レセプト情報・特定健診等情報を用いた医療保健事業・施策等のエビデンス構築等に資する研究

文献情報

文献番号
202501006A
報告書区分
総括
研究課題名
レセプト情報・特定健診等情報を用いた医療保健事業・施策等のエビデンス構築等に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 龍也(学校法人関西医科大学 医学部 メディカルデータサイエンス講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 明神 大也(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
  • 牧戸 香詠子(東京大学 大学院医学系研究科生物統計情報学講座)
  • 小野 孝二(東京医療保健大学 総合教育センター )
  • 板橋 匠美(東京医療保健大学 総合研究所)
  • 宮脇 敦士(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
20,401,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 野田龍也  奈良県立医科大学(令和7年4月1日~令和7年6月30日 →関西医科大学(令和7年7月1日~令和8年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
第4期医療費適正化計画では、従来の後発医薬品利用促進や重複投薬・多剤投与対策、特定健診・特定保健指導に加え、医療資源の効果的・効率的な活用が新たに重視されている。具体的には、①効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療、②医療資源の投入量に地域差がある医療への対応が位置づけられている。また、2024年度から特定保健指導が成果評価型へ変更されたことを踏まえ、特定健診等の効果に関するエビデンスの蓄積も必要である。本研究では、NDBを用いて、これら3領域について実態把握と分析を行い、医療費適正化に資する基礎資料を得ることを目的とした。
研究方法
令和5年度に提供を受けたNDB特別抽出データを中心に分析を行った。効果が乏しい医療については、腰痛に対するプレガバリン処方、成人の腰痛に対する脊椎注射、骨粗鬆症患者における繰り返しの骨密度検査、風邪に対する抗菌薬処方、1,25-ジヒドロキシビタミンD3測定の5項目を対象に、実施回数と関連医療費を年齢・性別・地域別に算出した。計算負荷を考慮し、ID0単位の1/8ランダムサンプルから全国推計値を算出した。
医療資源投入量の地域差については、訪問診療における超音波検査と気管支喘息患者に対する生物学的製剤を対象とした。前者では、訪問診療料または往診料と超音波検査の同日算定について、人口当たり、患者当たり、反復利用、医療機関別集中度等を指標化した。後者では、NDBオープンデータおよびNDBデータを用い、生物学的製剤の処方数、都道府県別動向、喘息患者での使用状況、導入前後の経口ステロイド使用量を分析した。
特定健診等については、下肢切断、受診勧奨後の受診、特定健診受診の効果量、特定健診と医療機関検査の重複を検討した。
結果と考察
5種類の効果が乏しい医療は、年間合計2,257万回提供され、医療費は302億円と推計された。最も頻度が高かったのは風邪に対する抗菌薬処方で約1,200万回、医療費では成人の腰痛に対する脊椎注射が122億円と最多であった。限られた5項目でも年間300億円規模の医療費が発生しており、医療費適正化上、重要な検討対象であることが示された。また、LVCには地域差があり、地域の外来医療費の差異の一部がLVC利用の違いを反映している可能性が示唆された。
医療資源投入量の地域差では、在宅医療における超音波検査の活用に都道府県間で明らかな差が認められた。その差は実施件数だけでなく、訪問診療と往診のいずれで活用されるか、高齢者人口当たりの実施状況、単回利用か反復利用か、少数施設への集中の程度など複数の側面に及んでいた。このため、地域差を検討する際には、件数比較だけでなく、提供体制や利用形態を含めた多面的な把握が重要と考えられた。気管支喘息患者に対する生物学的製剤は、2019年から2023年にかけて総処方数が4倍以上に増加し、2023年には院外処方が院内処方を上回った。喘息患者における使用者も約4倍に増加し、導入後には経口ステロイド総投与量および処方人数が有意に減少した。実臨床においても、生物学的製剤が経口ステロイド減量に寄与している可能性が示された。
特定健診等については、下肢切断は特定健診・特定保健指導の受診者で少なく、生活習慣病の重症化予防に寄与する可能性が示された。受診勧奨後も医療機関を受診しない者が4割前後存在し、複数年未受診者も多かった。特定健診受診群では、短期的には早期治療開始により医療費が高くなる一方、長期的には糖尿病発症や医療費を抑制する可能性が示唆された。ただし、観察研究であり未測定交絡には留意が必要である。
結論
本研究では、NDBを中心に、効果が乏しい医療、医療資源投入量の地域差、特定健診等の効果測定について全国規模の分析を行った。5種類のLVCだけでも相当規模の提供回数と医療費が確認され、在宅超音波検査や生物学的製剤使用には地域差や利用動向の変化が認められた。また、特定健診等は重症化予防や医療費抑制に寄与する可能性が示された。これらの結果は、第4期医療費適正化計画における医療資源の効果的・効率的な活用と、特定健診等の実効性向上に資する基礎的知見となる。

