腫瘍脈管系を標的としたがん浸潤転移とがん幹細胞制御法の確立

文献情報

文献番号
201019025A
報告書区分
総括
研究課題名
腫瘍脈管系を標的としたがん浸潤転移とがん幹細胞制御法の確立
課題番号
H22-3次がん・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 靖史(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高倉 伸幸(大阪大学 微生物病研究所)
  • 尾池 雄一(熊本大学 大学院医学薬学研究部)
  • 矢野 聖二(金沢大学 がん研究所)
  • 渡部 徹郎(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 平川 聡史(愛媛大学 医学部附属病院)
  • 南 敬(東京大学 先端科学技術研究センター)
  • 望月 直樹(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗血管新生剤が臨床導入されているが、現行のVEGFシグナルを遮断する薬剤には、血管内皮細胞の障害による副作用、VEGF以外の因子への置換による耐性の問題などがある。本研究の目的は現行の抗血管新生剤の問題点を克服し、がんの浸潤転移とがん幹細胞の制御を可能とする本邦発の革新的ながん治療法を確立することである。
研究方法
佐藤は血管新生抑制因子VASH1の作用増強と、そのホモログで血管新生を促進するVASH2の作用阻害を目指す。高倉は血管成熟因子apelinを腫瘍血管の再構築に応用する。尾池はANGPTL2の腫瘍における意義解明と阻害法の開発を目指す。矢野は腫瘍間質線維芽細胞の産生するHGFの阻害を目指す。渡部は、リンパ管新生に関わる新規分子の同定と制御を目指す。平川はリンパ管新生の効果的は制御法の確立を目指す。南は、包括的探索で判明したDSCR-1のがんの浸潤転移に対する意義を明らかにする。望月は、ライブイメージング法を駆使して血管成熟のシグナル機構を解明する。
結果と考察
VASH1はVEGF非依存性腫瘍に対しても抗腫瘍効果を発揮できる。VASH2の発現阻害によって腫瘍血管新生は制御できる。Apelinは腫瘍血管を成熟化し、樹状細胞による抗腫瘍効果が増強する。Angptl2は、血管・リンパ管新生を促進するばかりか、癌細胞の運動能、浸潤能を直接亢進させる。HGFは肺がん細胞のゲフィチニブ耐性を惹起するが、PI3K阻害薬はこれを解除する。BMP-9は、血管形成を促進する。LYVE-1はリンパ管新生の過程で、ectodomain sheddingによって細胞膜から切断される。DSCR-1 KOマウスで亢進している癌転移は、可溶性TIE2によって抑制される。cAMPはVE- cadoherinの安定化を介して、またAngiopoietin1はDelta-Notchを介して血管を安定化させる。
結論
腫瘍血管新生制御の手段や新しい分子標的としてVASH1、VASH2、Angptl2、BMP-9、可溶性TIE2の応用を進める。ApelinやcAMP、angiopoietin-1により腫瘍血管を正常化し、腫瘍免疫増強を目指す。さらに肺癌のゲフィチニブ耐性解除への、PI3K阻害薬応用の可能性やLYVE-1のectodomain sheddingの腫瘍リンパ管新生における意義について研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019025Z