小児先天性・難治性疾患に対する遺伝子・細胞治療の開発と実施

文献情報

文献番号
201018017A
報告書区分
総括
研究課題名
小児先天性・難治性疾患に対する遺伝子・細胞治療の開発と実施
課題番号
H22-次世代・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 雅史(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 成育遺伝研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 虎之(独立行政法人 国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 瀧本 哲也(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 臨床研究センター 臨床研究推進室)
  • 中林 一彦(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 周産期病態研究部)
  • 河合 利尚(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 成育遺伝研究部)
  • 岡田(岩田)真由美(東京都立東大和療育センター 小児科)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部 生殖発達医学講座 小児科学分野)
  • 久米 晃啓(自治医科大学 分子病態治療研究センター 遺伝子治療研究部)
  • 大津 真(東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療研究分野)
  • 有賀 正(北海道大学大学院 医学研究科 小児科学分野)
  • 福島 敬(筑波大学 大学院人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻小児科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 現在、造血幹細胞遺伝子治療は原発性免疫不全症などの小児難治性疾患に対し、有効な治療法と認識されている。そこで、本研究では、当研究センターが中心となってX連鎖性慢性肉芽腫症(X-CGD)に対する造血幹細胞遺伝子治療を計画し、その過程で生ずる種々の問題を解決することで、包括的に遺伝子治療臨床研究を支える実施体制を構築する。
研究方法
 前臨床研究として、1) gp91phox欠損マウス骨髄を用いた導入遺伝子の発現量と活性酸素産生能の検討、2) CGD患者の末梢血リンパ球のprofile解析、3) 我々が独自に同定したJPACインスレーターの機能解析を行った。臨床研究として、4) 腸炎症状が乏しいCGD患者の内視鏡的所見、5) 造血幹細胞遺伝子治療における前処置としての静注用ブスルファンに関して、6) 遺伝性疾患に対する遺伝子診断の倫理的配慮の検討などを行った。
結果と考察
1) 導入遺伝子の発現量と活性酸素値に直線的な相関関係は認めず、活性酸素産生には一定の閾値が存在することが示唆された。2) CGD発症例では活性化T細胞とメモリーB細胞の減少を認めた。3) PACインスレーターのエンハンサー活性とその遮断効果が確認した。また、バリアー活性に関してもCos7を用いた系で確認した。4) 臨床的に腸炎症状を呈しない3名のCGD患者の内視鏡所見では全例でアフタ性腸炎の病理所見を示し、ペンタサの使用により検査所見は改善した。5) 静注用ブスルファンは有効性や二次性悪性腫瘍の発症率ならびに性腺障害で経口ブスルファンと大差がないことが示された。6) 最近定められた医学会ガイドラインでは、適切なインフォームド・コンセントの下に行えば、遺伝子診断は診断方法として適切であると判断された。環境整備に関して、7)遺伝治療臨床研究実施計画書やCase Report Form (CRF)の作成支援、8)細胞調整室の整備ならびにセンター内の密なる連携体制強化を図った。
結論
本年度の研究によってX-CGDに対する遺伝子治療臨床研究の実施体制は大方終了した。今後は、実際の遺伝子治療臨床研究を想定した遺伝子導入実験(Dry Run)を複数回行い、最終的なstandard operation procedure(SOP)を作成する予定である。なお、本遺伝子治療の審査状況は、当センターの遺伝子治療臨床研究審査委員会にて平成23年2月24日付けで承認され、今後、その審議は厚生労働省厚生科学審議会に移る。

公開日・更新日

公開日
2011-09-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201018017Z