文献情報
文献番号
201019058A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-041
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
濃沼 信夫(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石岡 千加史(東北大学 加齢医学研究所)
- 江崎 泰斗(九州がんセンター)
- 岡本 直幸(神奈川県立がんセンター)
- 金倉 譲(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 佐々木 康綱(埼玉医科大学 腫瘍内科)
- 執印 太郎(高知大学 医学部)
- 曽根 三郎(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 武井 寛幸(埼玉県立がんセンター)
- 直江 知樹(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 古瀬 純司(杏林大学 医学部)
- 堀田 知光(名古屋医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日進月歩の技術進歩は患者の福音となる一方、高額な医療費負担に耐えられない患者が生じる恐れがある。患者の経済的負担についての全国データはなく、がん対策基本法に謳う、がん医療の均霑化を経済面でも実現する対策は十分とは言い難い。本研究は、がん患者の経済的負担の実態を把握し、負担のあり方とその軽減に向けた対策を検討することを目的とする。
研究方法
大学病院、がんセンターなど全国42施設において、薬物療法を受けるがん患者を対象に、家計簿や領収書を見ながら金額を記入する自記式調査を実施した。また、がん薬物治療を担当する医師を対象にインターネットと郵送により調査を実施した。
結果と考察
がん患者3,277名より回答が得られた(回答率47%)。固形腫瘍(n =2,114)の部位は、乳房48%、肺20%、大腸11%などであり、造血系腫瘍(n=546)の病名は、慢性骨髄性白血病41%、悪性リンパ腫41%、多発性骨髄腫13%などである。
平均自己負担額(年額)は86万円であり、内訳は直接費用が入院36万円(該当割合65%)、外来41万円(97%)などである。間接費用は、健康食品・民間療法21万円(39%)、民間保険料16万円(61%)などである。償還・給付額は53万円で、内訳は高額療養費35万円(33%)、民間保険給付金102万円(38%)などである。
分子標的治療(n=1,032)の自己負担額は121万円、償還・給付額は65万円である。外来費用は入院の約2倍で、治療が主に外来で実施されていることがわかる。高額療養費制度を利用した患者の割合は、全体(n=2,731)で71%、分子標的治療(n=976)で86%と高率である。
医師調査の回答は1,176名(回答率20%)、臨床経験は平均18年である。経済的理由で治療を変更・中止した患者は、医師1人当たり1ヵ月に、入院では1.5人、外来では1.6人である。変更した事例(n=399)は、分子標的治療が半数を超える。固形がん(n=82)では、薬剤の変更が56%、無投薬が16%などである。
平均自己負担額(年額)は86万円であり、内訳は直接費用が入院36万円(該当割合65%)、外来41万円(97%)などである。間接費用は、健康食品・民間療法21万円(39%)、民間保険料16万円(61%)などである。償還・給付額は53万円で、内訳は高額療養費35万円(33%)、民間保険給付金102万円(38%)などである。
分子標的治療(n=1,032)の自己負担額は121万円、償還・給付額は65万円である。外来費用は入院の約2倍で、治療が主に外来で実施されていることがわかる。高額療養費制度を利用した患者の割合は、全体(n=2,731)で71%、分子標的治療(n=976)で86%と高率である。
医師調査の回答は1,176名(回答率20%)、臨床経験は平均18年である。経済的理由で治療を変更・中止した患者は、医師1人当たり1ヵ月に、入院では1.5人、外来では1.6人である。変更した事例(n=399)は、分子標的治療が半数を超える。固形がん(n=82)では、薬剤の変更が56%、無投薬が16%などである。
結論
分子標的治療を受けるがん患者の自己負担額は相当に重いことが明らかになった。高額化が避けられない技術進歩をあまねく患者に届けるには、経済的負担を最小化することが欠かせない。技術革新に対応できる診療報酬制度の確立を含め、患者負担のあり方を根本的に見直すべき時期に立ち至っている。
公開日・更新日
公開日
2015-10-06
更新日
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