わが国における新しい妊婦健診体制構築のための研究

文献情報

文献番号
201018003A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における新しい妊婦健診体制構築のための研究
課題番号
H20-子ども・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松田 義雄(東京女子医科大学 医学部産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 海野 信也(北里大学医学部 産婦人科)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 久保隆彦(国立成育医療研究センター 周産期診療部産科)
  • 中井章人(日本医科大学 医学部産婦人科)
  • 篠塚憲男(胎児医学研究所)
  • 松原茂樹(自治医科大学 医学部産婦人科)
  • 川鰭市郎(国立長良医療センター 産婦人科)
  • 関沢明彦(昭和大学医学部 産婦人科学教室)
  • 林 邦彦(群馬大学医学部 保健学科 疫学)
  • 斎籐益子(東邦大学医学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は, 多施設の周産期のデータベースを可能な限り解析することで, 妊娠高血圧症候群(PIH)などの産科合併症の発症に関与するリスク因子を抽出し, 胎児発育などの情報も含め、母子健康手帳の母体―胎児に関する情報機能の充実を検討する. また、妊婦自身による「妊娠リスク評価」と本人が医療関係者と情報交換できる「対話欄」を母子健康手帳に盛り込む有用性を評価する.また, 妊婦健診や未受診妊婦の実態を分析し, 妊婦健診体制の充実を図ることで, 妊婦の安全性を担保し, 全ての地域で実施可能な妊婦診療体制を構築することを目的とする.
研究方法
母子健康手帳に追加情報(主な産科合併症のリスク因子の表記, 胎児発育曲線, 妊娠リスク評価, 対話欄)を入れて作成した補足版の有用性を各方面から検証する. 助産外来とセミオープンシステムの現状と問題点を検討する. 未受診妊婦の現状, 問題点と改善策を検討する.
結果と考察
今回作成した補足版を有用と肯定する意見が7割以上になり, 特に「妊娠リスク評価」を用いた妊婦のトリアージが可能であること, また, 妊婦自身の受け入れも良好であることが示された. 対話欄の活用により妊婦のセルフケア行動が高まることも示された.
一次診療施設における診療体制を検証したところ, 助産外来の導入を含む協働管理体制は不十分で, 妊婦の4割に不満感を与えていることが明らかにされる一方, セミオープンシステムが浸透しつつあり妊婦側の満足度が高いことが示された. これらの結果を踏まえ, 各職種間で連携していくことが協働体制の推進に繋がると思われた.
未受診分娩の問題は経済的理由以外にも多岐に渡っているため, 医療機関と福祉事務所が連携し,妊婦の状況に応じた支援策へ繋げることが重要であると考えられたので, 妊娠・出産に関する支援の情報を提供するために,リーフレットを新たに作成した.
結論
(1)母子健康手帳に情報ツール機能を組み込む有用性が示唆された.特に妊婦自身による「妊娠リスク評価」は有用であった.
(2)妊婦健診では各職種間の協働体制の推進が必要である.特にセミオープンシステムの有用性が示唆された.
(3)未受診妊婦を減少させるためには、行政機関との連携が重要である.

