放射線障害と宿主要因からみた発がんの分子基盤とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
201019022A
報告書区分
総括
研究課題名
放射線障害と宿主要因からみた発がんの分子基盤とその臨床応用に関する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
安井 弥(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 雄一((財)癌研究会癌研究所 病理部)
  • 宮本 和明(呉医療センター・中国がんセンター 臨床研究部)
  • 高畠 貴志(放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター)
  • 神谷 研二(広島大学 原爆放射線医科学研究所)
  • 宮川 清(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 林 奉権((財)放射線影響研究所 放射線生物学/分子疫学部)
  • 楠 洋一郎((財)放射線影響研究所 放射線生物学/分子疫学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
放射線発がんの分子基盤を解明し,リスク評価や治療開発等の臨床応用に資することを目的とし,「放射線関連がんにおけるエピジェネティクス」,「放射線障害による発がんモデルにおける検証」,「原爆被爆者コホートを用いた宿主要因と発がん」について解析する。これにより,職業被曝や医療被曝等による放射線障害に対する具体的な予防策および放射線障害に起因するがんの診断法・治療法を提示することが可能となる。
研究方法
被爆者胃がん、乳がんについてmicroRNAの発現および機能解析、がん幹細胞マーカーの発現解析を行なった。放射線治療後に発生した悪性腫瘍を病理学的に解析した。Ptch1遺伝子ヘテロ欠損マウスに生じた髄芽腫において放射線誘発腫瘍に特徴的なゲノム異常とDNAメチル化状態の関連を解析した。損傷乗り越えDNA合成蛋白REV1の機能を細胞生物学的に解析した。がん精巣抗原SYCE2の発現と治療感受性の分子基盤を検討した。NKG2D遺伝子のハプロタイプとHCV肝細胞がんの発生,被爆線量との関連解析を行なった。P53BP1の下流にあるcyclin D1遺伝子の多型を解析し,GPA突然変異頻度の放射線量効果関係を検討した。
結果と考察
胃がんではmiR-143, miR-145が高線量被曝群で2倍以上に発現亢進し,被爆者乳がんで発現が亢進しているmiRNAを新たに5種類同定した。子宮がん放射線治療後の大腸がんには粘液がんの多いことが判明した。マウス髄芽腫モデルで特徴的なゲノム異常を持つ腫瘍では,複数のkey遺伝子近傍で低メチル化状態であることがわかった。REV1の発がん促進効果は直接的なDNA損傷応答反応によるものではないことが示された。SYCE2の解析から,治療抵抗性にDNA損傷応答経路の異常が関与することが示唆された。HCV肝発がんにはNKG2Dハプロタイプのみならず放射線被曝も関与することが示された。GPA 突然変異頻度とcyclin D1の遺伝子型との有意な関連が認められ,P53BP1依存性DNA修復経路に関わる遺伝子機能の個人差が,放射線誘発遺伝子障害の感受性に影響を及ぼす可能性が示唆された。
結論
本成果は,職業被曝や医療被曝等による放射線障害に対する具体的な予防策および放射線障害に起因するがんの診断法・治療法を提示に貢献するものである。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,868,000円
(2)補助金確定額
17,868,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
預金利息が生じたため。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-