文献情報
文献番号
201018007A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児突然死症候群(SIDS)における病態解明と臨床的対応および予防法開発とその普及啓発に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
戸苅 創(公立大学法人 名古屋市立大学)
研究分担者(所属機関)
- 高嶋幸男(国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科小児神経学)
- 市川光太郎(北九州市立八幡病院)
- 中山雅弘(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター検査科)
- 的場梁次(大阪大学大学院医学系研究科法医学教室)
- 平野慎也(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター新生児科)
- 横田俊平(横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学)
- 中川聡(国立成育医療研究センター手術集中治療部)
- 山口清次(国立大学法人島根大学医学部小児科・新生児科学・先天代謝異常)
- 成田正明(三重大学大学院医学系研究科発生再生医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
SIDS発症率の軽減を目指して病理組織学的、遺伝子的、関連疾患との鑑別法の検討などから、SIDSの病態解明についての検討を行う。ALTE(Apparent Life Threatening Event:乳幼児突発性危急事態)についての全国調査から、ALTE定義見直しの必要性を検討した。最終的には標準化された診断基準に基づいたSIDS 症例の組織バンクを構築することを目的とする。また生理学的検討から予防法の確立をめざし、社会的啓発の必要性についても検討を行う。
研究方法
病理組織学的検討、遺伝子的検討、関連疾患との鑑別法の検討などを行った。組織バンク構築に関しては、大阪府をパイロット的な対象ととらえ、地域組織バンクの構築を検討した。ALTEについては全国の小児医療施設、救急医療施設に対してアンケート調査に基づいて、定義改訂の必要性を検討した。さらに低出生体重児での無呼吸の頻度、医学生においてのSIDS認識度の調査などを行った。
結果と考察
生理学的、組織学的、遺伝子的検討によりSIDS症例では神経病理学的研究で、SIDSでは、カテコラミン、セロトニンとGABA発現神経細胞が対照に比して有意に減弱していることが多かった。セロトニンの異常にはセロトニントランスポーター(5HTT)遺伝子多型が関与していることが示唆された。鑑別疾患としては脂肪酸代謝異常症などの代謝異常症を念頭におく必要性が示唆された。鑑別組織バンクの構築にあたっては大阪府監察医事務所、大阪府立母子保健総合医療センター検査科、大阪大学大学院医学研究科法医学教室にてネットワーク型組織バンクのモデルとして、大阪府監察医事務所内の倫理委員会設立の必要性を踏まえ設置要項、運営要綱等を作成し具体的な取り組みを開始した。ALTEの定義は半数の施設が厚労省定義を使用していたが、症候概念へ変更して使用している施設もあり現場では混沌としていることが判明し、定義の見直し等の必要性が示唆された。生理学的検討から低出生体重児では無呼吸が起こる可能性が示唆された。SIDSに対する理解については医学生での知識の普及は充分とはいえず、医学教育プログラムに組み込むなどが必要と思われた。
結論
SIDSの病態解明、予防法確立、社会的啓蒙の必要性、ALTE定義改訂の必要性などが認識された。また診断方法の統一とそれに基づいた組織バンク構築が重要課題である。
公開日・更新日
公開日
2011-09-14
更新日
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