子どもの心の診療に関する診療体制確保、専門的人材育成に関する研究

文献情報

文献番号
201018005A
報告書区分
総括
研究課題名
子どもの心の診療に関する診療体制確保、専門的人材育成に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 眞紀子(独立行政法人国立成育医療研究センター 病院 こころの診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 柳川 敏彦(和歌山県立医科大学 保険看護学部小児科領域)
  • 山田 不二子(特定非営利活動法人子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク)
  • 市川 宏伸(東京都立小児総合医療センター)
  • 田中 康雄(北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター)
  • 北山 真次(神戸大学医学部附属病院 親と子の心療部)
  • 齊藤 万比古(独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院 児童精神科)
  • 宮本 信也(筑波大学大学院人間総合科学研究科発達行動小児科学)
  • 杉山 登志郎(あいち小児保健医療総合センター)
  • 亀岡 智美(大阪教育大学 学校危機メンタルサポートセンター)
  • 田中 英高(大阪医科大学 小児科)
  • 齊藤 卓弥(日本医科大学 精神医学教室)
  • 青木 豊(あつぎ心療クリニック附属 相州乳幼児家族診療センター)
  • 原田 謙(信州大学医学部附属病院 子どものこころ診療部)
  • 本村 陽一(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)
  • 藤原 武男(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所 成育社会医学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
需要が増加している子どもの心の診療に関して、受診しやすい医療システムの在り方を探ると同時に「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」の効果を検討すること、他機関との連携のあり方、専門的人材の育成方法、診療の標準化、それを支える情報システムの構築を目的とした。

研究方法
 拠点病院事業参加病院8か所およびその他の専門的診療を行っている病院8か所で、継続調査を行い、症状の気付きが事業開始前4323名と開始後869名の回答を比較検討。教師(1180回答)と医師(1447回答)を検討。多機関連携ツールとして開発したNeeds Assessment Toolを試行。災害時心のケア派遣に関して児童青年精神医学会認定医166名に質問紙調査。虐待対応連携を実施し各種調査。全国小児科専門医研修病院および救急指定病院への虐待対応チームの設置に関する質問紙調査と大学での教育実態調査。セミナー受講医師149名に質問紙調査。医師の専門性維持の為のeラーニングを立ち上げて可能性を検討。小児医療現場のコメディカルスタッフへの面接調査と入院中の子どもと保護者にコメディカルスタッフに関する面接調査。虐待ケース、トラウマ、心身症、感情障害・自殺・せん妄、乳幼児精神医学、行為障害に関して3年間の研究を元に標準的診療を作成。医療情報基盤システムでの情報共有について調査。
結果と考察
 拠点病院事業前後の比較で、事業実施病院では他病院に比べて、症状に気付いた時の対応の迷いが有意に減少し、事業の有効性が示された。教育者も医師も対人関係問題に関して連携を希求するが、困難と感じていた。多機関連携のツールNeeds Assessment Toolを完成。災害支援は被災地域の社会資源の再生を図りながら支援する重要性を提示。虐待連携では疾患別リスクと社会心理的情報の重要性が示され、実際の連携構築モデルを提示。院内虐待対応チームの設置は増加、大学での講義は非常に少なかった。医師の短期研修の有効性を提示。専門医用eラーニングは有効だが運営の困難さを提示。コメディカルの資格と報酬の問題が明確化。虐待ケース・子どものトラウマ・重症起立性調節障害・気分障害・自殺企図・せん妄・行為障害への標準的診療が提示され、乳幼児精神医学の評価ツールが示された。医療情報基盤システムの在り方を提言。
結論
拠点病院事業によるシステムの有効性の一部が示され、各種連携の問題点と対処が示され、研修の在り方と診療の標準化が提供できた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201018005B
報告書区分
総合
研究課題名
子どもの心の診療に関する診療体制確保、専門的人材育成に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 眞紀子(独立行政法人国立成育医療研究センター 病院 こころの診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 柳川 敏彦(和歌山県立医科大学 保健看護学部小児科領域)
  • 山田 不二子(特定非営利活動法人子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク)
  • 市川 宏伸(東京都立小児総合医療センター)
  • 田中 康雄(北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター)
  • 北山 真次(神戸大学医学部附属病院 親と子の心療部)
  • 齊藤 万比古(独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院 児童精神科)
  • 宮本 信也(筑波大学大学院人間総合科学研究科発達行動小児科学)
  • 杉山 登志郎(あいち小児保健医療総合センター)
  • 亀岡 智美(大阪教育大学 学校危機メンタルサポートセンター)
  • 田中 英高(大阪医科大学 小児科)
  • 齊藤 卓弥(日本医科大学 精神医学教室)
  • 青木 豊(あつぎ心療クリニック附属相州乳幼児家族心療センター)
  • 原田 謙(信州大学医学部附属病院 子どものこころ診療部)
  • 本村 陽一(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)
  • 藤原 武男(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所 成育社会医学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 需要が増加している子どもの心の診療に関して、受診しやすい医療システムの在り方を探ると同時に「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」の効果を検討すること、他機関との連携のあり方、専門的人材の育成方法、診療の標準化、それを支える情報システムの構築を目的とした。
研究方法
全国の子どものこころの専門診療ができる病院16ヶ所(内8か所が拠点病院)で毎年受療行動調査を行い、事業の評価および診療システムの課題を明らかにした。連携に関しては、教師および医師への質問紙調査より教育との連携を明らかにし、英国のモデルを元に多機関連携ツールを開発し、災害後の長期予後を検討し、災害時のこころのケアを検証した。虐待連携を実際に行い、その在り方を調査検討した。日本で初めて乳幼児揺さぶられ症候群の発生頻度を推定し、医療機関の虐待防止チームの調査を行った。人材育成に関しては、実際の医師向けセミナーを試行して効果を検証し、海外の専門医制度の検討を行い、eラーニングを試行、コメディカルに関する各種調査を行った。虐待ケース、トラウマ、心身症、感情障害・自殺・せん妄、乳幼児精神医学、行為障害に関して、文献研究、エキスパートによる診療の調査等により、標準的診療の提示を行った。子どものこころの診療を支えるホームページの作成と連携システムの調査を行った。
結果と考察
 拠点病院機構の効果がある程度証明された。同時に、システムの問題点を明確にし、対応すべき点を明らかにした。連携に関しては多機関連携のためのツール(Needs Assessment Tool)が開発され、教育との連携の為に教育者向けのパンフレットが作成された。災害時のメンタルヘルスに関しては、長期の視点が必要なことと、現地の社会資源の育成の必要性を提言。虐待対応連携のモデルを示し、一般小児科向けパンフレット、小児科医向けマニュアルおよびCPT運営マニュアルを作成した。現時点での医師のセミナーの有効な形が示され、日本での専門医制度への提言を行い、eラーニングが立ち上がった。コメディカルスタッフの現状での問題点を明らかにした。虐待ケース、トラウマ、心身症、感情障害・自殺・せん妄、乳幼児精神医学、行為障害に関する標準的診療が提示され、ガイドライン等が作成された。
結論
子どもの心の診療システムの在り方を提示し、連携を促進するツールやマニュアル等が開発され、人材育成の方法が提示され、各種障害の標準的診療が提示できた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201018005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 日本で初めて乳幼児揺さぶられ症候群の発生頻度を明らかにした。子どもの心の問題で専門医療機関に受診するまでの状況を疫学的に明らかにした。

