難治性神経芽腫の発がんと幹細胞性を制御する遺伝子の同定および解析とその臨床応用

文献情報

文献番号
201019021A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性神経芽腫の発がんと幹細胞性を制御する遺伝子の同定および解析とその臨床応用
課題番号
H22-3次がん・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中川原 章(千葉県がんセンター 研究局・がん先進治療開発研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 上條 岳彦(千葉県がんセンター 研究局・発がん研究グループ)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター 研究局 ・がんゲノム研究室)
  • 古関 明彦(独立行政法人理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センター・免疫器官形成研究グループ)
  • 岩間 厚志(千葉大学大学院医学研究院・細胞分子医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
25,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性神経芽腫に対する新しい治療戦略を構築することは緊急の課題となっており、本研究では、悪性度の高い神経芽腫のがん幹細胞やiPS細胞技術など、最新の技術を駆使した神経芽腫発がんの分子機構解明とそれに基づく新しい治療法開発の基盤研究を展開する。
研究方法
神経芽腫細胞株およびU2OS,Hela細胞を用いて遺伝子のtransfectionを行った。また、遺伝子の発現抑制にはsiRNAを用いた。蛋白質の細胞内局在は免疫蛍光法によった。その他の細胞レベルでの実験は、標準的な分子生物学的実験方法を用いた。さらに、蛋白質の結合は免疫沈降法を用いて調べた。がん細胞のiPS化は、センダイウイルスベクターを用いて行った。
結果と考察
1)NGF/TrkAシグナルの最下流ターゲットであるKIF1Bβがミトコンドリアの蛋白分解酵素と結合してそれを活性化し、チトクロムC放出を制御することによってアポトーシスを誘導していることを明らかにした。また、ShfがALKの新規結合アダプタータンパク質であり、そのシグナルを負に制御していることを見いだした。2)神経芽腫培養細胞の増殖を抑制する抗NLRR1単クローン抗体を同定した。また、300万個の低分子化合物ライブラリーを分子イメジングでスクリーニングし、TrkBおよびALKに対する機能阻害化合物をそれぞれ7個と3個同定した。3)神経芽腫においてMYCNと常に共増幅している逆転写RNAであるNCYMを同定した。NCYMはOct4を直接転写誘導し、神経芽腫細胞のリプログラミングに関与するものと思われた。4)神経芽腫幹細胞において、sphere形成によるCD133の転写誘導およびCD133によるsphere形成の促進、さらに、増腫瘍性におけるCD133 C末細胞内ドメインの重要性を見いだした。また、発がんおよび幹細胞性に関係するポリコム群複合体の新規一員としてUSP7を見いだした。このように、ゲノム情報から同定した新規遺伝子やMYCNのがん、とくに神経芽腫における機能的役割が明らかになってきた。
結論
これまでのゲノム情報から同定した神経芽腫候補遺伝子の機能解析とそれらを標的とする治療薬の同定研究が具体的に進み、実用化への道が拓けて来た。また、平行して、がん幹細胞性および神経芽腫のリプログラミングに関するNCYMなど新規遺伝子が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019021Z