ゲノム・遺伝子解析に基づく、胃がん・肺腺がん高危険度群の補足、及び予防標的分子の同定に資する研究

文献情報

文献番号
201019034A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム・遺伝子解析に基づく、胃がん・肺腺がん高危険度群の補足、及び予防標的分子の同定に資する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
椙村 春彦(浜松医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 裕美(国立がん研究センター研究所)
  • 河野 隆志(国立がん研究センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胃がん・肺がんは本邦がん死因の約40%を占めるが、未分化型胃腺がんや肺腺がんはH. pylori感染や喫煙等の既知の危険要因の関与が小さく、十分な高危険度群の捕捉ができていない。特に、生活習慣等のリスク要因の基盤となる安定した確率を提供する遺伝素因に関しては全貌が解明されていない。本研究では家族性胃がん症例・若年性未分化胃腺がん・若年性非喫煙者肺腺がん症例の代表例に対して、次世代シークエンサー等を用いて遺伝子機能異常を示唆する新規変異を検索し、他の家族性・若年性症例、並びに孤発がん症例における同一変異・同一遺伝子内変異の頻度を解析する。
研究方法
家族性胃がんにMultiplex Ligation-dependent Probe Amplification (MLPA)解析を適用した。MLPAはCDH1 locusに適用されたのは比較的新しく、本研究計画で、エクソームあるいは全ゲノム解析を企図しているがその際の対象症例がさらにしぼることが出来る。また、網羅的なSNP array結果(illumina OMNI chip)をもとにhomozygous stretch の手法で、がん発症者でとくにhomozygous stretchのみられるゲノム領域を同定した。この方法は少数の個体から劣性感受性遺伝子を見いだすのに効力を発揮している。DNAの質を検討しexome解析の準備をした。
結果と考察
MLPA解析で、CDH1のエクソン3の欠失を見いだした。これはtruncation typeのCDH1を生じて、authenticなhereditary diffuse gastric cancer(HDGC)の典型病理像をしめしていた。本邦にも典型的なHDGCが存在するということがわかった。家族集積例における遺伝的要因についてどちらかというと重要視されていなかった本邦の胃がんの臨床へ一石を投じると思われる。
一方で同定したhomozygous stretch内には数十の候補遺伝子が載っており、その生物学的整合性を順次調べていく。
結論
本邦の家族集積性胃がんは、既知のものも含めて原因探索に手がつけられていない。従来からGWASで見いだしている多型(PSCAやMUC1)などの組み合わせ、copy numberなど既知遺伝子でも解析法が進歩したことによる新たな同定、homozygous stretch、エクソームと全ゲノムといった方法論に対応を順次適応して、本法の胃がん・肺がんのリスク同定を進めていきたいと思う。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019034Z