浸潤・転移等、がんの重要な臨床的特性の病理・病態学的分子基盤の解析とそれに基づく診断・治療法の開発に資する研究

文献情報

文献番号
201019026A
報告書区分
総括
研究課題名
浸潤・転移等、がんの重要な臨床的特性の病理・病態学的分子基盤の解析とそれに基づく診断・治療法の開発に資する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
落合 淳志(独立行政法人 国立がん研究センター東病院臨床開発センター 臨床腫瘍病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 保典(慶應義塾大学医学部病理学教室)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学医学部病理学教室)
  • 加藤 光保(筑波大学大学院分子情報・生体制御医学専攻 分子病理学分野)
  • 荒川 博文(国立がんセンター研究所生物物理部)
  • 平岡 伸介(国立がんセンター研究所病理部)
  • 神奈木 玲児(愛知県がんセンター研究所分子病態学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
48,575,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん病理・病態学的特性をがん細胞と間質細胞を含めたがん組織全体の分子機構として明らかにすることにより、浸潤・転移やがん患者予後に関わる癌生物像に関わるがん細胞と間質細胞の相互作用やがん微小環境を明らかにするものである。また、がん組織において特徴的な、がん細胞と間質細胞の相互作用やがん微小環境を標的とした新しい診断法・治療法を見出すことを目的とするものである。
研究方法
1)膵臓がんの神経浸潤モデルを作製し、神経浸潤距離と悪液質、疼痛およびサイトカインとの関係を研とした。2)ヒト前立腺がんのヒト骨転移モデルとして樹立したヒト骨を移植したHu-bone-NOD-SCIDマウスモデルを用いて検討し、骨貯蔵IGF2が転移巣形成に関わることを検討した。3)血管周囲外膜より培養した間質線維芽細胞によるヒト肺腺癌細胞生着・生存能に関わる分子機構を検討した。4)抗IL-6受容体抗体治療の第Ⅰ相および第Ⅱ相臨床試験を膵がん患者に対して行っている。がんに特徴的な病理形態を3次元的に観察するμVOISを構築した。
結果と考察
1)膵臓がん神経浸潤距離に相関してマウスの食餌量の減少を伴わない体重減少と疼痛の増加が認められた。また、神経浸潤と血清中のIL-6量が強い相関があることが示された。2)ヒト成人骨を移植したHu-bone-NOD-SCIDマウスモデルおよび抗ヒトIGF2抗体を用いて検討し、ヒト前立腺がん骨転移においてヒト骨内に貯蔵されているIGF2が転移巣形成には重要な意義を有することを示した。3)血管周囲外膜より培養した間質線維芽細胞に発現するポドプラニンの働きが、がん細胞の生着能を変化させることを示した。これは、がん間質細胞によるがん細胞増殖に関わる新しい分子機構の存在を示すものである。4)神経浸潤モデルで見出された膵がん患者のIL-6のシグナルを阻害する抗IL-6受容体抗体治療の第Ⅰ相および第Ⅱ相臨床試験を膵がん患者に対して行っている。がんに特徴的な病理形態を3次元的に観察する内視鏡システムμVOISにより、大腸癌の粘膜筋板の破壊の確認とともに、臨床機として第Ⅰ相試験を開始した。
結論
特徴的ながん病理・病態学的特性の基盤にある分子機構を明らかにすることで、新しい疾病の分子基盤が明らかになってきたと思われる。今後、これら分子基盤に基づいた診断治療法の開発を目指し進めていく。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019026Z