公開日・更新日

公開日
2011-09-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201018003B
報告書区分
総合
研究課題名
わが国における新しい妊婦健診体制構築のための研究
課題番号
H20-子ども・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松田 義雄(東京女子医科大学 医学部産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 海野 信也(北里大学医学部 産婦人科)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 久保 隆彦(国立成育医療研究センター 周産期診療部産科)
  • 中井 章人(日本医科大学 医学部産婦人科)
  • 篠塚 憲男(胎児医学研究所)
  • 松原 茂樹(自治医科大学 医学部産婦人科)
  • 川鰭 市郎(国立長良医療センター 産婦人科)
  • 関沢 明彦(昭和大学医学部 産婦人科学教室)
  • 林 邦彦(群馬大学医学部 保健学科 疫学)
  • 齋藤 益子(東邦大学医学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は, 多施設による周産期のデータベースを可能な限り解析することで, 妊娠高血圧症候群(PIH)などの産科合併症の発症に関与するリスク因子を抽出し, 胎児発育などの情報も含め、母子健康手帳の母体―胎児に関する情報機能の充実を検討する. 妊婦自身による「妊娠リスク評価」と本人が医療関係者と情報交換できる「対話欄」を母子健康手帳に盛り込む有用性を評価する.また, 妊婦健診や未受診妊婦の実態を分析し, 妊婦健診体制の充実を図ることで, 妊婦の安全性を担保し, 全ての地域で実施可能な妊婦診療体制を構築することを目的とする.同時に, 産科合併症の発症予知に関し, 精度が高く簡便で感度の高い, 母体血による早期診断システムの有用性を検討する.
研究方法
母子健康手帳に追加情報(主な産科合併症のリスク因子の表記, 胎児発育曲線, 妊娠リスク評価, 対話欄)を入れて作成した補足版の有用性を各方面から検証し, 妊婦のトリアージなどに用いることができるか検討する. 助産外来とセミオープンシステムの現状と問題点を検討する. 未受診妊婦の現状, 問題点と改善策を検討する.PIHを対象として血管新生関連因子を測定する.
結果と考察
今回作成した補足版を有用とする意見が7割以上になり, 同時に妊婦のセルフケア行動が高まることも示された.一次診療施設における診療体制を検証したところ, 助産外来の導入を含む協働管理体制は不十分で, 妊婦の4割に不満感を与えていることが明らかにされる一方, セミオープンシステムが浸透しつつあり妊婦側の満足度が高いことが示された. 未受診分娩の問題は, 妊婦の状況に応じた支援策へ繋げることが重要であると考え, 妊娠・出産に関する支援の情報を提供するために,リーフレットを新たに作成した.
 将来PIHを発症する妊娠初期の絨毛の病態変化を妊娠10-14週の母体血でモニターできることを明らかにした.
結論
(1)母子健康手帳に情報ツール機能を組み込む有用性が示唆された.特に妊婦自身による「妊娠リスク評価」は有用であった.
(2)妊婦健診では各職種間の協働体制の推進が必要である.特にセミオープンシステムの有用性が示唆された.
(3)未受診妊婦を減少させるためには、行政機関との連携が重要である.
(4)将来PIHを発症する妊娠初期の絨毛の病態変化が妊娠10-14週の母体血でモニターできた.「妊婦健診」を生殖可能年齢にある女性のライフサポートの一環と捉え, 妊娠前から分娩後までを含めたトータルケアとすることも検討すべきである.

公開日・更新日

公開日
2011-09-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201018003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
産科合併症の疫学を論じる上で,発症に関与するリスク因子(年齢、喫煙、不妊治療、高血圧の有無など)を明らかにすることは重要であるが,そのほとんどは海外からの報告である.我が国独自の周産期データベース24万例を用いて,妊娠高血圧症候群,切迫早産,前期破水,頸管無力症,絨毛膜羊膜炎,常位胎盤早期剥離,前置胎盤の主要7疾患におけるリスク因子を,ケースコホート研究により,エビデンスに足る方法で科学的に各因子のリスク比を明らかにした.これらの成果は我が国初であり,結果を英語論文5編に発表した.
臨床的観点からの成果
医師が超音波検査を含めた健診を毎回行っている現状では,医師自身も約1/4が負担に感じ,妊婦側には4割に上る不満感を与えていた.多職種による協働体制により妊産褥婦を多方面からサポートする「新しい妊婦健診体制の構築」の有用性を検証するにあたり,従来の母子健康手帳に母体-胎児情報と医療関係者との対話欄を含む「母子健康手帳補足版」を完成させた.その中の「妊娠リスクの自己評価」で妊婦をリスク別にトリアージできることを示した.「補足版」の有用性を医師・助産師・妊婦の7割以上が「有用である」と回答した.
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
日本の喫煙妊婦が産科合併症に与える悪影響(リスク比)を初めて明らかにし,「産婦人科診療ガイドライン2011」(2011年4月,編集:日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会)へ掲載.未受診妊婦が受診しやすくなるよう,妊婦健診に関する情報提供用紙(メッセージカード)「大切なあなたのために」を新宿区と作成し配布.2012年4月に10年ぶりに改定した母子健康手帳へ班研究からの提言が反映され,新たに加えられた胎児発育曲線についてその解説文を学会や地方行政へ配布.産科合併症などの実態を引き続き英文で発表.
その他のインパクト
一般市民を対象とした公開シンポジウムを二度開催した(平成21年10月3日「母子手帳を皆で考えよう!-今、妊婦健診に必要な情報は?-」,平成22年10月2日「妊婦健診体制を考える-今の健診体制に満足していますか?-」)日本周産期・新生児医学会と日本母性衛生学会においても,同様の内容でシンポジウムとワークショップを開催し,広く意見を聴取した.また,班会議での内容はホームページ(URL周産期医療の広場 http://shusanki.org/theme.html?id=88#88)に掲載している.