臨床的観点からの成果
日本の子どもの心の診療専門医の現実的な方向性を提言した。子どもの心の診療医育成の為の研修プログラムを開発した。子どもの心の診療に係るコメディカルスタッフの現状を明らかにした。児童思春期の自殺企図者の分析から原因・動機として精神障害がある率が高いことを証明。災害後の子どものトラウマ症状は長期に残存することを明らかにした。乳幼児精神医学の診断ツールの有効性を提示した。
ガイドライン等の開発
教師向け連携用パンフレットを作成配布。多機関連携の為のツールNATを開発(特許申請予定)。一般医向け子ども虐待診断マニュアル、小児科医向け子ども虐待診療ポケットマニュアル、院内子ども保護チーム(CPT)運営マニュアルを作成配布。起立性調節障害専門医用ガイドラインを作成普及、虐待ケース診療の手引きを作成、子どものトラウマ診療ガイドラインおよび心理教育冊子を作成配布、子どものうつ病・子どものせん妄・子どもの自殺の標準診療パンフレットを作成配布、反抗挑戦性障害・素行障害診断治療ガイドライン作成配布。
その他行政的観点からの成果
子どもの心の診療拠点病院機構推進事業の一部の有効性に関して第5回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議(平成22年7月30日)で報告した。本研究で開発した子どもの心の診療医育成研修は平成22年度こころの健康づくり対策事業思春期精神保健研修事業「医療従事者専門研修」として採択された。

その他のインパクト
有識者会議で報告した事業の有効性がNHKのニュースで取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
66件
原著論文(英文等)
34件
その他論文(和文)
192件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
150件
学会発表(国際学会等)
22件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
18件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujiwara T, Okuyama M, Funahashi K. Reserch in Autism Spectrum Disorders
Factors influencing on the time lag between first parental concern and first visit to child psychiatric services among children with autism spectrum disorders in Japan
Research in Autism Spectrum Disorders , 5 (1) , 584-591  (2011)
原著論文2
山田 不二子、田中 真一郎、彦根 倫子他
"厚生乳幼児揺さぶられ症候群(ShakenBabySyndrome) 予防プログラムの試験的実施に関する研究"
子どもの虐待とネグレクト ,  (10) , 17-24  (2008)
原著論文3
山田 不二子、田中 真一郎、彦根 倫子他
乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome)予防プログラムの一例
子どもの虐待とネグレクト ,  (10) , 118-123  (2008)
原著論文4
Fujiko Yamda
A national minimum estimate of abusive head trauma in infants and children
Journal of Medical and Dental Sciences (in revision)  (2010)
原著論文5
青木豊、松本英夫,井上美鈴
アタッチメント研究・理論に基礎付けられた乳幼児虐待に対するアプローチ:1症例の検討
児童青年期精神医学とその近接領域 (in press)  (2010)
原著論文6
青木豊、松本英夫,加藤由起子,小石誠二 他
暴力への曝露による乳幼児期外傷後ストレス障害(PTSD)の1症例-乳幼児期におけるPTSDの存在と診断をめぐって-
子どもの虐待とネグレクト , 12 (3) , 423-434  (2010)
原著論文7
吉松奈央、青木豊
"乳幼児期PTSDに対するセラピーのセッティングについて 特に養育者との関係性改善の観点から"
心理臨床学研究 (in press)  (2010)
原著論文8
杉山登志郎
性的虐待のトラウマの特徴
トラウマティック・ストレス ,  (6) , 5-14  (2008)
原著論文9
杉山登志郎
子どものトラウマと発達障害
発達障害研究 ,  (30) , 111-120  (2008)
原著論文10
杉山登志郎
"子ども虐待への包括的ケア:医療機関を核とした子どもと親への治療"
子どもの虐待とネグレクト ,  (11) , 6-18  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-23
更新日
2015-06-11

収支報告書

文献番号
201018005Z