総合的な診療能力を有する医師の活躍推進方策に関する調査研究

文献情報

文献番号
202501002A
報告書区分
総括
研究課題名
総合的な診療能力を有する医師の活躍推進方策に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
小林 大輝(東京医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 比良野 圭太(京都大学 医学研究科人間健康科学系専攻)
  • 前野 哲博(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
3,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では少子高齢化の進展や地域・診療科間の医師偏在を背景として、地域医療を支える総合診療医の育成・確保が重要な政策課題となっている。しかし、総合診療医に期待される役割や社会的ニーズ、育成制度のあり方、さらには既存専門医に対するリカレント教育の有効な方法については十分な知見が蓄積されていない。本研究では、①多職種を対象とした全国調査による総合診療医への期待と実態の把握、②海外先進国における制度・教育体制の調査、③総合診療への転向を支援するリカレント教育プログラムの開発と評価、の3つの研究を統合的に実施し、総合診療医の育成・確保を推進するための科学的基盤を構築することを目的とした。
研究方法
まず、総合診療医に対する社会的ニーズを把握するため、病院、診療所、訪問看護ステーション等の医療・介護関連施設に所属する医師、看護職、介護職、療法士、ケアマネジャー等を対象として、全国規模の無記名オンラインアンケート調査を実施した。調査では、総合診療医に求められる役割、実際の診療内容、人材育成・確保に関する認識等を収集した。

次に、総合診療医育成制度の国際比較を目的として、米国およびオーストラリアの家庭医療・総合診療分野の専門家に対する半構造化インタビューを実施した。また、総合診療医のキャリア選択に影響する政策的介入についてシステマティックレビューを行い、教育制度やキャリア支援策に関するエビデンスを整理した。

さらに、他専門領域から総合診療へ参入する医師を支援するため、従来の同期型オンライン研修を改良し、e-learningによる事前学習と短時間のライブ研修を組み合わせたハイブリッド型リカレント教育プログラムを開発した。2022~2024年の受講者を対象として、診療実践やノンテクニカルスキルに関する自己評価、診療行動の変化、業務への影響等を調査し、教育効果を検証した。
結果と考察
全国調査では998名から回答を得た。総合診療医に求められる役割として、複数診療科にまたがる患者や複数の健康問題を抱える患者への対応が高く評価され、慢性疾患管理や社会的背景への対応を含めた包括的な診療能力への期待が示された。また、多くの施設において総合診療医の必要性が認識されており、人材確保の重要性が明らかとなった。

海外調査では、米国およびオーストラリアにおいて総合診療医が医療システムの中心的役割を担い、体系的な研修制度や紹介制度によって支えられていることが確認された。一方で、診療報酬や社会的評価が人材確保に大きく影響することも示された。システマティックレビューでは、地域医療経験、長期的教育プログラム、ロールモデルとの接触が総合診療志向を高める要因として抽出された。

リカレント教育研究では、23プログラムのハイブリッド化を実施し、受講者の高い満足度と教育効果が確認された。ライブ研修時間を従来の約半分に短縮したにもかかわらず、多くの受講者が事前学習の有効性を認識しており、診療実践やノンテクニカルスキルの向上も認められた。これらの結果は、総合診療医の育成において、教育内容だけでなく学習機会へのアクセス向上や効率的な教育手法が重要であることを示唆している。

以上の結果から、総合診療医の育成・確保には、社会的ニーズの明確化、制度的支援、そして多様なキャリア背景を持つ医師が参入しやすい教育環境の整備が相互に重要であると考えられた。
結論
本研究は、総合診療医に対する現場の期待と実態、海外先進国における制度的特徴、さらにリカレント教育の有効性を包括的に検討した。その結果、総合診療医は複雑化する地域医療において不可欠な存在であり、育成・確保のためには教育制度の充実、キャリア形成支援、社会的認知の向上、適切な制度設計が必要であることが示された。また、ハイブリッド型リカレント教育は、効率性と教育効果を両立する有望な手法であり、既存専門医の総合診療分野への参入促進にも寄与する可能性が示された。本研究で得られた知見は、今後の総合診療医養成政策および地域医療体制の強化に向けた重要な基礎資料となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202501002Z