発表件数

原著論文(和文)
30件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
23件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsuda Y, Hayashi K, Shiozaki A , et al.
Comparison of risk factors for placental abruption and placenta previa:case-cohort study 10.1111/j.1447-0756.2010.01408.x.
J Obstet Gynaecol Res. 2011 Mar 6. doi: 10.1111/j.1447-0756.2010.01408.x.  (2011)
原著論文2
Hayashi K, Matsuda Y, Kawamichi Y, et al.
Smoking during pregnancy increases risks of various obstetric complications:A case-cohort study of the Japan Perinatal Registry Network Database.
J Epidemiol doi:10.2188/jea.JE20100092; , 21 (1) , 61-66  (2011)
原著論文3
Shiozaki A, Matsuda Y, Satoh S, et al.
Impact of fetal sex in pregnancy-induced hypertension/pre-eclampsia in Japan
JRI , 89 , 133-139  (2011)
原著論文4
Matsuda Y, Hayashi K, Shiozaki A , et al.
The impact of maternal age on the incidence of obstetrical complications in Japan
JOGR, 2011, in press  (2011)
原著論文5
Shiozaki A, Matsuda Y, Hayashi K, et al.
Comparing of risk factors for major obstetric complications between Western countries and Japan: A case-cohort study.
JOGR, 2011 in press  (2011)
原著論文6
篠塚憲男
胎児発育をどう評価するか  ワークショップ2:新たな妊婦健診体制の構築に向けて母子手帳を考える 〜必要な母体・胎児情報はなにか?〜
日本周産期・新生児医学会雑誌 , 45 (4) , 1021-1023  (2009)
原著論文7
篠塚憲男
妊婦健診における胎児発育評価の重点時期
母性衛生 , 51 (1) , 54-58  (2009)
原著論文8
篠塚憲男 田口彰則
妊婦健診における超音波検査のminimal requirementに関する提言
周産期医学 , 40 , 29-32  (2010)
原著論文9
篠塚憲男
周産期データベースの解析からみた SGA シンポジウム 1 「Small for Gestational Age(SGA)の病態と予防」
日本周産期・新生児医学会雑誌 , 46  (2010)
原著論文10
Antonio Farina, Akihiko Sekizawa, Paola De Sanctis, et al.
Gene expression in chorionic villous samples at 11 weeks’ gestation from women destined to develop preeclampsia.
Prenat Diagn , 28 , 956-961  (2008)
原著論文11
Purwosunu Y, Sekizawa A, Okazaki S, et al.
Prediction of preeclampsia by analysis of cell-free messenger RNA in maternal plasma.
American Journal of Obstetrics and Gynecology , 200 (4) , 1-7  (2009)
原著論文12
Nakamura M, Sekizawa A, Purwosunu Y, et al.
Cellular mRNA expressions of anti-oxidant factors in the blood of preeclamptic women.
Prenat Diagn , 29 , 691-699  (2009)
原著論文13
Sekizawa A, Purwosunu Y, Yoshimura S, et al.
PP13 mRNA Expression in Trophoblasts From Preeclamptic Placentas
Reprod Sci , 16 (4) , 408-413  (2009)
原著論文14
Purwosunu Y, Sekizawa A, Yoshimura S, et al.
Expression of Angiogenesis-Related Genes in the Cellular Component of the Blood of Preeclamptic Women.
Reprod Sci , 16 (9) , 857-864  (2009)
原著論文15
Hanako Shimizu, Akihiko Sekizawa, Yuditiya Purwosunu, et al.
PP13 mRNA expression in the cellular component of maternal blood as a marker for preeclampsia
Prenat Diagn , 29 , 1231-1236  (2009)
原著論文16
Sekizawa A, Purwosunu Y, Farina A, et al.
Prediction of pre-eclampsia by an analysis of placenta-derived cellular mRNA in the blood of pregnant women at 15-20 weeks of gestation
BJOG , 117 (5) , 557-564  (2010)
原著論文17
林邦彦 松田義雄
周産期における女性の喫煙対策の必要性
保健師ジャーナル , 67 (5) , 372-375  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-23
更新日
2015-05-21

収支報告書

文献番号
201018003Z