妊婦にとって「出産なび」が出産費用等の情報へアクセスするツールとして、一定程度の認知があり活用されており、出産に関わる各意思決定の支援において、貢献していることが示唆された。また、開発された出産費用の算出手法は、日本全体の分娩費用の代表性・悉皆性を担保した算定が一定水準で可能と推察された。

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
202501009B
報告書区分
総合
研究課題名
出産育児一時金の見直しを踏まえた出産費用の分析並びに産科医療機関等の適切な選択に資する情報提供の実施及び効果検証のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2007
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
田倉 智之(日本大学 医学部 社会医学系 医療管理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部看護学科/大学院スポーツ・健康科学研究科予防医学)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
 研究代表者の所属施設は、東京大学大学院医学系研究科から日本大学医学部医療管理学分野に、令和7年度より変更がなされた。

研究報告書(概要版)

研究目的
 社会保障審議会医療保険部会における議論の整理(令和4年12月15日)や全世代型社会保障構築会議の報告書(令和4年12月16日)に基づき、令和5年4月の出産育児一時金の見直しを踏まえ、支給額の引き上げ後の令和8年を目途に行う出産育児一時金の在り方の議論が進んできている。
 以上を踏まえ、本研究は、出産費用等の見える化と引き上げ等が妊産婦等の受療行動や分娩施設等の運営行動にどのような影響を及ぼすのか明らかにし、出産育児一時金の制度や少子化対策等の周辺政策の将来の議論に資することを目的とする。
研究方法
 本研究は、(1)見える化の内容・方法の検討、(2)妊産婦を対象とした意識調査、(3)分娩施設の情報提供に関わる調査、(4)見える化(出産なび)の内容検証、(5)出産費用の新たな算定方法の検討、の5つの項目から構成された。
 上記の課題(2)(4)は、妊産婦の行動実態や意識水準の集約を中心に行った。当調査は、全国の妊産婦を対象に、既存のパネルを利用したWEB調査によるアンケート方式で実施した。調査対象者は、「出産なび」が令和6年5月末に運用開始し、また令和6年1月中に更新したため、妊娠中または令和6年6月から令和7年12月までに出産した全国の産婦を目標対象とした。調査時期は、令和6年9月から令和8年2月を予定した(更新効果の評価も含む)。なお当調査のコホートの整備においては、過去の同様な研究の傾向を考慮しつつ、地域(都道府県)、年齢(5歳帯)の条件下で我が国の妊産婦の人口構成にそって補正を行い、偏りの軽減とともに一定の代表性等を担保した。
 上記の課題(5)は、各医療機関からのデータ集約による算定は、幾つかの制約[例:①医療機関に対する調査(原価計算)は協力負担等が大きい,②算定結果の精度は回収(回答)率に依存し不確実性がある,③政策的な議論はマクロ的視点(財政・環境)も必要になる,④収集したデータと算定された結果の検証(実体)が難しい]があり、それらを背景に他の算定手法の検討(出産コストのマクロ的な算定手法)も望まれた。以上を踏まえ、出産費用の分析に向けた事前研究として、マクロの医療経済学的な視点と平準的な医療資源配分の概念から、1件の出産費用を算出する基礎的な分析アプローチを選択した。
結果と考察
 妊産婦に対する調査の結果、出産育児一時金の増額前の時期と比べて、出産費用関連の情報への関心や重要度がやや低下し、出産の県外流出は低減する傾向が認められた。分娩施設の情報提供に関わる調査の結果、インターネットが中心であり、分娩の料金情報の提供が6割、その解説が約4割であった。
 見える化の項目は、妊産婦の関心が高い情報を中心に、見える化のホームページ(HP)における情報提供にあたっての留意点(検索負担や内容理解等)や、データ提供を行なう分娩施設の運営状況等にも配慮をしつつ整理がなされた。その「見える化」の項目は、「分娩施設の概要」「助産ケア」「付帯サービス」「直接支払制度の請求書データからの費用等の概要」「その他」から構成された。
 これらを踏まえて構築された「出産なび」は、出産費用を把握する時期が利用していない者と比較して有意に早まり、妊婦にとって出産費用等の情報へアクセスするツールとして活用されうることが示唆された。具体的には、2024年9月時点の当調査において、調査対象の妊産婦の中で、「出産なび」サイトを知っている人は約36%、サイトの利用者は約18%であった。「出産なび」サイトを利用することにより、出産費用を把握する時期が利用していない者と比較して有意に早まった(p<0.001)。さらに、情報収集の程度は、サイト利用群のほうが総じて高かった(p<0.01)ほか、費用に関する情報収集への満足度(p<0.01)や、出産費用が妥当と感じる割合も高かった(p<0.05)。
 また、出産費用の新たな算出手法の開発を推進した結果、各医療施設の調査負担を軽減しつつ、日本全体の分娩資源(費用)を網羅し、かつ日本全体の診療実績(実態)を反映した、我が国における分娩費用の代表性・悉皆性を担保した算定が、一定の範囲で可能と推察された。この新たに開発された手法によって算出された出産費用は、一定の水準範囲に収斂する傾向にあった。
結論
 これらの研究成果は、妊産婦が適切に医療機関等を選択できるようになるための検討に資するうえ、医療機関の安定経営を促進させるための検討にも貢献すると考えられた。今後は、得られた成果を踏まえつつ、当該テーマについてさらなるデータの集積とともに議論の深耕が望まれる。特に、出産なびサイトは、さらなる分析推進と機能向上の継続が肝要と考えられる。また、新たに開発した悉皆性と代表性を担保する手法は、出産費用の上限水準を示唆するため、今後、それらも考慮したあり方の議論が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202501009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
価格設定の基礎となる医療資源消費の観察は、医療施設ごとのアプローチによる費用算出において多くの制約があり困難である。マクロアプローチによる原価計算として、新たに開発された出産費用の算出手法は、日本全体の分娩費用の代表性・悉皆性を担保した算定が一定水準で可能と推察された。得られた知見は、今後の出産費用に関わる学術的な議論への貢献が期待される。
臨床的観点からの成果
妊産婦の罹患状況と「施設機能」の重要視の度合いを整理したところ、精神疾病、産婦人科疾患、および高血圧症において統計学的有意に高まった。また、「出産なび」サイトを利用することにより、出産費用を把握する時期が利用していない者と比較して有意(p<0.001)に早まった。本研究で明らかにしたこれらの知見は、妊産婦の安心感の醸成に資すると推察される。
ガイドライン等の開発
各種ガイドラインの作成自体は、本研究の目的の範疇外であるが、本研究が検討した出産なびは、妊婦が安心して出産できる環境を整備するために、全国の分娩取扱施設の情報を提供するウェブサイトである。出産費用の「見える化」や、妊婦健診・産後ケアに関する情報の掲載など、妊産婦のニーズに応じた支援を提供しており、ガイドラインと同様な社会的意義を有すると考えられる。
その他行政的観点からの成果
本研究における「見える化」の内容・方法に関わる検討の結果は、令和5年度中に関連する審議会等の承認が得られた。この作成した素案に基づき、厚生労働省が運営を行う見える化のホームページの整備と公開が行われた(出産なび,令和6年5月)。
その他のインパクト
本研究の成果に関わり、付随的な報道が散見した。
(例)おはよう日本(NHK):なぜ上がり続ける?出産費用(2023/09/25)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
「出産なび」立ち上げ(令和6年5月)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202501009Z