文献情報
文献番号
201018004A
報告書区分
総括
研究課題名
成育疾患における診断技術、治療法開発を目的としたポストゲノムプラットフォームの構築と応用-小児リウマチ性疾患、自己免疫疾患におけるマイクロRNAの機能解析と診断、治療への応用-
課題番号
H20-子ども・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
淺原 弘嗣(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所 システム発生・再生医学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 柳谷 隆宏(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所 システム発生・再生医学研究部)
- 関 敦仁(独立行政法人国立成育医療研究センター 外科系専門診療部 整形外科)
- 伊藤 秀一(独立行政法人国立成育医療研究センター 内科系専門診療部 腎臓・リウマチ・膠原病科)
- 蓮沼 智子(北里大学臨床薬理研究所 医学管理部)
- 川合 眞一(東邦大学 医学部内科学講座(大森)膠原病科)
- 加藤 義雄(独立行政法人産業技術総合研究所 セルエンジニアリング研究部門)
- 伊藤 義晃(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所 システム発生・再生医学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
21,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
リウマチ性関節炎に対する生物製剤は、炎症反応に関与するサイトカインやそのレセプターに対する抗体を用いてサイトカインの機能を阻害することにより炎症反応を緩和するものである。しかし、これらの医薬品では治癒できない症例もあり、新しい機序に基づく、安価で安全な医薬品の開発が望まれている。そこで、疾患関連マイクロRNAの疾患発症における役割について明らかにするため、また、新規治療ターゲットとしての可能性を探るため、関節炎モデルマウスにマイクロRNAの過剰発現用アデノウイルスベクターを導入した時の効果について検討した。
研究方法
6週齢の雄性DBA/1J系マウスを使用し、II型コラーゲン誘導関節炎モデルを作製した。ウシII型コラーゲンを等量のCFAで乳化したエマルジョンを尾根部皮内に注射して初回免疫を行った。3週後、ウシII型コラーゲンとIFAで追加免疫を行った。一方、miR-146a発現アデノウイルス(Ad)を構築した。miR-146aのseed配列に変異を加えた配列を対照Adとして作製した。各群マウスの関節炎症状のスコアーが6点前後になったところで、吸入麻酔下にてマウス膝関節を皮切開し、関節包内にAdベクターを108 PFU投与して遺伝子導入を行った。さらに、踵周辺の皮下と前肢にもそれぞれ108 PFU投与した。その後、55日目までスコアーを記録した。
結果と考察
miR-146aを過剰発現させた群は、他の群に比べて有意にスコアーが低下していた。この結果は、1)初期の段階で関節炎はすべての群で同様に発症したが、2)miR-146aを過剰発現させた群ではTNF-によるシグナル伝達やTNF-による発現ループを遮断することにより関節炎が増悪化しなかったものと考えられる。現在、上記の研究について切片の解析を行うとともに、miR-146aを過剰発現させる時期を変えた場合の効果を調べている。
結論
miR-146aを過剰発現させることにより、関節炎の慢性化・増悪化を抑制することが示された。今後、同様の実験によって再現性を得る必要があるものの、他の炎症指標や炎症性サイトカインの発現レベルなども併せて調べ、miR-146aの過剰発現による炎症局部での変化の本質を明らかにしなければならない。
公開日・更新日
公開日
2011-09-06
更新日
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