レトロウイルス技術と高集積がん組織アレイを利用した癌抗原同定とがんの早期診断治療への応用

文献情報

文献番号
201019010A
報告書区分
総括
研究課題名
レトロウイルス技術と高集積がん組織アレイを利用した癌抗原同定とがんの早期診断治療への応用
課題番号
H21-3次がん・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
北村 俊雄(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 福岡順也(富山大学附属病院・外科病理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
25,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、がんの診断や治療は着実に進歩し早期発見によって完治する場合が多くなっ
てきたが、膵がんなど早期診断が困難ながんは発見された時には既に根治が難しい場
合が多い。本研究は、がん疾患を対象とした抗体を用いた治療、診断を目指している。
治療、診断に役立つ候補分子の検索には、疾患部位での特異的発現が重要である。病
理組織染色に使用できる抗体を作製し、正常組織、患者がん組織の組織アレイを利用
した発現解析を目指す。
研究方法
各種がん細胞株を材料としてシグナルシークエンストラップ法SST-REXで膜蛋白質・分
泌蛋白質を解析し、その中から候補分子を選び、細胞免疫を利用して効率良くモノク
ローナル抗体を作製する。分担研究者が作製した高集積がん組織アレイをこれらの抗
体で染色することにより診断・治療に利用できる抗体を同定する。作製した抗体を調
べたところ高集積がん組織アレイで利用できる抗体はごく少数であった。これはホル
マリン固定された組織アレイでは抗体が認識する抗原のエピトーフが失われるためと
考えられる。そこで今年度はホルマリン固定した細胞を免疫源として抗体を作製した。
結果と考察
SST-REXで同定した抗原(C1orf56、F11R、FSTL1、GPNMB、GPR56、MPZL1、PROCR、
TMED2、EPHA2)を細胞表面に発現する細胞を10%ホルマリンで固定してマウスに免疫し
モノクローナル抗体を作製した。取得した7分子に対する8種の抗体は固定化細胞に発
現している当該分子を認識した。高集積がん組織アレイを染色したところこれらの抗
体のうち2種類の抗体で特異的染色像が得られた。EPHA2に対する抗体はドメインに分
けて3種類作製したが、いずれも良好な染色像は得られなかった。今年度の実験結果は、
固定化細胞を免疫源として利用することによって高集積がんマイクロアレイで良好な
染色像を呈する抗体をある程度の確率で樹立できることが判明した。今後、候補分子
に対する抗体をこの方法論でさらに作製し、候補分子の発現分布を高集積がん組織ア
レイで調べることによって、診断・治療に応用可能なモノクローナル抗体の樹立が期
待できる。
結論
 固定化した抗原発現細胞を免疫源として利用することによって高集積がん組織アレ
イで良好な染色像が得られるモノクローナル抗体が作製可能であることが判明した。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019010Z