網羅的なゲノム異常解析と詳細な臨床情報に基づく、ヒトがんの多様な多段階発がん過程の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
201019020A
報告書区分
総括
研究課題名
網羅的なゲノム異常解析と詳細な臨床情報に基づく、ヒトがんの多様な多段階発がん過程の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がん研究センター研究所 多段階発がん研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 誠司(東京大学医学部)
  • 柴田 龍弘(国立がん研究センター研究所)
  • 稲澤 譲治(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 野口 雅之(筑波大学大学院)
  • 森下 和広(宮崎大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
52,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、多段階発がん過程および多様性のあるがんの臨床病態を、がん細胞内に蓄積しているゲノム異常との対応で把握し、個々のがんに最適の治療法を提供する個別医療・予知医療の実現へ向けて、がんの新たな分子診断法や分子標的療法の実現を加速させる新たな情報を集約することである。
研究方法
高精度なゲノム解析技術を駆使して、死亡率の高い肺がん、腎細胞がん、白血病などの網羅的なゲノム異常解析を行い、がん細胞におけるゲノム異常の全容を明らかにした。高頻度にゲノム異常を起こしている遺伝子に関しては、臨床検体を用いた解析から臨床病理学的所見との関連性を明らかにして新たな診断法の開発を試みた。さらに、正常上皮細胞やがん細胞株を用いて、細胞のがん化過程の再現とがん形質の抑制・誘導の検討を行い、ゲノム異常を起こしている遺伝子の生物学的機能とがん特性発現における分子経路を明らかにし、その制御法を追求した。
結果と考察
網羅的なゲノム解析により、早期肺腺がんの術後再発予後を規定するMYC遺伝子の増幅とmiR-21の高発現を同定し、腎細胞がんにおける染色体の多倍体化と14qのLOHが独立した予後因子であることを見出した。予後不良肺腺がんに対しては術後化学療法等の併用による予後の改善を検討する必要がある。ATLの候補がん抑制遺伝子として同定したNDRG2は口腔がんにおいてもメチル化で発現が抑制され、PI3K/AKTを活性化することを見出した。胃がんの染色体構造異常プロファイルと機能的スクリーニングにより新規がん遺伝子GLO1を見出した。GLO1はすでに阻害剤が存在しており、治療標的としても有望と考えられた。
結論
網羅的なゲノム解析により難治がんの診断法や治療法の改善を目指す上で貴重な情報が集積しつつある。特に次世代シークエンサーによる全トランスクリプトーム・エクソームシークエンスは多くの変異を検出でき、遺伝子異常を解明するうえで、強力なツールなので、各種難治がんにおける新規融合・変異遺伝子同定については今後更に検索を広げる予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019020Z