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
202501006B
報告書区分
総合
研究課題名
レセプト情報・特定健診等情報を用いた医療保健事業・施策等のエビデンス構築等に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 龍也(学校法人関西医科大学 医学部 メディカルデータサイエンス講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 明神 大也(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
  • 牧戸 香詠子(東京大学 大学院医学系研究科生物統計情報学講座)
  • 小野 孝二(東京医療保健大学 総合教育センター )
  • 板橋 匠美(東京医療保健大学 総合研究所)
  • 宮脇 敦士(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 福井 次矢(東京医科大学 茨城医療センター)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 ・研究分担者 野田龍也  奈良県立医科大学(令和7年4月1日~令和7年6月30日  →関西医科大学(令和7年7月1日~令和8年3月31日) ・研究分担者 明神大也    奈良県立医科大学(令和6年4月1日~令和6年9月15日)  →浜松医科大学(令和6年9月16日~令和8年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、都道府県は医療費適正化計画を策定し、住民の健康保持や医療の効率的提供を推進することが求められている。2024年度からは第4期医療費適正化計画が開始されたが、その中では従来の取組に加え、「効果が乏しい医療の適正化」や「外来医療資源投入量に地域差のある医療の適正化」などが新たな目標として挙げられている。さらに、特定健診・特定保健指導の制度が改正され、成果評価型に移行することを受け、これらの施策の効果を科学的に検証する必要性も高まっている。こうした背景のもと、本研究では、①効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療、②医療資源の投入量に地域差がある医療③疾病の罹患状況や重症疾患の発生状況等を含めた特定健診等の効果測定の3点を目的に、匿名医療保険等関連データベース(NDB)を用いた定量的分析を行った。
研究方法
令和5年度に提供を受けたNDB特別抽出データを中心に分析を行い、NDB提供前には文献調査、NDBオープンデータ、KDB、DeSCデータを用いた分析を行った。効果が乏しい医療については、国内外の文献レビューや専門家ヒアリングによりLVC候補を整理したうえで、感冒に対する抗菌薬処方、腰痛に対するプレガバリン処方、腰痛への脊椎注射、骨粗鬆症患者における繰り返しの骨密度検査、1,25-ジヒドロキシビタミンD3測定の5項目を対象に、実施回数と医療費を算出した。医療資源投入量の地域差については、専門家等へのヒアリングで対象を抽出し、訪問診療における超音波検査、リフィル処方、病理診断、高額医療機器、気管支喘息患者への生物学的製剤等を分析した。特定健診等については、健診受診群と非受診群を比較するコホート分析、受診勧奨後の医療機関受診、下肢切断、糖尿病発症、医療費、医療機関検査との重複等を検討した。
結果と考察
NDB特別抽出データについては、令和5年7月に無条件承諾、令和6年1月から順次データ提供を受け、令和6年8月に1患者1データ化処理を含めたDB化を完了した。そのうえでID5の精度検証、新たな長期追跡可能なIDの開発、公費負担者番号の集計等を行った。LVCについては、文献レビュー等によりNDBで分析可能な候補を整理した。風邪に対する抗菌薬処方は、2022年度に全国で約741万人、約955万回、薬剤費約60億円と推定された。最終年度には5種類のLVCを分析し、年間約2,257万回、医療費約302億円と推計された。限られた項目でも相当規模の医療費が確認され、地域差も認められたことから、地域の外来医療費の差異の一部がLVC利用の違いを反映している可能性が示唆された。
医療資源投入量の地域差では、ヒアリングにより訪問診療における超音波検査、迅速病理診断、高額医療機器、重症喘息に対する抗体製剤等が政策的に有用な分析対象として整理された。NDB等を用いた分析では、訪問診療下の超音波検査、リフィル処方、病理診断、高額医療機器の利用に地域差が認められた。特に在宅医療における超音波検査では、単なる件数の差にとどまらず、訪問診療と往診のいずれで活用されるか、反復利用の有無、少数施設への集中度など、複数の側面で地域差が確認された。したがって、地域差を評価する際には、件数の多寡のみではなく、提供体制や利用形態を踏まえた多面的な解釈が必要である。気管支喘息患者への生物学的製剤は2019年度から2023年度にかけて総処方数が4倍以上に増加し、導入後には経口ステロイド総投与量と処方人数が減少した。NDBでは重症度や検査値等を原則把握できない限界はあるが、実臨床における使用拡大とステロイド減量の可能性が示された。
特定健診等については、研究デザインとアウトカム定義を整理したうえで、NDBやKDBを用いて健診受診、受診勧奨後の医療機関受診、生活習慣病関連アウトカム、医療費等との関連を分析した。下肢切断は特定健診・特定保健指導受診者で少なく、生活習慣病の重症化予防に寄与する可能性が示された。一方、受診勧奨後も医療機関を受診しない者が4割前後存在し、複数年未受診者も多かった。健診受診群では早期治療開始により短期的には医療費が高い一方、長期的には糖尿病発症や医療費を抑制する可能性が示唆された。ただし、観察研究であるため未測定交絡の影響には留意が必要である。
結論
本研究では、文献レビュー、ヒアリング、既存データベース分析を踏まえ、NDBを中心とした全国分析を実施し、最終年度に分析をさらに深掘りした。LVC、医療資源投入量の地域差、特定健診等の効果測定について、医療費適正化計画の実効性向上に資する基礎的知見を整理した。

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202501006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
該当なし
臨床的観点からの成果
喘息等に対する生物学的製剤の使用は2019~2023年の間で大きく増加し、地域差も明らかになった。喘息患者では生物学的製剤導入後に経口ステロイド使用量と処方人数が減少しており、実臨床でもステロイド減量に寄与している可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究で、効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療として、文献レビュー、専門家へのヒアリング、NDBを用いた実態分析を段階的に実施した。その結果、第205回社会保障審議会医療保険部会の中で、「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」に、腰痛に対するプレガバリンが追加された。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202501006Z