ゲノム・遺伝子解析情報に基づく、臨床応用可能な固形がんの予後予測法の開発と、免疫遺伝子治療に資する研究

文献情報

文献番号
201019024A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム・遺伝子解析情報に基づく、臨床応用可能な固形がんの予後予測法の開発と、免疫遺伝子治療に資する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 輝彦(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所  遺伝医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 大上 直秀(広島大学大学院 分子病理学教室)
  • 菅野 康吉(栃木県立がんセンター研究所 がん遺伝子研究室 がん予防研究室  )
  • 村上 善則(東京大学医科学研究所 人癌病因遺伝子分野)
  • 青木 一教(国立がん研究センター研究所 遺伝子免疫細胞医学研究分野)
  • 金田 安史(大阪大学大学院医学系研究科 遺伝子治療学)
  • 加藤 尚志(早稲田大学教育・総合科学学術院 先端生命医科学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゲノム研究や腫瘍免疫学等の進歩をがん診療法開発へ橋渡しするため以下の研究を行った。1)上部消化管がん予知医療の開発、2)表在性膀胱がん再発予防・治療法の開発、3)小細胞肺がんの分子標的診断・治療法の開発、4)免疫遺伝子・細胞複合療法の開発、5)治療効果を増強したHVJ-Eベクターの開発、6)低酸素環境下のがんの悪性化に関わるmiRNAの同定と診療応用の検討。
研究方法
1)食道扁平上皮がんの遺伝子発現プロファイルやサイトケラチン免疫染色と予後との相関を解析した。胃がんにおいて転写因子CDX2が誘導する遺伝子を探索した。2)膀胱がん細胞株に対するFGFR3チロシンキナーゼ阻害剤PD173074の効果を調べた。3)小細胞肺がんにおけるCADM1遺伝子発現を解析した。細胞培養液中のCADM1タンパク質の検出を検討した。4)骨軟部肉腫に対するインターフェロン遺伝子導入と自家造血幹細胞移植の複合療法の効果と安全性、免疫学的機序を検討した。5)不活性化センダイウイルスに基づくHVJ-Eベクターに封入したsiRNAの抗腫瘍効果を検討した。6)がんにおけるmiR-210の発現制御経路を解析した。
結果と考察
1)食道がん治療前生検の遺伝子発現プロファイルは化学放射線治療の有用な予後因子であったが、サブタイプ分類の確立による精度向上が示唆された。サイトケラチン7陽性食道がんは有意に予後不良であった。CDX2は腸型粘液形質を示す胃がんにおいて薬剤耐性遺伝子MDR1を誘導した。2)PD173074はG1/G0停止とアポトーシス誘導を介してFGFR3遺伝子変異陽性膀胱がん細胞の増殖・造腫瘍性を抑制した。3)小細胞肺がんに特異的なCADM1転写産物を見出した。CADM1タンパク質細胞外ドメインは培養上清中で検出可能であった。4)複合療法の効果と安全性を示した。自家造血幹細胞移植後に腫瘍内で制御性T細胞が抑制されることを見出した。5)Eg5 siRNA封入HVJ-Eはグリオーマ脳内接種モデルにおいて著明な抗腫瘍効果と生存率向上を示した。6)miR-210の発現はHIF-1aによって誘導され、トランスフェリン受容体や鉄-硫黄クラスター形成の分子経路を制御することを見出した。
結論
遺伝子発現情報による治療の個別化法や、治療の分子標的候補を得た。造血幹細胞移植・免疫遺伝子治療の複合療法や核酸医薬開発の前臨床研究が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019024Z