疾患モデル動物を用いた環境発がん初期過程の分子機構および感受性要因の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
201019018A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患モデル動物を用いた環境発がん初期過程の分子機構および感受性要因の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
筆宝 義隆(独立行政法人 国立がん研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 筆宝 義隆(国立がん研究センター研究所(発がんシステム研究分野))
  • 益谷 美都子(国立がん研究センター研究所 (ゲノム安定性研究分野))
  • 竹下 文隆(国立がん研究センター研究所 (分子細胞治療研究分野))
  • 木南 凌(新潟大学 教育研究院医歯学系)
  • 中島 淳(横浜市立大学 付属病院 消化器内科 )
  • 大島 正伸(金沢大学、がん進展制御研究所、腫瘍遺伝学研究分野)
  • 青木 正博(愛知県がんセンター研究所(分子病態学部))
  • 庫本 高志(京都大学大学院 医学研究科付属動物実験施設)
  • 續 輝久(九州大学大学院、医学研究院、生体制御学講座基礎放射線医学分野)
  • 山下 克美(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発がん物質、感染、酸化ストレス、放射線、高脂肪食などの環境因子により、発がん過程の初期には遺伝子発現変動、DNA障害応答反応、アポトーシス、炎症、内臓肥満蓄積など様々な変化が引き起こされる。ラット・マウスなどの動物モデルを用いてこうした現象が発がんに寄与する分子機構を詳細に解析し、ヒトがんの早期診断やテーラーメイドながん予防・治療の確立を可能とするような知見の集積を本研究の目的とする。
研究方法
大腸がんや胃がんの発がんモデルとなる変異ラットや遺伝子改変マウスにおいて、種々の環境因子の負荷による発がんの促進や、薬剤投与により発がんやがん進展などの抑制が観察される系を確立し、その過程の解析により発がんにおいて重要な遺伝因子・環境因子の相互作用を明らかにする。また、動物を利用する新規の手法を開発することで、迅速かつ簡便な発がん研究を実現する。さらに、動物で得られた知見をもとにヒトでの臨床応用の可能性を検討する。
結果と考察
食餌由来発がん物質PhIPについて、(1)誘発されるDNA障害応答反応が惹起する細胞周期停止の検出系の構築、(2)大腸がん初期病変より高発現を呈するSND1が選択的に生合成に関与するmiRNAの同定、(3)系統間の発がん感受性を規定する候補遺伝子Caspase3についてトランスジェニックラットで発がん性が低下することの確認などを行った。APC変異動物での検討では、マウスにおいてはJNKの直接的mTORC1リン酸化を介した腸管腫瘍形成促進を明らかにし、ラットでは化学療法の効果判定における有用性を示した。ゲノムの不安定性に関与するMSH2やPARP-1の変異マウスにおける発がん促進機構においてそれぞれ酸化ストレスとエピゲノム修飾の重要性が明らかになった。感染や脂肪による炎症がそれぞれ胃がんや大腸がんを促進する機構の詳細を明らかにすると同時に、分子標的に対する介入による予防の可能性も示した。遺伝子改変ラットの作成やin vitro腸管発がん再構成など、新規の手法の開発も行った。
結論
遺伝的因子と環境因子を種々の組み合わせで検討することが実行しやすい、という動物モデルの利点を最大限に生かして、ヒト発がん機構の解析と予防・治療への展開という二方向について成果が得られた。さらに、今回開発した新規手法の応用によりさらなる研究の進展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019018Z