リプログラミング技術による消化器癌の新しい診断・治療

文献情報

文献番号
201019048A
報告書区分
総括
研究課題名
リプログラミング技術による消化器癌の新しい診断・治療
課題番号
H22-3次がん・一般-031
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森 正樹(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中森 正二(大阪医療センター がん療法研究開発室)
  • 山田 泰広(京都大学 物質ー細胞統合システム拠点 iPS細胞研究センター)
  • 石井 秀始(大阪大学 消化器癌先進化学療法開発講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度の先端医科学技術を癌制圧に向けて展開し、癌死の過半数を占める消化器癌の治療成績を格段に向上させることを目的とする。そのために、最近特に新しい技術として世界的な注目を集めている細胞のリプログラミングを癌の治療・診断に応用する。
研究方法
1)癌幹細胞の直接リプログラミング効果
消化器癌の細胞株と臨床材料に於ける消化器癌幹細胞を直接リプログラミングすることによる悪性形質改善効果を明らかにする。
治療後に残存する静止期癌幹細胞はリプログラミングに高感受性である。
消化器癌細胞株の探索研究、臨床消化器癌材料の前臨床研究
2)正常と癌の幹細胞のリプログラミング感受性の相違
癌幹細胞、非癌幹細胞、正常幹細胞に区別し、臨床応用に必要なレベルまで掘り下げて研究し『癌幹細胞』がリプログラミングに高感受性である分子基盤を解明する。
実験系:癌幹細胞、非癌幹細胞、正常幹細胞の相違比較
結果と考察
正常細胞からのiPSリプログラミングの場合には、低酸素、抗酸化剤、ヴィタミンC、癌抑制遺伝子(p53,p16)の不活性化が重要であることが知られている。本研究では、癌細胞からのiPC誘導に於いて重要な因子を探索した。その結果、癌抑制遺伝子の不活性化、癌遺伝子の活性化とともに低酸素条件での情報伝達経路がiPC誘導に大きな影響を与えることが明らかとなった。
誘導されたiPCの性質を調べると、癌細胞の組織浸潤能および造腫瘍性ともに低下しており、低酸素誘導でのiPC 生成向上は臨床上有用なシーズを提供することが確認された。この誘導促進現象を創薬として標的化するために、関わる下流分子の探索を実施し、分子Xを同定した。この分子Xの変異体等を用いた実験により、創薬標的として重要であることを明らかにした。
(2)新しい誘導方法
1)より効率的なiPS細胞樹立のシステム:腫瘍細胞からのiPS細胞樹立の効率機構を解明する目的で、より効率的なiPS細胞樹立のシステムを構築する目的で、ドキシサイクリン誘導可能な山中4因子を有するノックインマウスの作製を開始した。
2)人工合成物Yによる安全で有効なリプログラミング
山中因子と異なる人工合成物Yにより安全で有効なリプログラミングに成功した。この人工合成物Yはゲノムへの挿入変異が無いため安全であり、効率の点からも従来の方法と同等である。
結論
治療後に残存する従来治療抵抗性癌細胞の分子標的の同定によるテーラーメイド医療の確立等による癌治療成績の飛躍的向上を実現化に向けて基盤を構築した。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019048Z