網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究

文献情報

文献番号
201015041A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究
課題番号
H22-臨研推・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 達朗(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院・眼科学)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康博(国立大学法人九州大学病院・眼科)
  • 米満 吉和(国立大学法人九州大学大学院薬学研究院・革新的バイオ医薬創成学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
網膜色素変性(RP)は、未だ有効な治療法の確立されていない難治性の遺伝性疾患で、我が国の中途失明原因の上位を占める。我々はRPに対する新しい治療法の可能性として、神経栄養因子を搭載した国産ベクター(SIVベクター)を用いた視細胞保護遺伝子治療の臨床応用を目指した研究を進めてきた。本研究は、これまでに得られた効能試験ならびに安全性試験の知見をスムーズに臨床研究へと移行することを目的としている。
研究方法
(1)遺伝子治療臨床研究への準備(治療用ベクターのGMP生産と厚生科学審議会での実施計画の審議)、(2)サルを用いた長期安全性試験の最終評価、(3)ヒト色素上皮由来因子(hPEDF)の持つ視細胞保護効果の分子メカニズムの解明、という3つのテーマについてそれぞれ研究を実施した。(2)については、カニクイザルに治療用ベクター(SIV-hPEDF)を網膜下投与し、全身状態ならびに眼局所の反応を約5年間観察し、剖検後に病理学組織学的な検討を行った。(3)については、RPモデル動物を用いた研究を行った。
結果と考察
(1)については、臨床研究実施に向けた治療用ベクターの入手が本年度内に完了し、厚生科学審議会での審議は順調に進められている。入手した治療用ベクターは平成23年度に品質検定試験を実施し、GMP基準に合致するかどうかを検定する。また、審議会での早期の実施承認を目指した対応に務める。(2)については、 サルにおけるSIVベクターの網膜下投与により発癌性は認められず、全身へのベクター撒布の危険性も低いことがわかった。また、遺伝子発現は安定しており、眼局所への影響は軽微であることが確認された。平成23年度は、残りの評価項目を完了する予定である。(3)については、RPにおける視細胞死にゲノム酸化損傷が関与している可能性が示唆され、またゲノム酸化損傷をコントロールすることがRPの新しい治療のターゲットとなる可能性があることが明らかとなった。平成23年度は、hPEDFがゲノム酸化損傷の制御にどのように関与しているかを検証する予定である。
結論
本年度は、3つのテーマそれぞれにおいて臨床応用の実現を支持するような成果を得ることができた。平成23年度に予定している研究計画を順調に実施することができれば、RPに対する視細胞保護遺伝子治療はスムーズに臨床応用へと移行できると期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201015041Z