ヒトパピローマウイルスを標的とする発がん予防の研究

文献情報

文献番号
201019032A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトパピローマウイルスを標的とする発がん予防の研究
課題番号
H22-3次がん・一般-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
清野 透(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 ウイルス発がん研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 川名 敬(東京大学 医学部)
  • 酒井 博幸(京都大学 ウイルス研究所 がんウイルス部門)
  • 森 清一郎(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析センター)
  • 中川 俊介(東京大学 医学部)
  • 大和 建嗣(東京医科歯科大学 細菌感染制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
37,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HPVはほぼ全ての子宮頸がんの原因であり、全がんの5%, 女性のがんの11%の原因となっている。発がん性HPV群の感染予防、HPV潜伏感染の阻止、前がん病変の排除等による子宮頸がんの予防法を開発し子宮頸がんの罹患率・死亡率を減少させることが研究の目的である。 
研究方法
 血清中の交叉性中和抗体価のELISA測定法を開発する。臨床試験開始後に必要な正確なHPVタイピング法の再評価した。HPV既感染者への治療ワクチンとして、乳酸菌E7ワクチン(GLBL101c)を作成し、第I/IIa相探索的臨床試験を進め、安全性と特異的細胞性免疫誘導能、治療効果を解析した。
E6機能を阻害するMG132内包化ナノミセル、E6,E7を標的としたDNA-RNAハイブリッド型核酸(dsRDC)の抗腫瘍細胞効果を検討した。環状HPVゲノムを複製・維持する細胞株を樹立し、HPV複製におけるE1の役割やI型IFNなどによる複製阻害効果を調べた。
結果と考察
 第2世代HPVワクチンの臨床試験に必要な血清中の抗L2中和抗体価の測定法を開発した(特許出願準備中)。今後も武田薬品工業(株)への技術提供などにより臨床試験への導入を促進する。L1C1/L1C2C2MプライマーセットはHPV16の検出感度が低く問題点が浮かび上がった。E7ワクチン(GLBL101c)を7症例に投与し、安全性が確認された。4カプセル/日内服の3例(全例)でCIN3からCIN1/2への退縮を観察した。HPVゲノムを複製維持する細胞株を樹立しHPV維持複製にはE1が不要であること、I型IFNが複製阻害することを示した。特に経口ワクチンは成功すれば医療経済効果は高い。MG132内包化ミセルは腫瘍に集積し著名な抗腫瘍効果を示した。E6E7 dsRDC の一つは、正常細胞に対する細胞毒性が低く、E6E7発現細胞特異的に増殖を抑制し、新たな治療法としてさらに開発を進める。
結論
 武田薬品工業(株)による第2世代HPVワクチンの事業化が決定し、ワクチンの実用化を目指した臨床研究開始に向け順調に進んでいる。HPVタイピング法の整備が必要である。E7を抗原とする治療ワクチンは安全性と有効性が示唆された。症例の追加と詳細な免疫学的解析を進めた後、製薬企業による治験へ移行を検討する。班員の特許技術に基づくMG132内包ミセルやdsRDCはE6,E7を標的としており前がん病変だけでなく浸潤がんに対する新規治療法になる可能性がある。HPVの複製機構の解明と複製阻害による病変の治癒を目指した基礎研究が着実に進んでいる。一方E1ヘリケース阻害剤は再考が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019032Z