肺がんの浸潤・転移を抑制可能な分子標的の同定に基づく革新的テーラーメイド治療法の開発

文献情報

文献番号
201019047A
報告書区分
総括
研究課題名
肺がんの浸潤・転移を抑制可能な分子標的の同定に基づく革新的テーラーメイド治療法の開発
課題番号
H22-3次がん・一般-030
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 隆(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長田 啓隆(愛知県がんセンター研究所)
  • 柳澤 聖(名古屋大学高等研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、我々が同定した転移関連分子CLCP1及びCIMを中心に、がんの浸潤と転移の分子機構の解明と、革新的なテーラーメイド分子診断・治療法開発への応用にある。
研究方法
CLCP1の発現と臨床病態との関連を検討するとともに、その分子機能解明を目指して、CLCP1結合蛋白の質量分析器を使った網羅的探索やシグナリングパスウェイ解析を進めた。また、CIMの分子機能を解明すべく、CIMに制御されるパスウェイの探索を、プロテオミクス・バイオインフォマティクス解析を統合して進めた。
結果と考察
抗CLCP1モノクローナル抗体を用いた免疫組織学的検討によって、CLCP1の発現と不良な予後の有意な関連を明らかとするとともに、免疫沈降物のタンデム質量分析によって、CLCP1と共沈降する蛋白としてnon-muscle myosin IIA及びbeta-actinを同定した。また、CLCP1の過剰発現によって変動する遺伝子群をin silico解析し、幹細胞性維持や細胞運動等のがん悪性化への寄与を示唆するパスウェイへの関与の描出に成功した。
また、CIMの分子機能を解明すべく、プロテオミクス・バイオインフォマティクス解析を統合して進めて、CIMが微小環境における低酸素ストレス応答に重要なHIF-1alphaを負に制御するOS-9に結合して機能を抑制しており、結果的にHIF-1alphaの発現を正に制御していることを明らかとした。さらに、CIMが小胞体ストレス応答のシグナル伝達制御(unfolded protein response, UPR)の鍵を握るBiPと結合し、UPRシグナル伝達を正に制御することを明らかとした。
一方、新たな転移関連標的分子の探索については、我々が樹立した高転移性ヒト肺がん細胞株LNM35株を対象としたリン酸化タンパク質の網羅的発現解析を展開し、候補分子同定へ向けた基盤情報を得た。
結論
 CLCP1及びCIMについて、その機能解明と応用研究の展開を進めるうえで重要な基盤情報を得ることができた。来年度は、予備的な検討が示すCLCP1と他の細胞膜受容体との複合体形成や、CIMの癌細胞の運動・浸潤への関与機構について検討を進める。また、LNM35株の転移能獲得に関連すると考えられる数百個のリン酸化部位を同定したので、来年度はその要となる分子の探索を進める予定とする。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019047Z