がん特異的細胞性免疫の活性化を基盤とする新たな治療の開発

文献情報

文献番号
201019046A
報告書区分
総括
研究課題名
がん特異的細胞性免疫の活性化を基盤とする新たな治療の開発
課題番号
H22-3次がん・一般-029
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
葛島 清隆(愛知県がんセンター研究所 腫瘍免疫学部)
研究分担者(所属機関)
  • 赤塚 美樹(藤田保健衛生大学医学部 血液内科)
  • 神田 輝(愛知県がんセンター研究所 腫瘍ウイルス学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌細胞特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の働きを応用した新規免疫療法の開発には、CTLが認識する個々の癌抗原の同定、患者血液中の癌特異的CTLの定量的解析および効果的なCTL活性化法の確立などが重要である。平成22年度は1)卵巣癌細胞株から作製した人工抗原提示細胞(aAPC)によるCTLの誘導、2)同種造血細胞移植後の再発予防のための免疫療法の開発に関する研究、および3) WT1発現リンパ芽球様細胞株(LCL)の抗原提示細胞としての有用性の検討について実施した。
研究方法
1)卵巣癌細胞株TOV21GにsiRNA逃避コドン変換HLA-A24を導入し、同じsiRNAで内因性のHLAの発現を消失させたaAPCを作製した。健康成人リンパ球をaAPCで刺激してCTLクローンを得た。2)HLA一致同胞より骨髄移植を受けた患者末梢血リンパ球中に含まれるマイナー組織適合抗原、腫瘍抗原に対するCTL頻度を限界希釈法で測定した。3)BACクローニング法を用いてWT1遺伝子組込みEBVを作製した。組換えEBVを末梢血リンパ球に感染させLCLを樹立した。
結果と考察
1)複数の卵巣癌細胞株をHLA-A24拘束性に傷害し、正常細胞を傷害しないCTLクローンを得た。現在同定を進めているこのCTLの認識抗原は、新たな癌免疫療法の標的となる可能性がある。2)2名の患者において移植後半年から1年まではマイナー組織適合抗原がCTLの主な標的となることを示唆する結果を得た。3)WT1抗原特異的CTLは、樹立したWT1発現LCLをHLA拘束性に認識した。組換EBVを用いて作製したLCLは、免疫モニタリングおよびCTL誘導に有用である可能性が示唆された。
結論
1)コドン変換HLA導入とsiRNAで内因性のHLAの発現を消失させることで、任意の癌細胞株からCTL誘導に有用なaAPCを作製する技術を確立した。今後は、他の癌や、「癌幹細胞」に対するCTLの誘導に応用する。2)移植後半年から1年までは腫瘍抗原よりマイナー組織適合抗原がCTLの主な標的となることを示唆する結果を得た。今後は症例の蓄積が必要である。3)組換EBVを用いて作製したLCL上で、WT1抗原がペプチドにプロセシングされてCTL提示されていることを確認した。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019046Z